クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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行ってみっか(8)

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「言えたのか?」

 私は、小さく首を振る。私の反応を見たシロ先輩は「ねぇ、ちょっと待って」と、すぐに理沙を呼び止めた。理沙たちは足を止めて振り返る。

「こいつ、あんたに言いたいことがあるみたいだから聞いてやってよ」

 シロ先輩の突然の言葉に、私は慌てる。理沙は、戸惑いながらもうなずいた。シロ先輩にトンっと背中を押されて、前に出される。理沙は、訝しそうに私を見つめた。私は大きく深呼吸をする。

「あ、あの、結婚おめでとう。招待状貰ったのに、式行けなくてごめんね。お幸せに」

 一気にそう捲し立て、理沙を見ると、ぽかんとしていた。理沙の隣にいた男性も同じように呆気に取られている。

 そんな二人の様子を見て、ハッと我に返った私は慌てて踵を返し、逃げるようにシロ先輩たちの元へ戻った。後ろから理沙の呼び止める声が聞こえた。振り返り小さく手を振って、私はそれで話を終わらせた。

 私事で待たせてしまったことを謝ると、白谷吟が大丈夫だと優しく微笑んだ。先方の案内役の女性にも頭を下げ、仕事モードへと頭を切り替える。

 女性に先導され、私たちはホテル内を巡った。各施設の説明を受けながら、最上階にあるレストランへと向かう。

 入口を入ってすぐに大きな窓から見える景色に思わず目を奪われる。ホテルのすぐそばには海が広がっていた。目の前に広がるオーシャンビューに私は圧倒された。

 窓の外に釘付けになっている私に同行していた全員がクスリと笑う。恥ずかしくなった私は、コホンと咳払いをして、姿勢を正すと、皆のあとについて行った。

 席に着き、メニュー表を見る。コース料理らしく、残念ながら食べる時間はないとシロ先輩に釘を刺された。そんな私たちのやりとりを見て、また白谷吟がクスリと笑った。

 とりあえず、飲み物だけ注文する。仕事中なので、もちろん全員ソフトドリンクだ。飲み物が運ばれてくる間に、私たちは改めて挨拶をした。

 今回案内をしてくれたのは、管理部の三嶋さんという方だった。物腰が柔らかく、穏やかな雰囲気の人だ。

「あら、白谷さんだけは、部署が別なんですね」

 差し出した名刺を目にした三嶋さんの問いかけに、白谷吟は爽やかな笑顔でうなずく。

「ええ。僕は二課の所属でして。普段は、個人を対象としたマーケティングを担当しているんです。企画の立案については、こちらの二人がメインで担当していくことになると思います」

 白谷吟の言葉を聞いて、三嶋さんは納得したように微笑む。
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