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息子
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結婚して3年目にオリビアが出産した。
ずっと子供を望んでいたオリビアは、私によく似た息子が産まれて、涙を流して喜んでいた。
「オリビア、ありがとう。2人で大切に育てていこう。しばらくは体をゆっくり休めるんだぞ。」
「はい。旦那様には、沢山心配をお掛けしましたわね。申し訳ありませんでした。」
「いいんだ。オリビアは大切な妻なのだから。」
ずっと妊娠できずにいた。結婚して2年が経つ頃には、オリビアがそのことを深く悩んでいるのが分かった。結婚して3年経ち、子ができなければ離縁して欲しいとまで言う始末。その度に励まし、子がなくても、親戚から養子を迎えるから気にしないで良いと話をするが、オリビアは納得していなかったようだった。
子が生まれて本当に良かったと思う。
子ができた私は、これまで以上に張り切って執務をするようになる。
出産後にオリビアは、前よりも強くなった気がする。守るべき者ができたことが大きいのかも知れない。
それから10年があっという間に過ぎていった。
アルフレッドと名付けた息子はすくすく育ち、見た目は私に似ているが、性格はオリビアに似て、優しく穏やかな性格の令息になったと思う。
それくらいの年齢になると、高位貴族向けの茶会に息子同伴で招待されるようになり、アルフレッドを連れて3人で出かけることが多くなった。
結婚当初に社交慣れしてなくて苦労した経験のあるオリビアは、アルフレッドが社交で恥をかかないようにと、幼い頃から家庭教師をつけて、勉学や剣術、マナーなどをしっかりと学ばせていた。
オリビアは母として、良くやってくれているのだ。
そんなアルフレッドが12歳になる頃。
「父上。ただいま帰りました。」
王妃殿下が主催した、高位貴族の子息や令嬢だけを招待した茶会に行っていたアルフレッドが帰って来たようだ。王太子殿下の未来の側近候補や、婚約者を探すための茶会なのだろう。
「アルフか!茶会はどうだった?楽しめたか?」
茶会に何度も参加しているアルフレッドは、友人も出来て、それなりに楽しんで参加していると聞いていた。
「はい。有意義な時間を過ごせました。」
「そうか。良かったな。友人は大切にしなさい。」
自分は学生時代に、昔からの友人達を失望させて失ったから、アルフレッドにはそうなって欲しくない。
誤ったことをした時に、必死に間違いを正してくれるような、そんな友人に恵まれて欲しいと思うのだ。
「はい。分かっております。父上、実は……、」
珍しく深刻な表情をするアルフレッド。何かあったのか?喧嘩でもして来たか?いや、アルフレッドは穏やかな性格だから、争いは好まないな。
「…アルフ?どうした?」
下を向き、何か伝えたいことがあるが、言いにくいといったような雰囲気のアルフレッド。
顔を上げ、真っ直ぐに私を見つめてくると…
「…父上。私は今日の茶会で一目惚れをしてしまったかもしれません。
よく分からないのですが、あの御令嬢の笑顔が頭から離れないのです。」
アルフレッドの恋の相談…?
ずっと子供を望んでいたオリビアは、私によく似た息子が産まれて、涙を流して喜んでいた。
「オリビア、ありがとう。2人で大切に育てていこう。しばらくは体をゆっくり休めるんだぞ。」
「はい。旦那様には、沢山心配をお掛けしましたわね。申し訳ありませんでした。」
「いいんだ。オリビアは大切な妻なのだから。」
ずっと妊娠できずにいた。結婚して2年が経つ頃には、オリビアがそのことを深く悩んでいるのが分かった。結婚して3年経ち、子ができなければ離縁して欲しいとまで言う始末。その度に励まし、子がなくても、親戚から養子を迎えるから気にしないで良いと話をするが、オリビアは納得していなかったようだった。
子が生まれて本当に良かったと思う。
子ができた私は、これまで以上に張り切って執務をするようになる。
出産後にオリビアは、前よりも強くなった気がする。守るべき者ができたことが大きいのかも知れない。
それから10年があっという間に過ぎていった。
アルフレッドと名付けた息子はすくすく育ち、見た目は私に似ているが、性格はオリビアに似て、優しく穏やかな性格の令息になったと思う。
それくらいの年齢になると、高位貴族向けの茶会に息子同伴で招待されるようになり、アルフレッドを連れて3人で出かけることが多くなった。
結婚当初に社交慣れしてなくて苦労した経験のあるオリビアは、アルフレッドが社交で恥をかかないようにと、幼い頃から家庭教師をつけて、勉学や剣術、マナーなどをしっかりと学ばせていた。
オリビアは母として、良くやってくれているのだ。
そんなアルフレッドが12歳になる頃。
「父上。ただいま帰りました。」
王妃殿下が主催した、高位貴族の子息や令嬢だけを招待した茶会に行っていたアルフレッドが帰って来たようだ。王太子殿下の未来の側近候補や、婚約者を探すための茶会なのだろう。
「アルフか!茶会はどうだった?楽しめたか?」
茶会に何度も参加しているアルフレッドは、友人も出来て、それなりに楽しんで参加していると聞いていた。
「はい。有意義な時間を過ごせました。」
「そうか。良かったな。友人は大切にしなさい。」
自分は学生時代に、昔からの友人達を失望させて失ったから、アルフレッドにはそうなって欲しくない。
誤ったことをした時に、必死に間違いを正してくれるような、そんな友人に恵まれて欲しいと思うのだ。
「はい。分かっております。父上、実は……、」
珍しく深刻な表情をするアルフレッド。何かあったのか?喧嘩でもして来たか?いや、アルフレッドは穏やかな性格だから、争いは好まないな。
「…アルフ?どうした?」
下を向き、何か伝えたいことがあるが、言いにくいといったような雰囲気のアルフレッド。
顔を上げ、真っ直ぐに私を見つめてくると…
「…父上。私は今日の茶会で一目惚れをしてしまったかもしれません。
よく分からないのですが、あの御令嬢の笑顔が頭から離れないのです。」
アルフレッドの恋の相談…?
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