スターチスを届けて

田古みゆう

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17.4月1日(2)

17.4月1日(2) p.7

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 せつなの思いを組んだ蒼井は頷くと、おもちゃの指輪を左手の小指にめてみせる。

「どう?」

 指輪の填まった手を少し高く掲げる。おもちゃの指輪の隣で、本物の指輪の石がキラリと光を反射した。本物と偽物。大人と子ども。そんなアンバランスな手のひらを、大人のまねごとをして初めておしゃれをした子供のように、蒼井は嬉しそうに眺める。小石川は、そんな姉を茶化して場を和ませる。

「お前には似合わないぞ」
「もう。俊ちゃん、うるさい。ねぇ、正人見て。せつなの指輪、いいでしょ?」
「そうだね。大切にしなきゃね」

 嬉しそうに笑顔を見せる新妻に、夫の正人は優しく微笑む。そんな三人を包む空気は、まるで学生時代のように砕けたものだ。その様子をニコニコと見つめながらせつなは、小石川に言葉を向けた。

「相変わらず、俊ちゃんは意地悪だね。よっぽど、お姉ちゃんのことが好きなのね」

 せつなの言葉に、小石川が慌てたように否定する。

「そんなことはないぞ」

 その否定の言葉も含めてすべて分かっているという風に笑いながら、せつなは頷く。

「これからも、お姉ちゃんと仲良くしてね」

 浩志を介して届けられたせつなの思いに、小石川はそれ以上反論することもなく、素直にしかし力強く頷いた。

「心配するな。永香がウザがるくらい、いつだってかまってやるよ!」

 それを隣で聞いていた蒼井は、呆れたように幼馴染を見る。そんな二人をせつなは満足そうに見つめた。次に、正人へと視線を向ける。

「正人くん。お姉ちゃんと俊ちゃんをよろしくお願いします。二人とも面倒くさいところがあるけど、嫌がらずに付き合ってやってください」

 せつながペコリと頭を下げる。その様子を浩志から伝え聞いた大人たちは、互いに顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。せつなから頼まれた正人は、笑いながらコクリと頷く。

「そうだね。確かに二人とも面倒くさい。でも、心配しないで。僕はずっと二人の側にいるからね。約束する」

 せつなは、正人に向かってもう一度頭を下げる。そして、最後に姉に向き直った。

「お姉ちゃん。改めて、結婚おめでとう。本当は、ここに咲くスターチスを一緒に見たかった。結婚のお祝いにここの花をあげたかった。だから、間に合わなくてちょっと悔しい。でも、二人から渡された花束を見て、お姉ちゃんが思い出の花だって言ってくれて、嬉しかった。お姉ちゃんも、せつなと同じようにあの日のことを大切に思ってくれているんだって思った」
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