101 / 113
エピローグ
エピローグ p.2
しおりを挟む
若者受けのする原色が目立つ明るい印象の店だった場所は、新たにカフェとなり、しっとりと落ち着いた趣の外観に変わっていた。日射しをたっぷりと味わうことができるテラス席もあり、晴れの日は迷わずそちらの席を選ぶ。ゆったりとした休日の時間を過ごすことができるその場所は、優のお気に入りの場所となっていた。
店に着いた浩志は優の姿を探すがまだ来ていないようだったので、彼女のためにテラス席を選び、その一角に腰を落ち着ける。程なくして、店員が注文を取りに来た。
「ご注文はお決まりですか?」
「あ~、チャイ……。いや、とりあえずホットコーヒーを1つ、お願いします」
「畏まりました」
注文を取り終えた店員が席を離れると、外にいる開放感から、浩志は椅子に座ったまま小さく伸びをした。タイミングよく、花散らしの風が小さなつむじ風を伴って通り過ぎる。つむじ風は、まるで悪戯をする様に、浩志の鼻上に桜の花びらをそっと乗せていった。
「桜か……」
浩志はそれをそっと手に取ると、しばらく眺めてから、ふっと息を吹きかけた。彼の息に煽られた花びらは彼の掌からフワリと飛び立ち、微風に攫われていく。
花びらの行方をなんとなく目で追っていると、視界にピンクのワンピース姿の優が映った。こちらの視線に気がついた優が、手を振りながらパタパタと駆けてくる。
「お待たせ~。待った?」
「いや、今来たところ」
「そう。良かった。ちょっと待ってて」
そう言い置き、優はカフェの入口へと姿を消した。程なくして、店員に案内されながらやってきた優を再び目にしたとき、浩志は彼女に違和感を感じた。しかし、とりあえずは二人分のランチを注文する。そして一息ついたところで、浩志は何気なく彼女に問いかけた。
「なぁ、なんか今日、小さくないか?」
浩志の問いに、優は嬉しそうに微笑む。
「あれ? 気がついた? 意外にちゃんと見てるのね。そう、今日はスニーカーなの」
優は机の下から片足を覗かせる。なるほど。いつもならば、歩きにくそうな踵の高いヒールを履いているのだが、今日は随分とラクそうな靴がチラリと見えた。
「慌てて出てきて、履き間違えたのか?」
「もう、バカね。そんなわけないでしょ」
浩志の何気ないボケを、優は呆れたように突っ込む。
いつものようにくだらない会話をしていると、料理が運ばれてきた。しばらくの間互いに口を噤み、配膳を待つ。店員が注文品の確認をして席を離れると、優は早速口を開いた。
店に着いた浩志は優の姿を探すがまだ来ていないようだったので、彼女のためにテラス席を選び、その一角に腰を落ち着ける。程なくして、店員が注文を取りに来た。
「ご注文はお決まりですか?」
「あ~、チャイ……。いや、とりあえずホットコーヒーを1つ、お願いします」
「畏まりました」
注文を取り終えた店員が席を離れると、外にいる開放感から、浩志は椅子に座ったまま小さく伸びをした。タイミングよく、花散らしの風が小さなつむじ風を伴って通り過ぎる。つむじ風は、まるで悪戯をする様に、浩志の鼻上に桜の花びらをそっと乗せていった。
「桜か……」
浩志はそれをそっと手に取ると、しばらく眺めてから、ふっと息を吹きかけた。彼の息に煽られた花びらは彼の掌からフワリと飛び立ち、微風に攫われていく。
花びらの行方をなんとなく目で追っていると、視界にピンクのワンピース姿の優が映った。こちらの視線に気がついた優が、手を振りながらパタパタと駆けてくる。
「お待たせ~。待った?」
「いや、今来たところ」
「そう。良かった。ちょっと待ってて」
そう言い置き、優はカフェの入口へと姿を消した。程なくして、店員に案内されながらやってきた優を再び目にしたとき、浩志は彼女に違和感を感じた。しかし、とりあえずは二人分のランチを注文する。そして一息ついたところで、浩志は何気なく彼女に問いかけた。
「なぁ、なんか今日、小さくないか?」
浩志の問いに、優は嬉しそうに微笑む。
「あれ? 気がついた? 意外にちゃんと見てるのね。そう、今日はスニーカーなの」
優は机の下から片足を覗かせる。なるほど。いつもならば、歩きにくそうな踵の高いヒールを履いているのだが、今日は随分とラクそうな靴がチラリと見えた。
「慌てて出てきて、履き間違えたのか?」
「もう、バカね。そんなわけないでしょ」
浩志の何気ないボケを、優は呆れたように突っ込む。
いつものようにくだらない会話をしていると、料理が運ばれてきた。しばらくの間互いに口を噤み、配膳を待つ。店員が注文品の確認をして席を離れると、優は早速口を開いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる