拾われ子だって、姫なのです!

田古みゆう

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青眼の姫様(9)

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 正道は赤子の入った籠をそっと揺すった。籠の中の赤子は小さな手足をもぞもぞと動かしているが起きる気配はない。その様子に高山は思わずため息を吐いた。

「井上様は存外呑気な方ですね。赤子を二人も連れて帰ったら、奥方様が卒倒してしまうのではありませんか?」
「寺に人が戻るまでの数日のことだ。話せばわかってくれるさ。あれも子を欲しがっていたしな。案外喜ぶかもしれん」

 正道は、妻の志乃を随分前に娶っているが、二人の間に子はない。志乃は子宝に恵まれぬことに密かに心を痛め、人づてに聞いた子宝に恵まれるという寺や神社に日参しているようだった。しかし、それでも二人の間には一向に子が出来なかった。

 この赤子たちは、もしかしたら人ではないかもしれない。しかし、一見すると人の子と何ら変わるところがない。そんな赤子を我が子同然に可愛がる志乃の姿が正道には目に浮かぶようだった。その想像は、正道をどこかくすぐったいような、それでいて温かい気持ちにさせた。

 ふと気が付くと高山がじっと自分を見ていることに気づいた。正道は気を取り直すように一つ咳払いをする。

「さて、そうと決まればさっさと帰るか」
「そうですね」

 寺を後にした二人は来た道を引き返す。家路を急ぐ間に正道は高山に口裏を合わせるよう念を押す。

「これらは河原で拾ったことにする」
「事実そうじゃないですか?」

 怪訝そうな顔の高山に正道は人差し指を立てる。

「不思議な光のことや、これらが人の子ではないかも知れぬということを口にするなと言っている」
「奥方様に本当の事を言わないので!?」
「ああ。たった数日のことだ。よく分からん真実を告げて、いたずらに怖がらせることもあるまい」
「それはそうですが……本当に宜しいのですか? 奥方様を危険な目に合わせることになったりしないでしょうか?」

 正道は高山の心配を笑い飛ばした。

「言っただろう。きっと大丈夫だ」

 正道の無鉄砲とも言える言葉に、高山は何とも釈然としない思いを抱えながらも頷いた。

 屋敷に帰り着くと、正道の妻、志乃が心配顔で二人を出迎えた。帰りの遅い夫を心配して待っていた妻に詫びると共に、正道は早速、二人の赤子を志乃に見せる。その間も籠の中の赤子たちはすやすやと眠り続けていた。

「まぁ、旦那様。一体この子たちは?」
「河原に居たのだ」
「まぁまぁ。今日は特段冷えると言うのに。どのくらい外にいたのです?」
「さて、どうかな? ……一刻、いや二刻か」
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