スターチスを届けて

田古みゆう

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16.4月1日(1)

16.4月1日(1) p.3

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 そんな様子を、浩志は壁にもたれ無感動に見ていた。それとは対象的に壇上を食い入る様に見つめるせつなの姿を、大役を終えひっそりと二人に合流した優は満足そうに眺める。

 予定通り蒼井教諭を驚かせつつ始まったパーティーは、小石川からの趣旨説明が終わり、目配せで合図を受けた司会が乾杯をする事を告げる。参加者はそれぞれ持参した飲み物を手に取った。

 浩志たちも、机に用意していたペットボトルを手に取る。せつなの分は優がしっかりと用意してきていた。

 壇上の二人も、小石川のポケットマネーで用意された飲み物を手に乾杯の音頭を待っている。

 小石川はそれとなく館内を見回して頃合いを図ると、司会と目配せをし合う。そして、マイクを通して軽快な声を響かせた。

「え~、それでは僭越ではありますが、二人の友人であります僕が乾杯の音頭を取らせて頂きます」

 そこで一度言葉を切ると小石川はマイクをオフにし、思い切り息を吸い込んだ。そして、手にした飲み物を掲げ声高に叫ぶ。

「全員、飲み物は持ったかー?」

 その掛け声で一気にテンションを上げた生徒たちは、飲み物を高く上げ口々に呼応する。男子の野太い声や、女子の華やかな声が体育館を埋め尽くす。その反応をしたり顔で受け止めた小石川は、再び大きく息を吸い込んだ。

「いくぞっ! カンパーイ!!」

 小石川の声に合わせて、各テーブルでは飲み物が勢いよくぶつけられる。浩志たちも、壁際の片隅でひっそりとペットボトルを合わせ乾杯をして飲み物を口にした。

 本日の主役たちは、そんな小石川の煽り方に苦笑混じりの笑顔を見せている。

 乾杯の後は、場をなごますためにしばし昼食と歓談という事だった。浩志たちも、持ってきたサンドウィッチやおにぎりを頬張りながら、館内をグルリと見渡す。

 誰も彼もにこやかで楽しげな様子だ。生徒に混じり、急遽参加した教師たちも数人いた。大人たちは、壇上で軽快に言葉を交わしている。今井正人もその輪にいる。しきりに罰が悪そうに苦笑いしているあたり、もしかしたら、声をかけた教師は彼の恩師なのかもしれない。

 そんな様子に三人は満足げな笑みを漏らす。優は昼食を頬張りながら、せつなに声をかけた。

「どう、せつなさん?」

 優の問いに、せつなは目をキラキラとさせながら何度も深く頷く。

「いい! すっごくいい! こんなステキなパーティーになるなんて」
「喜んでくれて良かった! じゃ、一度きりのパーティーを思いっきり楽しんじゃおう」
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