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8.3月16日
8.3月16日 p.4
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「ね、ねぇ。成瀬? もう帰ろうよ?」
「ん? いや~、でももう少し。もう少ししたら、あいつ戻ってくるかも知れないし……って、オイ」
優の放つ緊迫感に気がつかずのんびりと答える浩志の手首を優はガッチリと掴むと、ものすごい力で引っ張りながら昇降口へ向かって歩き出した。
「きっと、もう帰ったんだよ。約束してたわけじゃないんでしょ?」
「まぁ、そうだけど」
「じゃ、もういいでしょ! 早く……早く帰ろ!」
「ちょっと待てって」
浩志は優の手を振りほどこうと腕に力を入れた。すると、腕先に優が震えていることを感じて思わず慌てる。
「オイ、どうした? なんで震えて?」
「いいから、早く帰ろ……」
「お、おう」
下駄箱に着いても優は浩志の腕を離さない。浩志は急かされながら靴を履き替えると、優に引きずられるようにして校舎を後にした。
正門を潜る時、浩志は後ろ髪を引かれるかのようにチラリと校舎へ視線を向ける。校舎の壁面に掲げられた校内スローガンの大きな幕が、風を受けてはたはたと心地良さそうにはためいていた。
(だいぶ暖かくなったなぁ。今日は、せつなと花壇の確認もするつもりだったのになぁ)
そんな事を考えていると、浩志を力任せに引っ張って歩いていた優の手が不意に離れた。優は立ち止まり、肩を上下させながら大きな呼吸を繰り返している。
浩志は優の呼吸が整うのを待って声をかけた。
「なぁ、どうしたんだよ。突然」
優は怯えたように瞳を揺らす。自身を抱きしめるように身体をギュッと縮めながら、口を開いた。
「だって。呪いの花が本当にあったんだもん。も、もしかしたら、私たちも呪われちゃうかも……」
そう言って小さく震える優に、浩志は不思議そうな顔をする。
「なぁ? 呪いの花ってなんだよ? 前はそんなこと言ってなかっただろ? 毎朝、誰かの机に心当たりのない折り紙の花が置いてあるって言ってただけじゃないか」
浩志の問いに優は口をへの字に曲げて、涙を堪えるように眉を顰める。背後に聳える校舎をチラリと見やり、少しでも学校から遠ざかろうとするかのように早足で歩き出した。浩志は慌てて彼女の後を追う。
「なぁ? どう言う事だよ?」
「……初めは、私だって信じてなかったよ」
まだ蕾をつけ始めたばかりの桜並木の坂道を下り、校舎が見えなくなった頃、優はポツリポツリと話し始めた。
彼女も人づてに聞いただけなので所々曖昧な部分があり、要領を得ない箇所もあった。それでも浩志は黙って耳を傾ける。
「ん? いや~、でももう少し。もう少ししたら、あいつ戻ってくるかも知れないし……って、オイ」
優の放つ緊迫感に気がつかずのんびりと答える浩志の手首を優はガッチリと掴むと、ものすごい力で引っ張りながら昇降口へ向かって歩き出した。
「きっと、もう帰ったんだよ。約束してたわけじゃないんでしょ?」
「まぁ、そうだけど」
「じゃ、もういいでしょ! 早く……早く帰ろ!」
「ちょっと待てって」
浩志は優の手を振りほどこうと腕に力を入れた。すると、腕先に優が震えていることを感じて思わず慌てる。
「オイ、どうした? なんで震えて?」
「いいから、早く帰ろ……」
「お、おう」
下駄箱に着いても優は浩志の腕を離さない。浩志は急かされながら靴を履き替えると、優に引きずられるようにして校舎を後にした。
正門を潜る時、浩志は後ろ髪を引かれるかのようにチラリと校舎へ視線を向ける。校舎の壁面に掲げられた校内スローガンの大きな幕が、風を受けてはたはたと心地良さそうにはためいていた。
(だいぶ暖かくなったなぁ。今日は、せつなと花壇の確認もするつもりだったのになぁ)
そんな事を考えていると、浩志を力任せに引っ張って歩いていた優の手が不意に離れた。優は立ち止まり、肩を上下させながら大きな呼吸を繰り返している。
浩志は優の呼吸が整うのを待って声をかけた。
「なぁ、どうしたんだよ。突然」
優は怯えたように瞳を揺らす。自身を抱きしめるように身体をギュッと縮めながら、口を開いた。
「だって。呪いの花が本当にあったんだもん。も、もしかしたら、私たちも呪われちゃうかも……」
そう言って小さく震える優に、浩志は不思議そうな顔をする。
「なぁ? 呪いの花ってなんだよ? 前はそんなこと言ってなかっただろ? 毎朝、誰かの机に心当たりのない折り紙の花が置いてあるって言ってただけじゃないか」
浩志の問いに優は口をへの字に曲げて、涙を堪えるように眉を顰める。背後に聳える校舎をチラリと見やり、少しでも学校から遠ざかろうとするかのように早足で歩き出した。浩志は慌てて彼女の後を追う。
「なぁ? どう言う事だよ?」
「……初めは、私だって信じてなかったよ」
まだ蕾をつけ始めたばかりの桜並木の坂道を下り、校舎が見えなくなった頃、優はポツリポツリと話し始めた。
彼女も人づてに聞いただけなので所々曖昧な部分があり、要領を得ない箇所もあった。それでも浩志は黙って耳を傾ける。
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