新人魔女は、のんびり森で暮らしたい!

田古みゆう

文字の大きさ
449 / 461

新人魔女に重く圧し掛かるもの(1)

しおりを挟む
「あっ! ジュヴェントゥス様だ!」
「ジュヴェントゥス様、こんにちは~」
「まぁまぁ。ジュヴェントゥス様、お遣いですか?」

 街を歩いていると次々と声を掛けられる。そんな声を無視するわけにもいかず、リッカはその度に顔を引き攣らせながらもなんとか反応を返す。

 王都の街を行き交う人々の反応は、予想していたよりも好意的だった。思いの外あっさりと人々に受け入れられている事にリッカは安堵しつつも、しかし、それでもやはり自身が「次代を担う賢者ジュヴェントゥス」と呼ばれることに、まだ違和感を拭えないでいる。

 リッカが「次代を担う賢者ジュヴェントゥス」などと言う大層な肩書きで呼ばれるようになったのは、もちろんあの夜会で行われたリゼの大演説のせいである。リゼの演説は、会場にいた貴族たちの度肝を抜くと同時に、多くの者を魅了し、誰もが異論を唱えられない状況を作り出してしまった。そして、国王の鶴の一声でリゼの言葉は正式に決定事項となり、あれよあれよという間にリッカは「次代を担う賢者ジュヴェントゥス」なる肩書を背負わされることになったのである。

 大衆の面前で王族に意を唱えることなど、新人魔女に出来るはずもない。リッカになす術はなく、黙ってその立場を受け入れることしかできなかったのだが、やはりどうしても解せない部分がある。

 リッカはただの新人魔女だ。魔法の研究も実習も興味があるし好きなので積極的に取り組んでいるが、それはあくまでもリッカの個人的な思惑に過ぎない。リゼが大演説の中で主張していたような高尚な理念などリッカは微塵も持ち合わせていない。確かに、立派な魔女にそしてなれるものならば師であるリゼのような賢者になりたいとリッカは思っている。だが、だからと言って「次代を担う賢者」を名乗れるほどの何かを成しているかと言えば、決してそんなことはない。自身はまだまだ未熟であり、学ぶべきことは沢山ある。そんな自分が「次代を担う賢者ジュヴェントゥス」と持ち上げられても、素直に喜ぶことなどできるはずもなかった。

 しかし、そんなリッカの思いなどまるでお構いなしに、あっという間にリッカは「次代を担う賢者」に仕立て上げられてしまったのだった。今にして思えば、リゼは夜会が開かれている間にそのような話題を持ち出すつもりでいたのだろう。夜会の場は様々な思惑が入り乱れ、人の感情を高ぶらせるのにうってつけの場であるのだから。あの隣国の使者はきっとリゼの思惑によって、まんまと当て馬として利用されたのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

巻き込まれ召喚された賢者は追放メンツでパーティー組んで旅をする。

彩世幻夜
ファンタジー
2019年ファンタジー小説大賞 190位! 読者の皆様、ありがとうございました! 婚約破棄され家から追放された悪役令嬢が実は優秀な槍斧使いだったり。 実力不足と勇者パーティーを追放された魔物使いだったり。 鑑定で無職判定され村を追放された村人の少年が優秀な剣士だったり。 巻き込まれ召喚され捨てられたヒカルはそんな追放メンツとひょんな事からパーティー組み、チート街道まっしぐら。まずはお約束通りざまあを目指しましょう! ※4/30(火) 本編完結。 ※6/7(金) 外伝完結。 ※9/1(日)番外編 完結 小説大賞参加中

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...