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6.3月13日
3月13日 p.3
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「すっげ……」
浩志は小学生の時に数回学校の図書室へ足を運んだことがあったが、全くの規模の違いに口をあんぐりと開けて上を見上げるばかりだった。
「うふふ。ゆっくりしていってね。もし借りたい本や、分からないことがあれば、私に声をかけて」
司書はそう言うと、入り口横にある小部屋へと入っていった。
一人取り残された浩志は、これからどうしようかと考えを巡らす。せつなと会って話がしたいが、この暖かな場所から木枯らしが吹き荒ぶあの場所へ再び戻るには、勇気と気合が必要だった。
ふと、書架とは反対側に設置されている窓に目が留まる。もしかしてと思い窓に歩み寄ると、彼は閉められているカーテンをそっと開けてみた。彼の予想通り、窓からは中庭を見ることができた。彼は小さくガッツポーズをする。すぐにこの場所でせつなを待つことに決めた。
しばらくそのまま窓の外を見ていた彼だったが、いくら待ってもせつなは現れない。何もせず待機するだけの状況に飽きてしまった浩志は、少し書架の間を歩いてみることにした。しかし、読書など全くしない浩志にとっては、背表紙のたくさん詰まった書架はただの迷路の壁のように感じられる。
(図書館って、どうしてこんなに暇なんだろう)
そんなことを思いつつブラブラと書架の間を歩いていると、一冊の背表紙が目に留まった。それは、花の百科事典だった。浩志は、何気なくその本を棚から抜き出し、待機場所と決めた窓辺の席へ戻る。
外の様子を気にしつつパラパラとページを捲ると、探していた花の項目を見つけた。「スターチス」のページには花の写真とともに、花の説明や開花時期、花言葉などが載っていた。スターチスの花言葉は「変わらぬ心」「変わらない誓い」「途絶えぬ記憶」らしい。
(変わらないことを望んでいるようだな)
浩志は花言葉の並びをぼんやりと眺めつつ、この花言葉に不快感を感じてしまった。その後もしばらくパラパラとページを捲ってみたが、これといって目ぼしいページはなかった。
浩志が顔を上げると、いつの間にやら天窓からの夕日はなくなり、夕闇が天窓を黒く染めていた。閉館の時間が近いのか、一人勉強に没頭していた男子学生が帰る支度をして席を立つ。そして、カウンター周りで忙しそうに動いていた司書に二言三言声をかけて出ていった。
その様子をぼんやりと眺めていた彼に、やがて司書が閉館を告げる。彼は本を閉じると、元の場所へ本を戻すため席を立った。
浩志は小学生の時に数回学校の図書室へ足を運んだことがあったが、全くの規模の違いに口をあんぐりと開けて上を見上げるばかりだった。
「うふふ。ゆっくりしていってね。もし借りたい本や、分からないことがあれば、私に声をかけて」
司書はそう言うと、入り口横にある小部屋へと入っていった。
一人取り残された浩志は、これからどうしようかと考えを巡らす。せつなと会って話がしたいが、この暖かな場所から木枯らしが吹き荒ぶあの場所へ再び戻るには、勇気と気合が必要だった。
ふと、書架とは反対側に設置されている窓に目が留まる。もしかしてと思い窓に歩み寄ると、彼は閉められているカーテンをそっと開けてみた。彼の予想通り、窓からは中庭を見ることができた。彼は小さくガッツポーズをする。すぐにこの場所でせつなを待つことに決めた。
しばらくそのまま窓の外を見ていた彼だったが、いくら待ってもせつなは現れない。何もせず待機するだけの状況に飽きてしまった浩志は、少し書架の間を歩いてみることにした。しかし、読書など全くしない浩志にとっては、背表紙のたくさん詰まった書架はただの迷路の壁のように感じられる。
(図書館って、どうしてこんなに暇なんだろう)
そんなことを思いつつブラブラと書架の間を歩いていると、一冊の背表紙が目に留まった。それは、花の百科事典だった。浩志は、何気なくその本を棚から抜き出し、待機場所と決めた窓辺の席へ戻る。
外の様子を気にしつつパラパラとページを捲ると、探していた花の項目を見つけた。「スターチス」のページには花の写真とともに、花の説明や開花時期、花言葉などが載っていた。スターチスの花言葉は「変わらぬ心」「変わらない誓い」「途絶えぬ記憶」らしい。
(変わらないことを望んでいるようだな)
浩志は花言葉の並びをぼんやりと眺めつつ、この花言葉に不快感を感じてしまった。その後もしばらくパラパラとページを捲ってみたが、これといって目ぼしいページはなかった。
浩志が顔を上げると、いつの間にやら天窓からの夕日はなくなり、夕闇が天窓を黒く染めていた。閉館の時間が近いのか、一人勉強に没頭していた男子学生が帰る支度をして席を立つ。そして、カウンター周りで忙しそうに動いていた司書に二言三言声をかけて出ていった。
その様子をぼんやりと眺めていた彼に、やがて司書が閉館を告げる。彼は本を閉じると、元の場所へ本を戻すため席を立った。
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