36 / 125
既成事実
しおりを挟む 顔面蒼白の伯爵様は、部屋に2人になると跪く。
「……エレノア。
わ、私は君を裏切ることを…してしまった。
すまない…。こんなことをするつもりは……」
目がヤバイ…。メイド長があんな風に言っていた理由が分かったような気がする。
「伯爵様、昨夜の御相手はどちらのお方でしたの?」
自称この家のボスで鬼嫁である私は、意識的に感情を抑える。
「………。」
「伯爵様。話せないなら、中途半端に謝罪などしなくて結構ですから、この部屋から出て行ってもらえますか?」
「…………アブス子爵令嬢だ。」
アブス子爵令嬢は私よりも少し年上で、友人ではないが私も知っている。
あの女は多分、ずっと伯爵様を慕っていたと思う。私が伯爵様を好きだった頃、夜会で伯爵様によく話しかけているのを見たことがある令嬢だったから覚えているんだよね。好きな人のことを慕っている人は、見ればなんとなく分かるから。
見た目は大人しそうな令嬢だったと思うけど、ギル達が言っていた、第二夫人を狙う女狐の中にあの女もいたのかな?
「アブス子爵令嬢と一晩を過ごしたと言うのですね?閨を共にしたと?」
「…すまない。……私もなぜこんなことになったのか、分からないんだ。
酒に酔ってしまったと思って、客間で休ませてもらったのだが、その後に気付くとアブス子爵令嬢とまぐわっていた。その後記憶が曖昧だが、気づいたら朝になっていた…。
エレノアを裏切ろうなんて、考えたことはない。
本当にすまない。………っ。」
声が震えている?泣いてるの…?
ハァー。泣きたいのはこっちだよ。
何でこんな人と結婚しちゃったんだろう…。って何度思ったことか。
「…それで、アブス子爵令嬢はどうしましたか?」
「……純潔を奪われたから、責任を取って欲しいと言われた。」
ありがちなパターンだ…。
「ではそうして下さい。」
「私は第二夫人は要らない!!」
バカか…?ああ、ストレスだ。
「伯爵様、夜会でそんなことをしたら、すぐに色々な方の耳に入ってしまうでしょう。
責任をとらなければ、貴方は何と思われるでしょうね?」
多分あの女、真面目に自分の両親に報告してそうだし。
「……アブス子爵令嬢は、明日、両親と共にこの邸に来たいと言っていた。
私は誠心誠意、謝ろうと思っている。」
謝って済む問題ではない。既成事実作ったんだから…。あの女は伯爵様が好きなんだろうし。
白い結婚まであと1年切ったから、静かに待とうと思っていたのに…。
愛も何もない旦那様だけど、こんな裏切りはキツいな。
伯爵様の話を聞いても、キリがないと判断した私は…
「伯爵様…、1人にしてもらえますか?」
「……分かった。
エレノア、本当に申し訳なかった。」
許すか!バカが…。
伯爵様が出て行った後、私は実家のギルに手紙を書き、護衛騎士に急ぎで届けてもらうことにした。
こんな時は、金持ちの実家と優秀な義弟に頼らせてもらおう。
護衛騎士は1時間かからないで戻って来た。単騎は速い!前世なら騎手に推薦してたけど、体がデカいから無理か…。じゃなくて!
「お嬢、ギルバート様から手紙を預かってきました。」
「ご苦労!ギルは何か言ってた?」
「いえ特には。…無言でしたが、怒っておられるようでした。」
「そう。ありがとう。」
普通怒るよね。余所のお嬢さんに手を出して、無断外泊してきた義姉の旦那様の話を聞かされたらさ。
どれ、ギルからの手紙を見てみようか。
〝詳細かつ確かな情報を得るには明日には間に合わないが、急ぎで調べる。
義姉さん、これが全て終わったら、家に帰ってくる準備をして。〟
ですよねー。明日までにはムリなのはしょうがない。
家に帰って来いってか。出戻り扱いされそうだな。
ストレスに耐えながら、明日はやり過ごすしかないな…。
「……エレノア。
わ、私は君を裏切ることを…してしまった。
すまない…。こんなことをするつもりは……」
目がヤバイ…。メイド長があんな風に言っていた理由が分かったような気がする。
「伯爵様、昨夜の御相手はどちらのお方でしたの?」
自称この家のボスで鬼嫁である私は、意識的に感情を抑える。
「………。」
「伯爵様。話せないなら、中途半端に謝罪などしなくて結構ですから、この部屋から出て行ってもらえますか?」
「…………アブス子爵令嬢だ。」
アブス子爵令嬢は私よりも少し年上で、友人ではないが私も知っている。
あの女は多分、ずっと伯爵様を慕っていたと思う。私が伯爵様を好きだった頃、夜会で伯爵様によく話しかけているのを見たことがある令嬢だったから覚えているんだよね。好きな人のことを慕っている人は、見ればなんとなく分かるから。
見た目は大人しそうな令嬢だったと思うけど、ギル達が言っていた、第二夫人を狙う女狐の中にあの女もいたのかな?
「アブス子爵令嬢と一晩を過ごしたと言うのですね?閨を共にしたと?」
「…すまない。……私もなぜこんなことになったのか、分からないんだ。
酒に酔ってしまったと思って、客間で休ませてもらったのだが、その後に気付くとアブス子爵令嬢とまぐわっていた。その後記憶が曖昧だが、気づいたら朝になっていた…。
エレノアを裏切ろうなんて、考えたことはない。
本当にすまない。………っ。」
声が震えている?泣いてるの…?
ハァー。泣きたいのはこっちだよ。
何でこんな人と結婚しちゃったんだろう…。って何度思ったことか。
「…それで、アブス子爵令嬢はどうしましたか?」
「……純潔を奪われたから、責任を取って欲しいと言われた。」
ありがちなパターンだ…。
「ではそうして下さい。」
「私は第二夫人は要らない!!」
バカか…?ああ、ストレスだ。
「伯爵様、夜会でそんなことをしたら、すぐに色々な方の耳に入ってしまうでしょう。
責任をとらなければ、貴方は何と思われるでしょうね?」
多分あの女、真面目に自分の両親に報告してそうだし。
「……アブス子爵令嬢は、明日、両親と共にこの邸に来たいと言っていた。
私は誠心誠意、謝ろうと思っている。」
謝って済む問題ではない。既成事実作ったんだから…。あの女は伯爵様が好きなんだろうし。
白い結婚まであと1年切ったから、静かに待とうと思っていたのに…。
愛も何もない旦那様だけど、こんな裏切りはキツいな。
伯爵様の話を聞いても、キリがないと判断した私は…
「伯爵様…、1人にしてもらえますか?」
「……分かった。
エレノア、本当に申し訳なかった。」
許すか!バカが…。
伯爵様が出て行った後、私は実家のギルに手紙を書き、護衛騎士に急ぎで届けてもらうことにした。
こんな時は、金持ちの実家と優秀な義弟に頼らせてもらおう。
護衛騎士は1時間かからないで戻って来た。単騎は速い!前世なら騎手に推薦してたけど、体がデカいから無理か…。じゃなくて!
「お嬢、ギルバート様から手紙を預かってきました。」
「ご苦労!ギルは何か言ってた?」
「いえ特には。…無言でしたが、怒っておられるようでした。」
「そう。ありがとう。」
普通怒るよね。余所のお嬢さんに手を出して、無断外泊してきた義姉の旦那様の話を聞かされたらさ。
どれ、ギルからの手紙を見てみようか。
〝詳細かつ確かな情報を得るには明日には間に合わないが、急ぎで調べる。
義姉さん、これが全て終わったら、家に帰ってくる準備をして。〟
ですよねー。明日までにはムリなのはしょうがない。
家に帰って来いってか。出戻り扱いされそうだな。
ストレスに耐えながら、明日はやり過ごすしかないな…。
196
お気に入りに追加
6,667
あなたにおすすめの小説

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
私のことはお気になさらず
みおな
恋愛
侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。
そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。
私のことはお気になさらず。
はっきり言ってカケラも興味はございません
みおな
恋愛
私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。
病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。
まぁ、好きになさればよろしいわ。
私には関係ないことですから。

貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる