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妻を助けてくれた人
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結婚して1年以上経ち、私は爵位を継承して侯爵となる。
侯爵夫人となったオリビアに対して、相変わらず失礼な物言いをする者は沢山いるようだが、彼女なりに苦手な社交を頑張ってくれているようだ。
真面目で頑張り屋の彼女を妻に迎えて良かったと思う。愛だとか恋だとかはないが、最近は少しずつ信頼関係を築けていると感じるのだ。
ある日、茶会から帰ってきたオリビアが嬉しそうな表情をしていた。
今日は王妃殿下主催の茶会に行っていたようだが、いつもなら茶会から帰った後は、疲れたようにグッタリしていることが多いのに、珍しいこともある。
「オリビア、茶会はどうだった?疲れてないか?」
「王妃殿下のお茶会でしたから、気疲れはありましたが、今日は素敵なご夫人と同じテーブルでしたので、いつもより楽しい時間が過ごせましたわ。」
貴族がみんなキツい性格なのではないのは知っているし、素晴らしい人が沢山いることも知っている。
しかしオリビアが、学生時代に醜態を晒した私の妻だということと、気が弱い元子爵令嬢ということで、性格の良くない者達から攻撃をされやすいだけなのだ。
「そうか。楽しめたようで良かったな。素敵なご夫人とはどちらの夫人だ?」
「サンチェス公爵夫人ですわ。まだ新婚らしくて、初めてお話しをさせて頂きましたが、お美しいだけでなく、物腰が柔らかくて、お優しい方でした。お茶会が苦手な私に色々と気を遣ってくださって、沢山話しかけてくださったのです。」
「サンチェス公爵夫人?」
「ええ。私に嫌味を言ってくる夫人方を、笑顔で追い払って下さいましたし、今日はサンチェス公爵夫人に沢山助けて頂きました。
さすが名門公爵家のご夫人ですわね。私よりも年下でお若いのに、尊敬に値するお方ですわ。」
サンチェス公爵夫人…。アリー…か。
アリーは、オリビアが私の妻であることを知りながらも親切にしてくれたのか…。
アリー……。
「………。」
「…旦那様?」
「…あっ。親切なご夫人と知り合えて良かったな。」
慌てて平静を装う。
「旦那様。侯爵夫人として私もお茶会を開かなければならないと考えておりましたが、サンチェス公爵夫人を招待しても大丈夫でしょうか?」
婚約者だった頃に、この邸によく遊びに来ていたアリーを招待…?そんなの無理に決まっている。アリーは不愉快かもしれないし、サンチェス公爵だって良くは思わないだろう。
「…オリビア。お茶会に慣れないうちは、爵位の低い方を招待した方がいいかもしれない。身分の高い方を招待すると、それなりのものを求められるだろうから。」
それっぽい理由をつけて、遠回しにやめた方がいいことを伝えてみる。
「…そうですわね。名門の公爵夫人を招待して、粗相は出来ませんもの。
まずは何度かお茶会を開いてみて、慣れるようにしたいと思いますわ。」
「そうだな。準備で何かあれば、何でも言ってくれ。」
「はい。ありがとうございます。」
オリビアには、いつか本当のことを話そうと思った。
しかし、社交の場で私以外の第三者から、私の捨てた元婚約者がサンチェス公爵夫人だと知らされ、オリビアが傷つくことになろうとは、その時の私は気付かなかった。
侯爵夫人となったオリビアに対して、相変わらず失礼な物言いをする者は沢山いるようだが、彼女なりに苦手な社交を頑張ってくれているようだ。
真面目で頑張り屋の彼女を妻に迎えて良かったと思う。愛だとか恋だとかはないが、最近は少しずつ信頼関係を築けていると感じるのだ。
ある日、茶会から帰ってきたオリビアが嬉しそうな表情をしていた。
今日は王妃殿下主催の茶会に行っていたようだが、いつもなら茶会から帰った後は、疲れたようにグッタリしていることが多いのに、珍しいこともある。
「オリビア、茶会はどうだった?疲れてないか?」
「王妃殿下のお茶会でしたから、気疲れはありましたが、今日は素敵なご夫人と同じテーブルでしたので、いつもより楽しい時間が過ごせましたわ。」
貴族がみんなキツい性格なのではないのは知っているし、素晴らしい人が沢山いることも知っている。
しかしオリビアが、学生時代に醜態を晒した私の妻だということと、気が弱い元子爵令嬢ということで、性格の良くない者達から攻撃をされやすいだけなのだ。
「そうか。楽しめたようで良かったな。素敵なご夫人とはどちらの夫人だ?」
「サンチェス公爵夫人ですわ。まだ新婚らしくて、初めてお話しをさせて頂きましたが、お美しいだけでなく、物腰が柔らかくて、お優しい方でした。お茶会が苦手な私に色々と気を遣ってくださって、沢山話しかけてくださったのです。」
「サンチェス公爵夫人?」
「ええ。私に嫌味を言ってくる夫人方を、笑顔で追い払って下さいましたし、今日はサンチェス公爵夫人に沢山助けて頂きました。
さすが名門公爵家のご夫人ですわね。私よりも年下でお若いのに、尊敬に値するお方ですわ。」
サンチェス公爵夫人…。アリー…か。
アリーは、オリビアが私の妻であることを知りながらも親切にしてくれたのか…。
アリー……。
「………。」
「…旦那様?」
「…あっ。親切なご夫人と知り合えて良かったな。」
慌てて平静を装う。
「旦那様。侯爵夫人として私もお茶会を開かなければならないと考えておりましたが、サンチェス公爵夫人を招待しても大丈夫でしょうか?」
婚約者だった頃に、この邸によく遊びに来ていたアリーを招待…?そんなの無理に決まっている。アリーは不愉快かもしれないし、サンチェス公爵だって良くは思わないだろう。
「…オリビア。お茶会に慣れないうちは、爵位の低い方を招待した方がいいかもしれない。身分の高い方を招待すると、それなりのものを求められるだろうから。」
それっぽい理由をつけて、遠回しにやめた方がいいことを伝えてみる。
「…そうですわね。名門の公爵夫人を招待して、粗相は出来ませんもの。
まずは何度かお茶会を開いてみて、慣れるようにしたいと思いますわ。」
「そうだな。準備で何かあれば、何でも言ってくれ。」
「はい。ありがとうございます。」
オリビアには、いつか本当のことを話そうと思った。
しかし、社交の場で私以外の第三者から、私の捨てた元婚約者がサンチェス公爵夫人だと知らされ、オリビアが傷つくことになろうとは、その時の私は気付かなかった。
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