推しと清く正しい逢瀬(デート)生活 ーこっそり、隣人推しちゃいますー

田古みゆう

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好きだからこそ……(14)

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 言いづらそうに問い返してくる成瀬さんに、私はコクンと頷く。

「もちろん! いつ? どこが? どれくらい? 女の子は、そういうことが言ってほしいんだよ」

 私の勢いに気圧されたのか、成瀬さんの瞳が泳いだ。

「……そういうものなの?」
「そういうものなの!」

 なんて力一杯頷いてみたけど、本当は他の子たちがどうかなんて知らない。ただ私は知りたいと思った。いつから、成瀬さんが私を見てくれていたのかを。

 成瀬さんは困ったような顔をしていたけれど、意を決したように口を開いた。

「多分、出会った時から」
「え?」

 思わず問い返すと、成瀬さんは少し恥ずかしそうに視線を逸らした。必要最小限しか語らない彼の耳は真っ赤だ。それだけで十分に伝わった。

 私を喜ばせるための方便なんかじゃない。きっと本当のことなんだ。

 思わず口元が緩む。ニマニマとしながら成瀬さんを見つめていると、成瀬さんは髪をかきあげるふりをして、居心地悪そうに顔を隠してしまった。それでも私は追求の手を緩めない。

「出会ったときって、あの日ですよね? 鞄を直してくれた、あの当落発表の日。もしかして、一目惚れしたから声をかけてくれたんですか?」

 まるで他人の恋路を詮索するみたいに、ウキウキと成瀬さんに問いかける。そんな私の声に、彼は前髪をかきあげたまま困ったような笑みを向けてきた。それがやけに色っぽい。

 思わず、クラっとしてしまう。成瀬さんの色気にあてられた私は、慌てて彼から視線を逸らした。頰が熱い。

「や、やっぱり答えなくていいです。今のはなしで!」

 自ら追求したくせに、敢えなく撃沈した私を成瀬さんはクスクスと笑う。

「そうだね。きっと一目惚れだったんだと思う。きみの魅力に惹かれた。だから、思い切って声をかけた」

 あっさり肯定されてしまい、私は顔から火が出るんじゃないかと思うほど熱くなるのを感じた。まさかの不意打ち全肯定。

 そんなセリフを素で言ってくるなんて、反則すぎるでしょ!

 恥ずかしくて、成瀬さんの顔を見ることができない。形勢逆転。私は俯き、そんな私を成瀬さんは余裕の笑みで見つめてくる。

「あとは、なんだっけ? 女の子には何を伝えなきゃいけないんだっけ?」
「……もう十分。もういいですから」
「そお? でも俺、きみに意識してもらうところから始めなきゃいけないからさ。恥ずかしいけど、必要なら言うよ?」

 いつもより少しだけ意地悪に聞こえる成瀬さんの声。

「成瀬さんって、案外意地悪なんですね」
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