私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります

せいめ

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真実 1

「アリー、元気そうで何よりだ。
 公爵に大切にしてもらっているようで安心したぞ。」

 あの父が不自然に笑いかけてくる。こんな表情を私に見せてくるのは、記憶喪失になってから初めてだと思う。
 ……何を考えているのかしら?
 公爵家の使用人たちの目でも気にしている?

「侯爵様、ご無沙汰しておりました。
 旦那様には何の不自由もない生活をさせて頂いておりますから、ご心配なく。」

「……あ、ああ。それならいいんだ。」

「アリー。会いたかったわ。
 公爵様から夫婦仲良くしていると聞いて、アリーに会いたくなってみんなで来たのよ。」

 夫婦仲良くしているつもりはないけど、都合のいいように話をしているのね……

「みんなでアリーを心配していたんだが、オーウェンは大丈夫だって言うからなかなか来れなかったんだ。
 本当に元気そうで安心したぞ。」

 母も兄も何なのかしら?
 私にここまで話し掛けてきたことなんてなかったのに。
 この人たちは人の目がある場所では、ここまで変わるのね。

「ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。」

 私達が上部だけの会話をしている様子を、旦那様は笑顔で見ている。しかし私は旦那様の目が笑っていないことに気づいてしまった。
 せっかく実家の家族が来てくれたのだから、公爵夫人としてもっと愛想良く振る舞えとでも言いたいのかもしれない……

「そういえば……、ヴィーは元気にしておりますか?
 少し前にここに来てくれた時は、具合が悪そうに見えましたので気になっていたのです。」 

 その話を振った瞬間、その場の雰囲気が重くなるのが分かった。
 両親も兄も気まずそうに俯いてしまう。

「アリエル。君の義妹はもう王太子殿下の婚約者候補から外れたから、前のように忙しい日々を過ごしていない。
 というか、もう君の義妹ではなくなったんだ。
 ……ですよね? お義父上、アリエルに分かりやすく説明してあげて下さい。」

「婚約者ではなく、候補……?
 義妹ではなくなった?
 ……ヴィーに何があったのです? あの子は今どこにいるのですか?
 最近、様子がおかしかったので心配してました。
 何かに巻き込まれたのですか?」

 旦那様の話はあまりにも衝撃的で、私は取り乱してしまった。

「アリー、落ち着いて聞いて欲しい。
 ヴィオラはお前を陥れたんだ。
 アリーは、使用人と恋仲ではなかった。無理心中に巻き込まれただけだった……」

「……無理心中に巻き込まれただけ?」
 
「ああ……。記憶喪失になったアリーは何も覚えていないだろうな。
 あの日、うちの邸でアリーが使用人の男と倒れていた。その男はずっとアリーの従者をしていた者だ。アリーはその男に抱きしめられた状態で発見されたんだ。」

 血の気が引いていくのが分かった……

「アリエル、大丈夫か? 顔色が悪い。
 もし聞くのが辛いなら、無理に聞かなくてもいいんだぞ。」

「……旦那様、大丈夫ですわ。
 何も知らずにいるのも辛いので、自分に何があったのかを知りたいのです。」

「……しかし、本当に具合が悪そうだ。」

 正直、吐き気がするほど気持ちが悪くなっていた。
 でもこの機会を逃すと次があるのかが分からない。

「旦那様……、気分は良くありませんが私は真実を知りたいのです。
 侯爵様、話を続けて下さいませ!」
 
「アリー。辛そうだが、お前は真実を知りたがっているようだから話を続ける。
 ヴィオラはアリーはずっと使用人と恋仲で、情を交わす関係だったことと、殿下と結婚するくらいなら死にたいと悩んでいたということ話していたんだ。
 お前たちは仲のいい義姉妹だったし、お前に毒を飲ませた従者とは長い付き合いで仲が良かった。それにアリーは殿下との婚約を元々は望んでいなかったから、私達家族はヴィオラの話を信じてしまった……
 ただの被害者であったお前に向き合おうともせず冷遇して悪かった。
 申し訳ない。」

「……っ! アリー、ごめんなさいね。お母様を許して。
 アリーが心中するほど、殿下との婚約を嫌がっていたと思ってショックだったのよ。
 記憶を失ったと聞いて、抜け殻のようになったアリーを見るのが辛かったの。」

「殿下から婚約の申し込みが来た時に、アリーは自分には王太子妃は務まらないから、断りたいと言っていたんだ。
 でも私や両親が縁談を受けるように勧めたから、そのせいでアリーに辛い思いをさせてしまったと思って、目覚めたアリーと顔を合わせるのが辛くなってしまった。
 この愚かな兄を許してくれ……」

 自分を冷遇していた家族から謝罪されたら、関係が改善できると期待して嬉しく感じるのかしら?

 でも私は全く嬉しくなかった……



 




* いつも読んで下さってありがとうございます!

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