5 / 8
p.5
しおりを挟む
恥ずかしさから、小さな抵抗をするのが精一杯。
そんな私を、今も楽しそうにニコニコと見つめてくる彼の視線に、私は勝てない。結局、直球の言葉と視線にノックアウトされてしまうのだ。
「ほら、クリームたっぷりのパンケーキ、食べな」
彼は、運ばれてきたパンケーキを一口大に切り分け、それを私の口もとへと運ぶ。
思わず、パクリと食いつくと、フワフワのケーキと、甘酸っぱいベリー、それから、甘過ぎないクリームが、程良いバランスで口の中で混ざり合う。
「んん~!!」
目を細め、パンケーキを堪能する私を、彼は、ニコニコと見つめ堪能する。それから、自分も一口パンケーキを口にした。
「ん! 美味い」
そう言いながら、パンケーキのお皿をさりげなく私の方へと押しやる。「残りは、全部、君が食べな」という、彼の無言の優しさ。
一緒に美味しいものを楽しんで、だけど、少しだけ私を特別扱いしてくれる。私の好きな物をさり気なく選んでくれる。半分と言いながら、大きい方を私にくれる。そんな彼の愛情表現が、私はとても心地良い。
彼がくれる優しさの分だけ、私も返してあげたいと思うけれど、出来るかどうか分からないので、大きい方を貰ったら、必ず彼に一口お返しをする事を密かに決めている。
まずは、自分でもう一口。その後、彼の分を切り分けて、彼の口もとへと運ぶ。それを彼がパクリ。二人でモグモグと口を動かしつ、笑みを交わす。
直球すぎる言葉にドギマギさせられたことや、赤くした顔を見られたことなんて、直ぐに気にならなくなる。それくらい、美味しいものを、好きな人と味わう時間は楽しい。
店内の美味しくて、楽しく明るい雰囲気とは裏腹に、外はいつの間にか暗く、私たちが座る席の窓には、沢山の雨粒が打ち付けられている。
「ねぇ? どうして雨が降るって分かったの?」
カフェに向かって歩いている時に聞いた質問をもう一度彼にしてみた。
彼は、口にしていたカップをコトリと机に置くと、歩いていた時と同じ答えを返してきた。
「雨の匂いがしたんだ」
「それ、さっきも言っていたけど、どんな感じなの?」
「ぺトリコールって、聞いたことある?」
彼の言葉に、私は、黙って首を横に振る。
「じゃあ、夏の暑い日のプールサイドの匂いって分かる?」
「ん~、なんかムワッとした感じのやつ?」
彼の質問で、私の鼻腔を夏の独特の匂いが掠めた気がした。
そんな私を、今も楽しそうにニコニコと見つめてくる彼の視線に、私は勝てない。結局、直球の言葉と視線にノックアウトされてしまうのだ。
「ほら、クリームたっぷりのパンケーキ、食べな」
彼は、運ばれてきたパンケーキを一口大に切り分け、それを私の口もとへと運ぶ。
思わず、パクリと食いつくと、フワフワのケーキと、甘酸っぱいベリー、それから、甘過ぎないクリームが、程良いバランスで口の中で混ざり合う。
「んん~!!」
目を細め、パンケーキを堪能する私を、彼は、ニコニコと見つめ堪能する。それから、自分も一口パンケーキを口にした。
「ん! 美味い」
そう言いながら、パンケーキのお皿をさりげなく私の方へと押しやる。「残りは、全部、君が食べな」という、彼の無言の優しさ。
一緒に美味しいものを楽しんで、だけど、少しだけ私を特別扱いしてくれる。私の好きな物をさり気なく選んでくれる。半分と言いながら、大きい方を私にくれる。そんな彼の愛情表現が、私はとても心地良い。
彼がくれる優しさの分だけ、私も返してあげたいと思うけれど、出来るかどうか分からないので、大きい方を貰ったら、必ず彼に一口お返しをする事を密かに決めている。
まずは、自分でもう一口。その後、彼の分を切り分けて、彼の口もとへと運ぶ。それを彼がパクリ。二人でモグモグと口を動かしつ、笑みを交わす。
直球すぎる言葉にドギマギさせられたことや、赤くした顔を見られたことなんて、直ぐに気にならなくなる。それくらい、美味しいものを、好きな人と味わう時間は楽しい。
店内の美味しくて、楽しく明るい雰囲気とは裏腹に、外はいつの間にか暗く、私たちが座る席の窓には、沢山の雨粒が打ち付けられている。
「ねぇ? どうして雨が降るって分かったの?」
カフェに向かって歩いている時に聞いた質問をもう一度彼にしてみた。
彼は、口にしていたカップをコトリと机に置くと、歩いていた時と同じ答えを返してきた。
「雨の匂いがしたんだ」
「それ、さっきも言っていたけど、どんな感じなの?」
「ぺトリコールって、聞いたことある?」
彼の言葉に、私は、黙って首を横に振る。
「じゃあ、夏の暑い日のプールサイドの匂いって分かる?」
「ん~、なんかムワッとした感じのやつ?」
彼の質問で、私の鼻腔を夏の独特の匂いが掠めた気がした。
0
あなたにおすすめの小説
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。
真由子の母、雪江は大学教授であり、著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。
婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。
白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる