スターチスを届けて

田古みゆう

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16.4月1日(1)

16.4月1日(1) p.8

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 主役の二人は、それまでの生徒たちにしてきたように何処か居心地悪そうに、それでいて嬉しそうに笑みを湛えながら「ありがとう」と言葉を返してきた。

 そんな二人に、横から小石川が声をかける。

「今日の会の発案者は、この子達なんだ」
「あら、そうなの? ありがとう。河合さん。成瀬くんも」

 蒼井は小石川の言葉を受けて、それまでの笑みをさらに深めて頭を下げた。

「いえ。実は、蒼井先生たちをお祝いしたいと最初に思ったのは、私たちの大切な友達なんです」
「そうなの? その子は?」

 優が訂正したことで、蒼井と正人は不思議そうに浩志たちを見た。小石川は状況を察したのか、彼らを優しく見守っている。

 せつなは、まさかという驚きに目を大きく見開き、キョロキョロと両隣に視線を送った。そんなせつなの視線を感じつつ、浩志は一歩前に出ると、手にしていた紙袋を正人の前に突き出した。

「コレ、どうぞ」
「えっ? ああ、ありがとう」

 突然の浩志の行動に驚きつつ、正人は紙袋を受け取ると、遠慮気味に浩志と視線を合わせた。

「中を見てもいいかな?」
「はい」

 浩志の短い承諾を得て、正人が中に掛けられていた布を捲ると、途端に紫と白の小さな花たちが顔を覗かせた。

「永香、見てごらん。スターチスとかすみ草の花束だよ」

 さすがは元園芸部。花を見ただけでその名をサラリと口にした。小さな花束を紙袋から取り出し、新婦の前に差し出す。

「うわぁ! 本当だ。可愛い!」

 小さな花束を目にした新婦は、少女のようにはしゃいだ声を上げる。彼女の手は、生徒たちから手渡された会場を彩っていたたくさんの造花で既に塞がっている。そのため、花束を新郎に持たせたまま、彼女は顔を近づけクンクンと匂いを嗅ぐ仕草を見せた。

 そんな姉の様子を正面に立つせつなはポカンと見ている。

 せつなの視線が届かない姉は、一頻り花束の匂いを楽しむと、嬉しそうに、しかし不思議そうに小首を傾げた。

「二人とも、本当にありがとう。このスターチスという花は、私にとってとても思い出深い花なの。だから、とても嬉しいわ。でもどうしてこの花なの?」

 蒼井の問いに、浩志は自身の隣に立つせつなに視線を送った。

「この花は、先生に送りたいと思っていた花です」
「えっ? ……せつ、な……?」
「先生がみんなから受け取った造花も、始めは一人で作っていたものなんです」

 優が、蒼井の手に握られている造花を指し示し、隣に立つせつなへと視線を送る。
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