記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

文字の大きさ
69 / 133

久しぶり

しおりを挟む
 お忍びで突然やって来た国王陛下を、追い返すことが出来る強者はこの国にはいないだろう。陛下は家令が応接室に通したらしい。
 そしてメイド5人が、スピーディーに私の準備をしてくれた。さすがクラーク侯爵家のメイド達は優秀だ。

「お嬢様!メイクとドレスは、儚げで、清楚で、殿方の庇護欲をそそるような雰囲気にしましたわ。今のお嬢様にピッタリです。頑張って来て下さいね!」

 何を頑張れというのか疑問もあるが、メイド達からの私へのエールらしい。クラーク侯爵家のメイド達は、何気に愛嬌があって面白い子が多いのだ。

「みんなありがとう!行ってくるわ。」

「「行ってらしゃいませ!」」

 家令が応接室のドアをノックする。

「どうぞ!」

「失礼致します。」

 応接室に入ると、陛下と護衛騎士が5人いた。圧があるわー!

「お待たせ致しました。ソフィア・クラーク、王国の太陽である国王陛下にご挨拶申し上げます。」

「ああ、そんなに畏まらなくてよいぞ。病み上がりだろうから、座って話そう。急に邪魔をして悪かったな。」

 本当に悪いよ!とは言えない。

「ご配慮、感謝いたします。」

「クラーク嬢、久しぶりだな。元気になったと聞いてな。偶々、時間があったから来てみた。」

 相変わらず、気さくに話してくれる。

「父も母も不在の日に、偶々いらして下さったのですね。色々とご心配をお掛けしてしまい、大変申し訳ありませんでした。」

「くっくっ。侯爵と夫人がいない日に偶々来てしまったようだ。クラーク嬢が、相変わらず面白い令嬢でいてくれて安心したぞ。」

「それは良かったですわ。」

「クラーク嬢は、イーサンとは会ったのか?」

 うわー!ストレートに聞くなぁ。

「いえ。婚約は解消されましたので、もう会わないと思います。」

「…はっきり言うのだな。」

「陛下が、真っ直ぐに聞いてきましたので、私もはっきりと答えただけですわ。」

「そうか。なら、今度は私と婚約するか?」

 何言ってんだ、この陛下は!

 あれ…?何だ?この殺気は?陛下じゃないよね。陛下の背後に立つ護衛騎士か?
 私が馴れ馴れしく話しているから、無礼だって怒っているとか?

「……!冗談だ。悪いな。久しぶりに会えたのが嬉しくてな。」

「ええ。分かっております。私はこの先、結婚は出来ないのは理解していますから。」

「なぜそう思う?」

「あの毒の後遺症が気になるからですわ。この先、また体調を崩すかもしれませんし、子供も産めるか分かりませんから。」

「そこまで考えていたのか。キャンベル公爵家が消え、クラーク嬢が目覚めて良かったということだけではなかったのだな。」

「もう平気ですわ。大丈夫です。」

「…………。」

「……。」

 あれっ?陛下の護衛騎士の1人が…
 
 私が陛下の背後を気にしていることに気付いた陛下も、背後を振り返る。

「…クラーク嬢、すまないな。この護衛騎士は涙脆いようで、何かあるといつもこうなんだ。剣の腕はいいのだが。」

 なるほど。よくおじさんとかで涙脆い人いるよね。この騎士様は、まだ20代くらいで若いのに涙脆いのかー。私の話を耳にして同情でもした?優しい人なのかな?

「ふふっ。お優しいお方なのでしょうね。良かったらお使い下さいませ。」

 心優しい?護衛騎士様にハンカチを渡す私。騎士様は無言で頭を下げて、ハンカチを受け取ってくれた。

 その後は楽しい世間話をして、陛下は帰って行った。

 急に来られたのは迷惑だが、陛下は普通に話しやすい人だから助かった。

 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

奪われたものは、もう返さなくていいです

gacchi(がっち)
恋愛
幼い頃、母親が公爵の後妻となったことで公爵令嬢となったクラリス。正式な養女とはいえ、先妻の娘である義姉のジュディットとは立場が違うことは理解していた。そのため、言われるがままにジュディットのわがままを叶えていたが、学園に入学するようになって本当にこれが正しいのか悩み始めていた。そして、その頃、双子である第一王子アレクシスと第二王子ラファエルの妃選びが始まる。どちらが王太子になるかは、その妃次第と言われていたが……

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

【書籍化決定】愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

処理中です...