元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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南国へ国外逃亡できたよ

可哀想な私?

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 オスカー様の不貞を現行犯で押さえて、最高のお別れをした私。
 帰りの馬車の中では、ニヤけてしまうのを我慢するのが大変だったほどだ。お兄様が隣に座っているからバレるわけにもいかないし、下を向いていたら、泣いていると勘違いされるしで大変だった。
 
 お兄様はとにかく私を心配して、色々と世話を焼こうとするが、しばらくは考えたい事が沢山あるからと、1人にして欲しいことをお願いした。お兄様は、ショックを受けたような顔をしていたけど、お兄様がいたら、ゆっくりと今後の事を考えられないからね。

 そして、オスカー様と約束がなくなった休日。今日は、部屋に籠り今後の事を考えている。オスカー様と、結婚がなくなったから、伯爵家は出て行くとして、あとは学園だよね?中退したら就職が出来ないかもしれないし。明日、学園で飛び級とか、特待生とか、寮のこととか聞いてみよう。無理なら、冒険者になって、魔物討伐でもしてやっていこうかな。大変だろうけど、これから自由だからね!頑張るぞー!
 その日は、ぐっすり眠る私であった。

 次の日、スッキリとした気持ちで、機嫌よく目覚めた私。鼻歌を歌いながら朝の準備をする。朝食の時間になるので、ダイニングに行こうと部屋を出ると…

「…お兄様?おはようございます。そこで何を?」

 部屋を出てすぐの所にお兄様がいた。何で?

「……ああ、一緒にダイニングに行こうか。」

 はあ?もしかして、待ってたの?朝からそんなことしなくても。

「…行きましょうか。」

 お兄様は何も言わずに、私の手を取ってエスコートしてくれる。多分、色々と心配して来てくれたのだろうね。

 ダイニングに行くと、すでにお父様とお母様がいた。この2人は、きっとオスカー様の話をお兄様から聞いているだろうね。お兄様は、すごく激怒していたから。

「あら、2人一緒に来たのね。最近は仲良しになってくれて、嬉しいわ。」

「マリア、おはよう。朝からエルがしつこそうだけど、大丈夫かい?」

 優しい2人は、恐らく私を心配しているのだろう。でも、私は元気なの!

「お父様・お母様、おはようございます。お兄様は、いつも優しいので大丈夫ですわ。」

「マリアがそう言ってくれて、良かったわ。無愛想で冷たいけど、根は悪い子ではないから、これからもよろしくね。それより、今日は学園に行くのかしら?無理しなくてもいいのよ?マリアはいつも頑張り過ぎだから、偶にはゆっくりすることも大切よ。」

「お母様、今日は学園で調べたいことが沢山あるので、いつも通りに登校する予定ですわ。」

「……っ。マリアは、本当に頑張り屋さんね。私の自慢の娘だわ。これからも、ずっとこの家にいてね。」

 お母様、泣きそうにならないでー!私は元気なのだから。

「そうだよ。マリアは本当に自慢の娘だ。ずっとこの家にいて欲しい。この後、縁談の話とか茶会の誘いとか沢山くるだろうけど、私達はマリアが嫌がる縁談は受けないから、安心するんだよ。」

 多分、オスカー様に捨てられた、可哀想なマリアさんみたいな感じね。もう、本音を話そうか!

「お父様・お母様、いつも私を心配して下さってありがとうございます。でも私は平気なのです。ここだけの話なのですが…、オスカー様は好きとか、愛とかではなく、命の恩人というか、ちょっとした保護者みたいな存在でしたので。そんなオスカー様が、本当に好きな方と結ばれるみたいで、私は嬉しいですわ。心から2人を祝福したいと思っています。」

 満面の笑みで話す私。

「……マリア。」

「………。」

「マリア!あの男はお前と結婚すると言って、この国に連れて来たんだよな?それなのに、あの仕打ちは何だ?マリアが良くても、私はあの男を許さない!あの時、殿下がいなかったら、斬りつけていたと思う。父上、侯爵家があの男の代になったら、今まで通りに親族として付き合って行くのは、私は無理ですね。しかも、侯爵家の夫人があのアバズレだなんて。」

 お父様とお母様は、言葉を無くし、お兄様はまだ怒っている。お兄様は朝から怖い!斬りつけるとか、物騒なことをサラッと言わないでよ!

「お兄様、私はこれでも幸せですからもういいのです。オスカー様とガザフィー男爵令嬢の恋を応援しましょう。それに、お兄様がいつまでも怒っていたら、私はいつまでも前に進めませんわ。」

「…マリアがそこまで言うなら、しょうがない、我慢する。」

「まあ!エルはマリアに弱いわねぇ。」

「マリアがそれで納得するなら、もう私達は何も言わないよ。でも、マリアはうちの大切な娘だからね。オスカー殿との関係が終わったからと言って、出て行くとかは言わないでくれ。」

 うっ。お父様が鋭いわ。でも、そんな風に言ってくれるなんて、有り難いよね。

「はい。ありがとうございます。」

 その後、普通に学園に登校する私。親友達には噂が広まる前に、オスカー様と終わったことを打ち明けておいた。かなり驚かれたが、私が元気ならいいと言ってくれた。そして、ガザフィー男爵令嬢が新しい相手だと言うと、サーラがあれって顔をする。もしかしたら、姉が知っている令嬢かもと言うのだ。サーラは後でお姉様に色々と聞いておくと言っていた。有名な男爵令嬢なのかな?

 そして後日、私がオスカー様と別れたという話が、何となく噂になってきているようだ。クラスの令嬢達は話をしていたから別に普通なんだけど、あまり交流のないクラスの子息や、他のクラスの人達に、何か可哀想な人を見るような目を向けられている私。あの感じの悪かった宰相子息ですら、憐みのような目を向けてくるのだ。それはそれで居心地が悪い。そんな時だった。リズが驚きの噂話を教えてくれたのだ。

「マリア、分かったことがあるの!昨日、お母様がお茶会で聞いて来た話を教えてもらったんだけど。…聞きたい?」

 リズの笑みが黒い。

「そこまで言われたら、聞きたいわよ!」

「ふふっ!実はね…、マーフィー卿はガザフィー男爵令嬢に媚薬を盛られて、子供ができて責任を取る為に、最愛の恋人と泣く泣く別れて、結婚することになったって噂よ。お茶会ではね、愛し合う2人を引き裂いた、ガザフィー男爵令嬢は酷い悪女だって、みんなで話していたんだって。だから、みんなはマリアを憐みの目で見ていたのねー!」

「リズ、あなた楽しんでいるわねー!」

「ふふっ!マリアは被害者なんだから、いいじゃない。だから、私はお母様に話をしたの。マリアは、つらいのを我慢して、健気に頑張っているわよって。裏切られたのに、2人には幸せになって欲しいとまで言ってたわよって。お母様は、涙目になってマリアに感心していたわ。」

 ドヤ顔のリズめ!余計な事を言ったなー!
 そこで、サーラが何かを思い出したようだ。

「そう言えば、お姉様がガザフィー男爵令嬢を知っていたわ。友人ではないみたいだけど、結構、評判は悪い人みたいよ。友達の恋人を略奪したり、高位の貴族令息狙いで、文官になったって言われるみたいでね、王宮に来る令息を狙って、色目を使っていたとか!悪女と言われても仕方がないわねー。」

 なるほど、あの時も感じの悪い令嬢だとは思ったけど、やはりそんな女だったのね。まあ、でもあの伯母様のことだから、厳しく教育するから何とかなるだろう。
 しかし、媚薬で妊娠なんてどこから来た噂だろう。いやー怖いわね。私の知らない所で、噂がこんなになっているなんてね。

 そして、私は今日も放課後の図書室でガリ勉だ。あの後先生に聞いたら、ここの学園も、各教科ごとのレポートの提出をして、卒業試験に合格すればすぐに卒業出来るらしい。さっさとレポートを作成して、早期の卒業の為に頑張ることにした。学園を卒業すれば、年齢に関係なく、王宮の文官の試験も受けられるらしいからね。寮もあるらしいし。1人でも生きていけるように、早く自立したいのよ。ただ、お父様とお母様が、あそこまで言ってくれたから、学生のうちは伯爵家にお世話になろうと思う。

 図書室の隅で、せっせとレポートを作成していると、

「コリンズ伯爵令嬢…。」

「…はい?」

 名前を呼ばれて顔を上げると……。げっ!貴方は!


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