推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

田古みゆう

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隣人だもの。……気になるでしょ。(13)

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 画面の中で、Scorpioスコルピオのメンバーが今回のライブを振り返っている。どこどこの会場でこんな失敗をした、あの会場のケータリング料理が美味しかったなど、和気あいあいとした雰囲気で話が進む。

 だけど私は、そんなメンバーの話にあまり集中できていない。成瀬さんのあのダンスが頭から離れない。彼の姿が脳内で繰り返し再生される。

 もっと……近くで見たいな。画面越しではなく、直接見てみたい。

 そんな気持ちが、私の中で急速に膨れ上がる。

 私の思考が成瀬さんに占拠されている間も、MCは進んでいく。地方で食べた物の話題から、メンバーのデビュー秘話へ。

 涼と優磨がデビューの話を聞いたのは名古屋での仕事を終えて手羽先を食べていた時だったそうだ。その手羽先が今回のライブのケータリングとして用意されていて感慨深くなった涼は、思わず手羽先を食べながら泣いたというエピソードを披露する。

 すると優磨が「だけど、手羽先のタレと鼻水で顔ぐちゃぐちゃにして泣くから、周りが引いちゃったんだよね」と笑いを取る。優磨のその言葉に涼が、「引くとかいうなよ~」と泣き真似をした。そんな二人の様子に会場中から笑いが起きる。

 この二人は、いつもこうやって仲の良いところを見せてくれる。私の推しは蓮だけれど、この二人もScorpioになくてはならないメンバーだ。ステージ上で繰り広げられる二人の寸劇はいつものこと。成瀬さんのことで頭がいっぱいだった私も、二人のコントのような掛け合いについ耳を傾け、思わず笑ってしまった。

 MCが一段落すると、ライブの後半戦が始まる。怒涛のアップテンポなナンバーのメドレーで、再びスコッコたちのボルテージを上げていく。

 MCで一息ついていた私も、再び目を皿のようにして画面の中に彼の姿を探す。これまでのことから、彼は蓮か樹の近くにいるのではと予想をつけて探すが、その姿はなかなか見つからない。

 全ての曲に出るとは限らないのかな……。

 私は必死に目を凝らし、彼の姿を探す。けれど、私の視界にその姿はなかなか映り込んでこない。次第に焦りが募り始める。

 まさか、さっきのダンスで成瀬さんの出番は終わりなの?

 彼を探しているうちに、あっという間にライブはラストナンバーを迎えてしまった。最後の曲にも成瀬さんの姿はなく、私は落胆する。

 Scorpioのメンバーではないのだから、当然といえば当然のことなのだが、結局アンコールにも成瀬さんの姿はなかった。
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