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ダンス
殿下はこの場で旦那様が断れないことを知っていながら、わざと言っているに違いない。
「王太子殿下。私がダンスを踊るのは、愛する妻だけだと決めておりましたが、臣下の一人として王女殿下には早くこの国に慣れて頂きたいと願っているのも事実です。
王女殿下、私でよろしければダンスにお付き合い頂けますか?」
「はい。喜んで……」
「イザベラ、良かったな」
嬉しそうに微笑む殿下の顔が悪魔のように見えてきた。この人は何を考えているのかしら?
その時、旦那様がグイッと私を抱き寄せる。
周りで私達を見ている貴族からは『まあ!』とか『溺愛?』などと声が上がっている。
突然のことに驚いていると、旦那様が耳元で囁く。
「すぐに戻るから待っていてくれ」
「……分かりました」
その後、旦那様は王女殿下をエスコートしてダンスに行ってしまった。
「二人は本当に仲がいいのねぇ。
ふふっ……良かったわ」
「王妃殿下。お恥ずかしいですわ。
このような場で失礼致しました」
「いいのよ。幸せな二人を見ると、私達まで嬉しくなってしまうわ。
陛下もそう思いませんこと?」
「そうだな。今日は仲の良い二人を見れて、本当に良かった」
今の私は顔が赤くなっているかもしれない。
そんな私に王妃殿下はニコニコして声を掛けてくれたから助かった。
王妃殿下は他の貴族の前で、私を懇意にしているかのように振る舞うことで助けてくれたようだ。
旦那様のいない時に、このような心遣いは本当に有り難い。
その時、王太子殿下が口を開く。
「シールズ公爵夫人。公爵を待つ間、私のダンスに付き合ってくれないか?」
これが殿下の真の目的……
「……畏まりました」
皆の視線を感じながら、殿下とのダンスが始まる。
この人は何を考えているのかしら?
にこやかな顔をしているけど目が怖い。
「アリー。公爵はこの場で君を抱きしめてまで、私を牽制したかったようだ」
殿下はにこやかな表情のまま、他の人に聞こえない声量で話をしている。
笑っているように見えて、声には怒りが込められているのが伝わり、底知れぬ恐怖を感じてしまう。
「主人は牽制などしておりませんわ。私達は夫婦ですから……、あのようなこともあります。
しかし、殿下のご気分を害しましたら申し訳なく思っておりますわ」
「気分を害する……? それ以上の気持ちだ。
愛のない結婚なのに、公爵に抱きしめられて頬を赤く染めるアリーを見たら、嫉妬で狂いそうになったよ」
やはり私の顔は赤くなっていたようだ。
感情を表に出してはいけないのにやってしまったわ。
「殿下。どうか婚約者の王女殿下を大切にして下さいませ。
私達夫婦のことなど捨て置き下さい」
「王家と筆頭公爵家は近い立場にあるのだから、捨て置くなんてことが出来るはずはないだろう?
それと何か勘違いしているようだが、イザベラは私と結婚したら一人で静かに暮らすことを望んでいるようだ。
アシュベリー国では側妃の娘として生まれたが、元敵国から嫁がされてきた姫の娘ということで、色々と辛い立場だったらしい。身の安全を保障してくれれば何も求めないと言っていたから、私はイザベラの希望通りにしてやるつもりだ」
そんな事情があったから、王女殿下は全てを諦めたような目をしていたのね……
一人で静かに暮らしたいだなんて、少し前の私と同じだわ。
「殿下は私達夫婦に愛がないことを憂慮しておりましたが、そんな殿下が王女殿下と愛のない結婚をするのですか?」
「ふっ! 今のアリーからそんなことを言われるとは思わなかったな。
王族で生まれた以上は、政略結婚が当たり前で国に利がある結婚を求められる。この結婚はアシュベリー国と我が国の利害関係が一致しているから結ばれることになったんだ。
アリーとの婚約だって、君がバトラー侯爵家の令嬢だから皆から認められたんだ。
だが、たとえ政略でも私たちは愛が芽生えたから幸せだった……」
殿下の反応は冷ややかだった。
「イザベラは私が側妃を迎えることに同意してくれている。むしろ、イザベラ自身が側妃を迎えることを強く望んでいるようだ。
私達が婚姻して一年後に君を迎えにいくから、シールズ公爵に絆されずに待っていてくれ。
そうだな……、今すぐに別居して計画的に離縁に向けて動いてくれたら助かる。
今日はその話がしたかったから、君をダンスに誘えて良かったよ」
「私は側妃にはなりませんとお話しましたわ。
色々ありましたが、主人と生きていくことに決めたのです」
「アリー、意地を張るのはもうやめろ。
感情的になるな。皆が私達を見ているのだからな」
「……」
殿下の言葉に表情が歪みそうになるのを何とか我慢していると、そのタイミングでダンスの曲が終わる。
「シールズ公爵夫人。ダンスに付き合ってくれて嬉しかったよ。
また何かの時に付き合ってくれ。また会おう」
殿下は笑顔で去っていった……
「アリエル!」
そのすぐ後、旦那様に呼ばれてハッとする。
「旦那様……、そろそろ帰りましょうか?」
「ああ、そうしよう」
旦那様は私の腰に手を回して歩き出した。
「王太子殿下。私がダンスを踊るのは、愛する妻だけだと決めておりましたが、臣下の一人として王女殿下には早くこの国に慣れて頂きたいと願っているのも事実です。
王女殿下、私でよろしければダンスにお付き合い頂けますか?」
「はい。喜んで……」
「イザベラ、良かったな」
嬉しそうに微笑む殿下の顔が悪魔のように見えてきた。この人は何を考えているのかしら?
その時、旦那様がグイッと私を抱き寄せる。
周りで私達を見ている貴族からは『まあ!』とか『溺愛?』などと声が上がっている。
突然のことに驚いていると、旦那様が耳元で囁く。
「すぐに戻るから待っていてくれ」
「……分かりました」
その後、旦那様は王女殿下をエスコートしてダンスに行ってしまった。
「二人は本当に仲がいいのねぇ。
ふふっ……良かったわ」
「王妃殿下。お恥ずかしいですわ。
このような場で失礼致しました」
「いいのよ。幸せな二人を見ると、私達まで嬉しくなってしまうわ。
陛下もそう思いませんこと?」
「そうだな。今日は仲の良い二人を見れて、本当に良かった」
今の私は顔が赤くなっているかもしれない。
そんな私に王妃殿下はニコニコして声を掛けてくれたから助かった。
王妃殿下は他の貴族の前で、私を懇意にしているかのように振る舞うことで助けてくれたようだ。
旦那様のいない時に、このような心遣いは本当に有り難い。
その時、王太子殿下が口を開く。
「シールズ公爵夫人。公爵を待つ間、私のダンスに付き合ってくれないか?」
これが殿下の真の目的……
「……畏まりました」
皆の視線を感じながら、殿下とのダンスが始まる。
この人は何を考えているのかしら?
にこやかな顔をしているけど目が怖い。
「アリー。公爵はこの場で君を抱きしめてまで、私を牽制したかったようだ」
殿下はにこやかな表情のまま、他の人に聞こえない声量で話をしている。
笑っているように見えて、声には怒りが込められているのが伝わり、底知れぬ恐怖を感じてしまう。
「主人は牽制などしておりませんわ。私達は夫婦ですから……、あのようなこともあります。
しかし、殿下のご気分を害しましたら申し訳なく思っておりますわ」
「気分を害する……? それ以上の気持ちだ。
愛のない結婚なのに、公爵に抱きしめられて頬を赤く染めるアリーを見たら、嫉妬で狂いそうになったよ」
やはり私の顔は赤くなっていたようだ。
感情を表に出してはいけないのにやってしまったわ。
「殿下。どうか婚約者の王女殿下を大切にして下さいませ。
私達夫婦のことなど捨て置き下さい」
「王家と筆頭公爵家は近い立場にあるのだから、捨て置くなんてことが出来るはずはないだろう?
それと何か勘違いしているようだが、イザベラは私と結婚したら一人で静かに暮らすことを望んでいるようだ。
アシュベリー国では側妃の娘として生まれたが、元敵国から嫁がされてきた姫の娘ということで、色々と辛い立場だったらしい。身の安全を保障してくれれば何も求めないと言っていたから、私はイザベラの希望通りにしてやるつもりだ」
そんな事情があったから、王女殿下は全てを諦めたような目をしていたのね……
一人で静かに暮らしたいだなんて、少し前の私と同じだわ。
「殿下は私達夫婦に愛がないことを憂慮しておりましたが、そんな殿下が王女殿下と愛のない結婚をするのですか?」
「ふっ! 今のアリーからそんなことを言われるとは思わなかったな。
王族で生まれた以上は、政略結婚が当たり前で国に利がある結婚を求められる。この結婚はアシュベリー国と我が国の利害関係が一致しているから結ばれることになったんだ。
アリーとの婚約だって、君がバトラー侯爵家の令嬢だから皆から認められたんだ。
だが、たとえ政略でも私たちは愛が芽生えたから幸せだった……」
殿下の反応は冷ややかだった。
「イザベラは私が側妃を迎えることに同意してくれている。むしろ、イザベラ自身が側妃を迎えることを強く望んでいるようだ。
私達が婚姻して一年後に君を迎えにいくから、シールズ公爵に絆されずに待っていてくれ。
そうだな……、今すぐに別居して計画的に離縁に向けて動いてくれたら助かる。
今日はその話がしたかったから、君をダンスに誘えて良かったよ」
「私は側妃にはなりませんとお話しましたわ。
色々ありましたが、主人と生きていくことに決めたのです」
「アリー、意地を張るのはもうやめろ。
感情的になるな。皆が私達を見ているのだからな」
「……」
殿下の言葉に表情が歪みそうになるのを何とか我慢していると、そのタイミングでダンスの曲が終わる。
「シールズ公爵夫人。ダンスに付き合ってくれて嬉しかったよ。
また何かの時に付き合ってくれ。また会おう」
殿下は笑顔で去っていった……
「アリエル!」
そのすぐ後、旦那様に呼ばれてハッとする。
「旦那様……、そろそろ帰りましょうか?」
「ああ、そうしよう」
旦那様は私の腰に手を回して歩き出した。
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