拾われ子だって、姫なのです。

田古みゆう

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魅惑の姫様(7)

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 千代がぷりぷりと頬を膨らませると、正道は再び愉快そうに笑った。

「すまん、すまん。それで? その無礼な男を罰してくれと、そういう事か?」

 正道の言葉に千代は首を振る。

「いいえ。そんな事をしても、逆恨みを買うだけですわ」
「では?」

 正道が問いかけると、千代はその場にいる全員の顔を順に見回した。

「わたくしは、三日後、あの男がこの屋敷へやって来た時に、ぐうの音も出ないくらい完璧に言い負かしてやります」

 千代の言葉に大人たちは三者三様の声をあげる。

「何か策があると言うことだな」
「また……その様に見苦しいことを」
「流石、姫様。肝が座ってるなぁ」

 そんな大人たちに、千代は自信ありげな表情でうなずいて見せると、静かに言った。

「お父様は明日、お奉行様にお会いして下さい。最近、渡来品の杯を買ったか、あるいは売りに来た商人がいたか、聞いてみてくださいませんか?」
「うむ。それは良いが何故そんなことをするのだ? 今回割れてしまった杯は、お奉行様が取り寄せた品なのだろう?」

 正道の質問に、千代は頷いて答える。

「あの男はそう申しておりましたが、少々解せぬのです。そもそも貴重なお品を化粧箱にも入れず、風呂敷包みだけで運ぶでしょうか?」
「なるほど。其方は、その者が嘘をついておるとそう言うのだな」

 千代は正道の言葉に大きくうなずいた。

「ええ。そもそも嘘であれば、虚偽を働いた者の言うことなど聞く必要がありませんから。ですから、まずはお奉行様にお話を伺っていただきたいのです」

「あい分かった! 父に任せておけ」

 正道は力強く頷いて見せた。

 千代と正道のやりとりを黙って聞いていた高山が、わくわくした様子で千代に問う。

「姫様。俺も何かお手伝いをさせていただいても?」

 千代は嬉しそうに顔を綻ばせた。

「ええ、もちろんですわ。高山のおじ様には、渡来品を扱う商人を探していただきたいのです」

 高山は少し意外そうな顔をする。

「それは構いませんが、どんなお品物を探してくればいいので?」
「品は探さなくても良いのです。そもそもわたくしも、陶器の杯としか知らないので、同じ物など探しようがないですから」

 高山は首を傾げる。千代の言っていることがよく理解出来ないといった顔だ。そこへ太郎が助け舟を出す。

「父上。姫様は奴がどのように渡来品を手にしたのかを知りたいのです。渡来品となるとこの辺りで簡単に手に入るようなものではない。つまり、奴にそれを売った者がいるはず。その者を探すのです」
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