記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ

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別荘

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 お父様とお母様は、自分達が留守の間に国王陛下がお忍びでいらしたと聞いてとても驚いていた。

「陛下は何しに来たのかな?」

 お父様の顔が引き攣っている。

「世間話をして、お茶を飲んで帰って行きましたわ。」

「ソフィー、大丈夫?疲れなかった?」

「急にいらした時は驚きましたが、普通に気さくに話せるお方でしたので、何とかなりましたわ。」

「私達がいない事を知って来たわね。あの陛下は!」

「でしょうねー。」

 でも、心配して来てくれたのは何となく分かったから、嫌な気はしなかったんだよね。
 お父様達には、余計なことを言うと心配されそうだから、陛下とのやり取りはサラッとだけ話しておいた。



 数日後。

「ソフィー。エドワーズ公爵様がどうしても貴女に会いたいと言っているの。心配かけたのだし、喧嘩別れでもないのだから、少しだけ会って話をしてみたら?」

 確かに心配かけたし、お世話になった人だから、最後に会ってお礼くらいは伝えた方がいいのかもしれない。
 でも、会ったら理性を保っていられる自信がないし、余計に悲しくなると思う。あの人の前で、ブサイクな顔して泣きたくない。

 本当は笑顔で、今までありがとう、貴方に会えて良かった、幸せでしたって言えたらいいのに。
 直接会ってそんなことが言える程、まだ心の傷は癒えてないし。なんだか、前世で聞いたことがある歌の歌詞のようだなぁ。お母さんが歌っていた『サヨナラさえ~』ってさ。…ああ、私って弱い人間なんだなぁ。

「お母様、今はまだ会ってお話しをするのは辛いのです。でもお礼くらいは伝えたいので、手紙を書こうかと思います。それでもいいですか?」

「ソフィーがそう言うなら、私は反対しないわ。」

 エドワーズ公爵様宛ての手紙には、お世話になったことのお礼と、一緒に過ごせた日々は幸せであったこと、大好きだったこと、別々の人生を歩むことになるが、公爵様の今後の幸せを願っていると書いた。

 今の私に出来るのは、これが精一杯だ。



 そして後日。
 私は王都を離れることにした。

 お母様に、しばらくは王都を離れて過ごしたいと話すと、お母様が実家から貰ったという別荘が港町にあるらしい。暖かくてのんびりした雰囲気の場所だから、療養にオススメだと言ってくれたので、その別荘にしばらく行くことにした。

 王都から遠く離れているので、知り合いに会うこともないだろうから、伸び伸び過ごせるだろうって。貿易の中心の港町で、色々な国の人達が出入りしているから、美味しい食べ物が沢山あるわよーって、お母様のオススメの別荘らしい。

 お母様、大好きだわ。私のこんなワガママを笑顔で受け入れてくれる。
 弱い娘でごめんなさい。王都にいると、色々なことを思い出してしまうし、うっかり会いたくない人達にも会ってしまいそうで嫌なの。
 お父様も一緒に行きたいとか、最後まで煩かったけど、お母様が黙らせたようだ。

 専属メイドと護衛騎士を連れて、私は旅立つことになる。

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