クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

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行ってみっか(11)

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 そんな視線は気にも留めず、シロ先輩はニヤリと笑って私の耳元に口を近づけるとボソリと言う。

「これで、気に病まなくても済んだな」

 私は思わず黙り込んだ。確かに、シロ先輩の言う通りかもしれない。理沙とは関わりがなくなっていた。だから、結婚式への招待をお断りしたのだが、断ったら断ったで、何だかモヤモヤした気持ちになってしまっていたのだ。

 私の複雑な心境を察して、シロ先輩はあの時背中を押してくれたのだろう。シロ先輩の言う通り、理沙に面と向かってお祝いを言えたことで、今は少しだけ気持ちが軽くなっているような気がした。

(全く、この人は……どうしていつも……)

 駅へ向けて白谷吟と歩き出したシロ先輩の背中をチラリと見てから、私は大きく息を吐いて、空を見上げた。

 街中よりも少し広い空には、いくつか星が瞬いている。ネオンに照らされていないからだろうか。都会でも星はこんなに綺麗に見えるものなのかと思った。

 いつの間にか、無意識のうちに口角を上げていた自分に気がつく。それを隠すように、そっと手で口を覆うと、小さく呟いた。ありがとうございます、と。

 絶対に聞こえないくらいの声で言ったつもりだったのに、シロ先輩が不意にくるりと振り返った。

「おーい、クロ。置いていくぞー」

 シロ先輩のあまりのタイミングの良さに、思わずグッと喉がなった。私は恥ずかしさを誤魔化すように大きく返事をする。

「今行きます!」

 早足で二人のところへ向かい、二人の隣に並ぶ。ふと横を見ると、白谷吟がクスリと笑っていた。

 無性に恥ずかしくなり、咄嵯に前を向いて歩調を早める。そんな私をシロ先輩がいつものようにからかい始めた。うるさいシロ先輩を白谷吟が嗜めてくれる。それでもめげずに楽しそうな声をあげるシロ先輩を適当にあしらいつつ、私たちはのんびりと歩く。

 街の喧騒に掻き消され、海が近くにあるとは思えないほど、波音は微かにしか聞こえない。潮風もさほど感じられない。それでも私の心の中は、波に洗われたように穏やかだった。

 それはきっと、隣にいるこの人のおかげなのだろう。私は、賑やかな二人にバレないように静かに微笑んだ。

 それから二人の会話に割って入るように、明るい声で話しかける。

「先輩たち、このままご飯食べに行きません? 今後の作戦会議も兼ねて!」

 二人は一瞬顔を見合わせた後、満面の笑みで答える。

 月明かりが照らす夜道を三人揃って歩いて行く。心なしか三人の距離は近かった。
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