3 / 113
1.2月14日
2月14日 p.1
しおりを挟む
中学二年の成瀬浩志は、教室に一人残されていた。
部活動に励む生徒たちの声が校内に響くなか、浩志は窓際の一番後ろの席に座り、先ほど担任より手渡された数学の課題に取り組んでいる。
彼は朝早く起きることが苦手で、始業のチャイムに間に合わない事がしばしばあった。 そのため、中学二年になった頃には、遅刻の常習犯として校内での地位を不動のものとしていた。
今日は、ここ数日の度重なる遅刻の罰として、担任より補習を言い渡され居残りと相成ったのである。
根が真面目な浩志は素直に課題に取り組んでみたものの、相手は苦手な数学。自力で解けるはずもなかった。 浩志は早々に考えることをやめ、窓の外に目を向ける。 彼の座って居る場所からは、中庭を見下ろすことができた。
中庭には花壇がある。春には色とりどりの花が咲き中庭を賑わせていたが、そんな花壇も、二月の今は茶色い土が剥き出しになったまま寒々としていた。
今は何もない中庭を何気なく見下ろしていた浩志の視線が、ある一点に向けられる。
視線の先には、一人の少女。
肩ほどまである髪を二つに分けて縛り、幾分か大きめの真新しい制服を着たその少女は、殺風景な花壇をじっと見つめている。
少女の真剣な眼差しが気になったのか、浩志は席を立ち窓へと近づいた。
浩志が少女の視線の先を確認しようと窓から身を乗り出したちょうどその時、教室の扉を勢いよく開け一人の女子生徒が入って来た。
「ああ! やっぱりサボってる!」
浩志のクラスメイトである河合優は、そう言いながら彼のそばへとやってきた。
「ねぇ、何してるの?」
浩志は窓から外に出かけていた頭を引っ込め、優の方へと向き直った。
「別に。ただあいつは何を見てるんだろうと思ってさ」
「あいつって?」
「ほら。あいつ……って、アレ?」
二人は並んで窓から中庭を見下ろしたが、少女の姿はもうそこにはなかった。
「誰もいないじゃない? 何もないし」
「おかしいなぁ……。あいつ、この寒い中、コートも着ないで外にいたんだぞ。何かをじっと見てたんだって!」
「夢でもみたんじゃないの?」
そう言うと優は窓から体を離し、机の方へと向き直る。机の上には先ほどまで浩志が取り組んでいた数学の課題が、ほとんど手付かずのまま残されていた。 優は課題を取り上げると、内容を確認し始める。
しばらく窓の外を気にしていた浩志だったが、やがて席に戻ると優から課題を取り上げた。
「ところで、お前は、何をしに来たんだよ?」
部活動に励む生徒たちの声が校内に響くなか、浩志は窓際の一番後ろの席に座り、先ほど担任より手渡された数学の課題に取り組んでいる。
彼は朝早く起きることが苦手で、始業のチャイムに間に合わない事がしばしばあった。 そのため、中学二年になった頃には、遅刻の常習犯として校内での地位を不動のものとしていた。
今日は、ここ数日の度重なる遅刻の罰として、担任より補習を言い渡され居残りと相成ったのである。
根が真面目な浩志は素直に課題に取り組んでみたものの、相手は苦手な数学。自力で解けるはずもなかった。 浩志は早々に考えることをやめ、窓の外に目を向ける。 彼の座って居る場所からは、中庭を見下ろすことができた。
中庭には花壇がある。春には色とりどりの花が咲き中庭を賑わせていたが、そんな花壇も、二月の今は茶色い土が剥き出しになったまま寒々としていた。
今は何もない中庭を何気なく見下ろしていた浩志の視線が、ある一点に向けられる。
視線の先には、一人の少女。
肩ほどまである髪を二つに分けて縛り、幾分か大きめの真新しい制服を着たその少女は、殺風景な花壇をじっと見つめている。
少女の真剣な眼差しが気になったのか、浩志は席を立ち窓へと近づいた。
浩志が少女の視線の先を確認しようと窓から身を乗り出したちょうどその時、教室の扉を勢いよく開け一人の女子生徒が入って来た。
「ああ! やっぱりサボってる!」
浩志のクラスメイトである河合優は、そう言いながら彼のそばへとやってきた。
「ねぇ、何してるの?」
浩志は窓から外に出かけていた頭を引っ込め、優の方へと向き直った。
「別に。ただあいつは何を見てるんだろうと思ってさ」
「あいつって?」
「ほら。あいつ……って、アレ?」
二人は並んで窓から中庭を見下ろしたが、少女の姿はもうそこにはなかった。
「誰もいないじゃない? 何もないし」
「おかしいなぁ……。あいつ、この寒い中、コートも着ないで外にいたんだぞ。何かをじっと見てたんだって!」
「夢でもみたんじゃないの?」
そう言うと優は窓から体を離し、机の方へと向き直る。机の上には先ほどまで浩志が取り組んでいた数学の課題が、ほとんど手付かずのまま残されていた。 優は課題を取り上げると、内容を確認し始める。
しばらく窓の外を気にしていた浩志だったが、やがて席に戻ると優から課題を取り上げた。
「ところで、お前は、何をしに来たんだよ?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
光のもとで2
葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、
新たな気持ちで新学期を迎える。
好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。
少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。
それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。
この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。
何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい――
(10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)
✿ 私は夫のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい
設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀
結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。
結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。
それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて
しなかった。
呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。
それなのに、私と別れたくないなんて信じられない
世迷言を言ってくる夫。
だめだめ、信用できないからね~。
さようなら。
*******.✿..✿.*******
◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才 会社員
◇ 日比野ひまり 32才
◇ 石田唯 29才 滉星の同僚
◇新堂冬也 25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社)
2025.4.11 完結 25649字
【完結】限界離婚
仲 奈華 (nakanaka)
ミステリー
もう限界だ。
「離婚してください」
丸田広一は妻にそう告げた。妻は激怒し、言い争いになる。広一は頭に鈍器で殴られたような衝撃を受け床に倒れ伏せた。振り返るとそこには妻がいた。広一はそのまま意識を失った。
丸田広一の息子の嫁、鈴奈はもう耐える事ができなかった。体調を崩し病院へ行く。医師に告げられた言葉にショックを受け、夫に連絡しようとするが、SNSが既読にならず、電話も繋がらない。もう諦め離婚届だけを置いて実家に帰った。
丸田広一の妻、京香は手足の違和感を感じていた。自分が家族から嫌われている事は知っている。高齢な姑、離婚を仄めかす夫、可愛くない嫁、誰かが私を害そうとしている気がする。渡されていた離婚届に署名をして役所に提出した。もう私は自由の身だ。あの人の所へ向かった。
広一の母、文は途方にくれた。大事な物が無くなっていく。今日は通帳が無くなった。いくら探しても見つからない。まさかとは思うが最近様子が可笑しいあの女が盗んだのかもしれない。衰えた体を動かして、家の中を探し回った。
出張からかえってきた広一の息子、良は家につき愕然とした。信じていた安心できる場所がガラガラと崩れ落ちる。後始末に追われ、いなくなった妻の元へ向かう。妻に頭を下げて別れたくないと懇願した。
平和だった丸田家に襲い掛かる不幸。どんどん倒れる家族。
信じていた家族の形が崩れていく。
倒されたのは誰のせい?
倒れた達磨は再び起き上がる。
丸田家の危機と、それを克服するまでの物語。
丸田 広一…65歳。定年退職したばかり。
丸田 京香…66歳。半年前に退職した。
丸田 良…38歳。営業職。出張が多い。
丸田 鈴奈…33歳。
丸田 勇太…3歳。
丸田 文…82歳。専業主婦。
麗奈…広一が定期的に会っている女。
※7月13日初回完結
※7月14日深夜 忘れたはずの思い~エピローグまでを加筆修正して投稿しました。話数も増やしています。
※7月15日【裏】登場人物紹介追記しました。
2026年1月ジャンルを大衆文学→ミステリーに変更しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる