推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

田古みゆう

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隣人特権、強すぎるんですけど。(22)

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 成瀬さんの横顔を見つめながら、私の胸は甘く締め付けられる。推しにガチ恋したって、報われないのに。でも、好きになってしまったのだからしょうがない。私は成瀬さんに気づかれないように、そっとため息をついた。

 私たちは他愛のない話をしながら、お酒を酌み交わす。成瀬さんは私の話に相槌を打ちながら、時折自分の話もしてくれる。それがとても楽しい。まるで昔から友達だったかのように、私たちの会話は自然と弾んだ。

 楽しい時間はあっという間に過ぎていく。気がつけば夜も深くなっていた。そろそろお開きかな、と思った時。成瀬さんが少し言いにくそうに口を開いた。

「楽しい時間に水を差すようで悪いんだけど……」

 私は首を傾げる。

「何ですか?」

 成瀬さんは少し間を置く。その真剣な表情に、私の心臓はドキリと大きく跳ねた。

 えっ!? 何? もしかして愛の告白とか!?

 そんな核心なんてどこにもないのに、期待が湧き上がり胸が高鳴る。私はドキドキしながら成瀬さんの言葉を待った。

 しかし、成瀬さんの口から出た言葉は、私の期待を見事に裏切った。

「実はさ、うちの酒も底をついちゃったんだよね」

 成瀬さんはそう言って、手にした缶を振る。チャパチャパと間の抜けた音が私の耳に届く。

 なんだそんなことか。私は思わず小さくため息を吐いた。

 なんだぁ。愛の告白じゃないのか……。ってか、そもそも私なんかに告白とかありえないか。

 私は慌てて笑顔を作ると、努めて明るい声を出した。

「そろそろいい時間ですし、今日はもうお開きにしましょう」

 成瀬さんは少し寂しそうに笑いながらも、「そうだね」と同意した。

 あぁ、そんな顔しないで。もっと一緒にいたいと思っちゃうから……。

 私は心の中で呟く。自覚したばかりの想いが溢れてしまわないように、私は手すりに体を預けて夜空を見上げた。そよそよと吹く風が、火照った頰に気持ちいい。

 このまま時間が止まってしまえばいいのに……。

 そんな事を思う私の耳に、ガサゴソと成瀬さんが片付けをする音が聞こえてきた。恋する乙女モードに浸りそうになっていた私は、現実へと引き戻される。慌てて、成瀬さんに声をかけた。

「っていうか、ごめんなさい。お酒のストックがなくなったのって、私のせい……」

 成瀬さんが軽く笑う。

「気にしないで。誘ったのは俺だから」
「でも……」

 図々しくお相伴に預かったくせに、私は口籠る。成瀬さんはそんな私の罪悪感を振り払うように、少しおどけた口調で言う。
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