推しと清く正しい逢瀬（デート）生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

隣人だもの。……気になるでしょ。（１２）

　そこには私の知っているほのぼのとした成瀬さんとは全く違う、きりりとした表情の成瀬さんがいた。

　蓮や樹のようにライトを直接浴びているわけではない。けれど、彼が眩しい。彼のダンスには華がある。二人が踊らない分、俺が会場を盛り上げてやると言わんばかりの圧巻のパフォーマンスに、私は画面から目が離せなかった。彼の一挙手一投足を逃すまいと、瞬きも忘れて見つめる。

　一人で踊っているのに、なんて迫力。

　気づけば、私はポカンと口を開けていた。

　多くのスコッコたちを前にして、彼は全く物怖じしていないようだ。それどころか、俺のステージだとでもいうような堂々とした姿に、目が釘付けになる。

　成瀬さん、ダンス上手なんだなぁ……。

　蓮や樹もいつも素敵なダンスをするけれど、それと引けを取らないほどキレのある動き。スラリとした長身を自在に操り、ステージ上で踊る姿はまるで重力を感じさせない軽やかさだ。

　すごい……。かっこいい……。

　私は食い入るように彼の姿を追う。曲も後半に入り、二人の歌声に熱が籠る。それに合わせて成瀬さんのダンスにも力強さが増していく。

　やがて曲が終わり、歓声が沸き起こる。私も我を忘れて手を叩いていた。

　スコッコたちの歓声の中、蓮と成瀬さんが気やすげにハイタッチを交わす。樹とは軽くハグをする。一瞬見せたその行動は、互いに気心の知れた間柄であることを感じさせた。蓮と樹が、成瀬さんと肩を組んでカメラに向かってピースサインをする。それから彼はステージから捌けていった。

　成瀬さんと入れ替わるようにして、Scorpioスコルピオのメンバーである涼と優磨がステージに姿を現し、全員揃って二度目のMCタイムが始まった。私はまだ夢見心地のまま画面を見つめていた。

　成瀬さん……すごく格好よかったな……。ダンサーだったんだ……。

　私は、夢心地でステージ上の成瀬さんを思い浮かべる。

　私は成瀬さんのことを、いつも笑顔を絶やさないほわほわとした癒し系の人だと思っていた。だけど先ほど見た成瀬さんは、スコッコたちの視線を一身に集めても物怖じしていなくて、堂々としている姿が頼もしかった。

　私は胸の中に熱いものが込み上げてくるのを感じた。これまで見てきた顔とは違う顔を画面越しに目の当たりにして、私の胸がトクンと脈打つ。同時に、甘く疼くような鈍い痛みも感じる。

　私……もっと成瀬さんのことを知りたい……かも？

　トクントクン。トクントクン。

　私の心音が次第に大きくなる。