僕のごちそう

田古みゆう

文字の大きさ
4 / 6
ボクのごちそう

ボクのごちそう p.1

しおりを挟む
 ボクはあの日、空腹を少しでも満たしたくて公園のベンチに座り、空を見上げていた。

 空を覆う雲から綿菓子のような雪がちらちらと舞い落ちてくるから、それをなんとか口の中へ誘い込む。この時期は、風が頬を刺すように冷たくて、虫や動物や、それこそ、人なんてなかなか外にいない。だからボクは、仕方なく雪で空腹を紛らわせていたんだ。

 そんなボクをおにいさんは遠巻きに眺めていたね。ボクはおにいさんの視線に気がついていたけれど、敢えて気がつかないふりをした。

 ずっと見つめられるから、思わず視線を合わせてしまいたくなったけど、何とか我慢。だって、久しぶりの人だもの。もっと、もっと、惹きつけなくちゃね。

 ボクは気のない素振りで、美味しくもない雪を無心で食べる。おにいさんの関心を誘うように、ボク自慢のイチゴ色の唇におにいさんが興味を持ってくれるように。意識して、パクパクと口を閉じたり開いたりする。

 あの日以来、ボクはいつも同じ時間に、同じ公園のベンチに座り、いろいろなものを食べた。草、虫、魚……

 おにいさんが、毎日のようにボクを見ているのを知っていたから、おにいさんが近づいてくるよう、ボクは、必死に自慢のイチゴ色の唇を動かしてアピールを続けたんだ。

 その甲斐あって、おにいさんは、ボクに近づいてきてくれたね。最初は、キャンディやチョコレートなんて小さなもので、ボクの気を惹いて。

 甘いものをいくつもポケットに忍ばせたおにいさんは、美味しそうな匂いを纏っていた。少し離れたところからでも、甘い匂いがボクを刺激する。だから、消化液が溢れそうになるけれど、不審がられて、せっかくのチャンスを不意にすることはできない。ゴクリと消化液を飲み込んで、いつもどうにか我慢していたんだ。

 ボクの我慢をよそに、おにいさんの手土産は、次第に質と量を増やしていき、それに比例するかのように、ボクたちは距離を縮めていった。

 いつしか、おにいさんはいつでもボクのすぐ隣にいるようになった。

 おにいさんの持ってくる食べ物はもちろん美味しいけれど、ボクには、どうしても食べたいものがあった。けれど、まだ、もう少し我慢。手を伸ばしてもすり抜けられない距離まで惹きつけなくては。それまでは、他の物を食べて気を紛らわす。

 おにいさんは、ボクが醸し出すフェロモンがとても好きなんだよね。だからボクは、おにいさんが近づいてくると、殊更匂い立つよう、体をおにいさんに近づける。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

七竈 ~ふたたび、春~

菱沼あゆ
ホラー
 変遷していく呪いに終わりのときは来るのだろうか――?  突然、英嗣の母親に、蔵を整理するから来いと呼び出されたり、相変わらず騒がしい毎日を送っていた七月だが。  ある日、若き市長の要請で、呪いの七竃が切り倒されることになる。  七竃が消えれば、呪いは消えるのか?  何故、急に七竃が切られることになったのか。  市長の意図を探ろうとする七月たちだが――。  学園ホラー&ミステリー

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/7:『かわぞいのみち』の章を追加。2026/1/14の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/6:『まどのそと』の章を追加。2026/1/13の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/5:『おちゃ』の章を追加。2026/1/12の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/4:『かみ』の章を追加。2026/1/11の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/3:『おかのうえからみるけしき』の章を追加。2026/1/10の朝8時頃より公開開始予定。 2026/1/2:『そうしき』の章を追加。2026/1/9の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/1:『いえい』の章を追加。2026/1/8の朝4時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...