君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ

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夜会は波乱 2

「エレノア…。伯爵家に灰色の泥棒猫が住み着いたって噂になっているけれど、貴女はその猫に餌付けして可愛がっているようね?」
 
 灰色の泥棒猫って言った?
 王妃殿下、ストレートに言い過ぎだから。

 

 王族に挨拶する為に、伯爵様とアブス、私で広間の王座の前にいる。
 いつものように王妃殿下が気さくに話しかけてくれたのはいいけど、王妃殿下…、飛ばし過ぎじゃない?

 しかも、ロジャース伯爵家の3人が揃っての夜会は初めてだから、他の貴族達が私達に注目して、やたら視線を感じるし、王妃殿下とのやり取りに聞き耳を立てているのか、広間の中が静かになっているんだけど。

「王妃殿下。私は痩せ過ぎた猫は可愛くないと思っただけなのですわ。」

 普段は強気な鬼嫁も、この場では何と返すのが正解なのか分からない。

「エレノアは優しいわねぇ。私なら、王宮に泥棒猫が現れたなんて聞いたら、餌付けなんてしないで、鞭打ちをして直ぐに追い出すわね…。」

「母上。伯爵家に現れたのは泥棒猫ではなくて、卑しい娼婦だと聞いてましたが。
 こんな場所によく顔を出せるものだ。恥知らずが…。」

 王子殿下、アンタは喋んな!

 ちょっとー!この親子何とかしてー!
 アブスに逆恨みされて大変なのは私なんだからね。

「2人とも口を慎め!エレノアが困っているだろう!」

 えっ、陛下?2人を止めてくれるのは、有り難いけど、〝エレノア〟って呼ぶのやめようよ!

「そうですよ!せっかく私の誕生を祝う為に来てくれたのに、母上とマテオがそんな風に言ったら、ロジャース伯爵夫人が気の毒ですよ。
 夫人、母と弟が申し訳ない。2人は夫人が心配で仕方がないようだ。」

 王太子殿下が1番まともなのかな?隣の妃殿下は苦笑いしているわ。


 王妃殿下と王子殿下の2人に絡まれたおかげで目立ってしまった…。


「義姉さん、大丈夫だった?飲み物でも飲んでくる?」

「そうね…。
 伯爵様は、第二夫人を皆様に紹介して差し上げて下さいね。私は両親や友人と話をしていますから。」

 この2人と一緒にいると余計に目立つから、別行動するって決めた!後は若い2人でよろしくやってくれ!
 アブスもその方が嬉しいでしょ?今のうちに伯爵様の友人達に顔を売って、仲良くなっておきなさいね…

「エレノアは私とダンスは踊ってくれないのか…?」

 踊るわけないだろうが!!

「伯爵様、第二夫人と初めての夜会なのですわよ。第二夫人と踊ってあげて下さいませ。
 第二夫人の貴女も、私を睨みつける暇があるなら、伯爵家の名前を汚さないように、相応しい振る舞いというものを考えながら行動しなさいね。
 泥棒猫と言われようが、卑しい娼婦だと言われようが、貴女はうちの第二夫人なのですから。」

 さっきから私を敵意丸出しな目で見ているアブスにイラッとした鬼嫁は、ついハッキリ言ってしまった。

 誰に聞かれようが関係ないわ。

「…っ!酷いですわ…。私をそんな風に虐めて楽しいですか?」

 被害妄想が始まったわ。面白くないことを言われたらこうやって話を逸らすのね…、この女は。

「いつエレノアがお前を虐めた?お前がエレノアを虐めているんだろう!
 これ以上エレノアに酷い態度を取るなら、お前の両親を呼んでくるから、今日は引き取ってもらうか?実家の子爵家で教育し直してもらってもいいんだ。」

「……も、申し訳ありません。」

「行動と言動に気を付けろ!」

「…はい。」

 伯爵様もアブスに強く言うことに決めたらしい…。


 クスクス…
 
 聞き耳を立てている誰かに笑われているわ。
 

「義姉さん…、行こう。」

「ええ。」





 ギルと飲み物で喉を潤して、ダンスを一曲踊った後だった。
 今、最も会いたくない人物の声が聞こえる。

「ロジャース伯爵夫人、ご機嫌よう!」

 ちっ!来ると思ったわ。

「エイベル伯爵令嬢、ご機嫌よう。」

 貴族学園時代からこうやって絡んでくる、いけ好かない女…。やはり来たわね。

「あらぁ?今日はロジャース伯爵様はご一緒じゃないのかしら?」

 ああイライラするわ。
 さて、今日は何と言って戦おうかしら?

 その時……

「エイベル伯爵令嬢は、義姉以外に友人がいらっしゃらないのですか?」

 えっ?ギル…?

「…何ですって?」

「友人がいるなら、私の義姉の噂話を聞いているはずです。義姉の噂話を聞いていたら、そんな無神経なことをわざわざ聞きに来たりはしないはずですよね。
 それとも噂話を知りながら、義姉が被害者で苦しんでいるのを知った上で、笑顔でそんな話をしに来たのですか?
 だとしたら、すごい性格の持ち主ですね。」

 ギルー!!義姉さんは負けないよ。

「ギル、大丈夫よ。私のこの苦しみは、未だに恋人も、婚約者もいないエイベル伯爵令嬢には分からない心の痛みなのよ。
 …だから、彼女を怒らないであげて。
 彼女だって、心から愛する人が現れたら変われるはずよ。彼女の幸せが訪れるのを、私達は陰ながら応援してあげましょうね。」

「…義姉さん、分かったよ。義姉さんがそこまで言うなら、私は何も言わないよ。」

 ギルは私のこんなくだらない三文芝居にも付き合ってくれるから嬉しい。

「…な、何なのよ!伯爵様に不貞をされた不幸な夫人のクセに!
 第二夫人に寵愛を奪われて辛いって認めなさいよ!」

 寵愛を奪われるも何も、始めから愛されてもいませんでしたが…。


 この女、今日はやたらしつこく絡むわね。ムカつくー!
 何て言い返そうか?


 その時だった……


「エイベル伯爵令嬢。いい加減にしろ!」

 ハァー…。また面倒くさいのが来たわ。



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