元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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南国へ国外逃亡できたよ

閑話 ガザフィー男爵令嬢 2

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 その言葉を王太子殿下の前で言ったことで、後戻り出来なくなる。王族に嘘をついたら虚偽罪で拘束だと言われ、職務中にこんなことをしていたからと文官はクビだとも言われた私。殿下を怒らせてしまったようだ。

 しかも、マーフィー卿が避妊薬を飲んでいたなんて知らなかった。じゃあ、このお腹の子は誰の子なの?
 本当に自分が大嫌いになる。

 終わった…。仕事も恋も、全て失った。

 文官の寮の荷物をまとめて実家に帰る私。両親に何て話そうか?文官がクビになったことは、遅かれ早かれ、噂になって家族の耳に入るだろう。しかも、お腹には誰の子か分からない赤ちゃんまでいるのだ。

 実家に帰ると、ご機嫌の両親と兄達がいた。

『レーネ!さっき、マーフィー侯爵家から使いが来て、お前と子息の婚約を急ぎでしたいと申し込みがあったぞ!子息の子供がお腹にいるんだって?順番が逆なのは、よろしくないが、マーフィー侯爵家の子なら文句はない!よくやったな。名門侯爵家に嫁ぐなんて、こんな嬉しいことはない。今日はお祝いだな!』

 父は、私の知る今までの人生で、1番嬉しそうだった。

『その荷物は文官の仕事を辞めてきたのね。妊娠してたら仕事なんてできないし、侯爵夫人になるあなたは、もう働く必要はないもの。体を大切にしないとね。今から孫が楽しみだわ!きっと可愛い赤ちゃんが産まれてくるはずね。結婚式と出産の準備もしていかないと。忙しくなるわ!』

 母に王太子殿下から、文官の仕事のクビを言い渡されたとは言えなかった。

 しかし、何があったのだろう?マーフィー卿は、避妊薬を飲んでいたと言ってたはずなのに。…もしかして、彼女を引き止める為の嘘だった?彼女に捨てられたから、私で我慢することにした?
 殿下は神殿で調べれば、自分の子供か分かると言っていたから、神殿で調べて自分の子供だと後でバレて、肩身の狭い思いをするよりは、諦めて私との結婚を選んだのかな?
 …分からない。でも、婚約の申し込みをしてくれたなら、私は喜んで彼と婚約して、結婚も出産もするわ。彼はまだ、あの恋人だった令嬢が好きかもしれないけど、子供ができれば少しは変わってくれるかもしれない。きっと私達の赤ちゃんなら、可愛く生まれてくるはずだから。
 その時の私は、そんな甘い期待を抱いてしまっていた。

 婚約をして、マーフィー侯爵家に引っ越すことになった私。持参金は、侯爵家で私が恥をかかないようにと、お父様が奮発してくれたようだった。

 笑顔の家族に見送らせて、侯爵家の立派な馬車に乗り、侯爵家に到着した。さすが名門の侯爵家だけあって立派だわ。私は近い将来、ここの女主人になるのね。
 しかし馬車を降りるとそこにいたのは、家令とメイド長と数人の使用人だけであった。マーフィー卿も、彼のお母様の姿が見えない。

『奥様から言付けがございます。身重とのことで、無理せず、すぐに部屋で休まれるようにとのことです。奥様はお茶会に出ておりますので、今日はお会いにはなれません。オスカー様は執務が忙しいので、しばらくはお会い出来ないそうです。何かありましたら、私に申して下さいませ。』

 婚約者が引っ越して来たのに、こんな扱いなの?私のお腹には侯爵家の跡継ぎがいるのよ!しかも、この部屋は、ただの客室よね?夫婦の部屋は使わせてくれないの?不満はあるが、まだ引っ越して来たばかりで、騒ぎは起こせない。その日は我慢する事にした。
 
 侯爵家に引っ越してきて、1週間が経った。気のせいかも知れないが、メイドや使用人達の私を見る目が冷ややかな気がする。相変わらず、奥様やオスカー様には会えない。何なのよ?私と結婚するんでしょ?

 メイド長から、婚約パーティーのドレスを作るのでデザイナーが来ると知らされる。デザイナーは、今流行りの有名なデザイナーだった。さすが、侯爵家ね。パーティーでは私が主役だからと、豪華なデザインをお願いした。妊娠中にオススメとデザイナーが言っていたデザインは、気に入らないので却下した。私が着るんだからいいよね?デザイナーもその後は、何も言わず、私の希望のデザインで作ることになった。

 後日。メイド長から、婚約パーティーでダンスを踊りますが、レッスンはなさいますか?と聞かれる。ダンス?正直、あまり得意ではないけど、一曲オスカー様と踊るだけなら大丈夫だよね?体もあまり無理はしたくないし。メイド長も、初めに一曲だけ踊れば大丈夫だと言っていたから、レッスンは受けなかった。

 しかし、いつまで経ってもオスカー様に会えない。最近、少しずつお腹も出て来たから、赤ちゃんが育っていることを見せたかった。私は、メイド達が止めるのも聞かず、オスカー様の執務室に強引に訪ねた。執務室に入るとオスカー様はそこにいたのだが、私に気付くと、ゴミを見るような目で私を見る。そして、近くにいた従者に、『すぐに追い出せ!』と命令していた。

『オスカー様、なぜ会ってくれないのですか?お腹の赤ちゃんが大きくなってきましたわ。見てくださいませ。』

 もうすぐ父になるのだから、もう少し関心を持って欲しかった。しかし、彼は私を冷たい目でみると

『お前に私の名前を呼ぶ許可をしていない。目障りだから出て行け!2度とここに入って来るな!』

 私は従者やメイドに自分の部屋に戻されたのだった。今更だけど、私は彼には認められていないのだと痛感した。婚約しても、こんなに惨めだなんて。

 そして、婚約パーティーの当日。朝からメイド達は私を磨いてくれている。今日は私が主役だから、当然ね。あの元恋人も、親族としてパーティーに来るらしいから、尚更綺麗にしておきたい気持ちがある。しかし、最近の私は妊娠中だからか、シミやソバカスが増えたような、濃くなったような気がする。お母様がそんな事を言っていたから、ケアはしてきたつもりだったが。
 だからメイドには、シミやソバカスが目立たないように、しっかりメイクをして欲しいと頼んだ。そして、仕上がったメイクはキツくて濃いメイクになっていた。メイドは、シミやソバカスを目立たなくするには、ある程度は濃くなってしまうと言ってはいたが、このメイクは何なの…?。しかも、ドレスも体型が変わってきたせいか、しっくりこなかった。ここまで体型が変わるなんて予想していなかった。デザイナーがオススメしていたドレスにすれば良かったの?

 今日は私が主役なのに…。メイクをやり直す時間はないと言われた私は、イライラしてメイドを殴ってしまった。そして、その現場にオスカー様のお母様が来てしまった。
 オスカー様のお母様である、侯爵夫人とまともに顔を合わせたのは初めてだ。避けられていたのだと思う。

『準備が出来たと聞いて来てみたんだけど…。貴女、酷いわね。ドレスもメイクも、今日の主役である貴女の好きなようにさせてあげたけど…。それなのに気に入らないからと、メイドに手をあげるなんて…。今日はね、貴女の家族以外は、伯爵家以上の高位の貴族の方々しか招待していないの。男爵家では許されても、侯爵家としては許されないことが沢山あるの。くれぐれも、粗相をしないように!しっかり頼みましたよ!』

 感情のない表情で話す侯爵夫人。
 私は、この方にも歓迎はされていないのだと、その時に実感した。

 そして、その後の婚約パーティーは最悪のパーティーになることを、この時の私はまだ知らないのであった。



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