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好き、かもしれない(3)
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私の質問に、萌乃は不意打ちを喰らったような顔をして固まった。しばらくの間、自問自答をするかのように無言になる。
「白谷先輩に? それとも、周りの人たちに?」
沈黙を埋めるように、私は選択肢を投げかける。すると萌乃は、それを口の中でブツブツと繰り返し、やがて答えがでたのか、ゆっくりと口を開いた。
「やはり、白谷さんにです。課の皆さんにも迷惑ばかりかけているので、もちろん申し訳なく思っているのですが、それ以上に、白谷さんの時間を私が奪っていることが申し訳なくて。私が仕事ができないばかりに、白谷さんはいつも私のフォローをしてくださるのですが、そのせいで、ご自身の仕事も滞りがちなようですし」
萌乃は、申し訳ないと繰り返し言うが、私は、それを首を振って否定する。
「萌ちゃん。それは違うよ。申し訳なくなんかない。あなたは、新人なの。仕事ができないのも、ミスがあるのも当たり前。それを白谷先輩がフォローするのは、当然のことだよ。だって、あなたの教育係なんだから」
「それは、そうかもしれませんが」
「あなたを育て、フォローするのが、白谷先輩の仕事なの。先輩は仕事をしているだけだから、そんなに思い悩むことはないと思うけど?」
「そうかもしれないですが、やはり……」
どんなに気にしなくてもいいと慰めても、萌乃の表情は暗いまま。押してダメなら引いてみろじゃないが、慰めがダメならと、私は発破をかけてみる。
「新人のあなたが今やるべきことは、ミスやできないことにウダウダ悩むことなんかじゃなくて、ミスから仕事を学ぶことなんじゃない? それが、一番白谷先輩の助けになると思うよ」
しかし、萌乃の反応は鈍い。萌乃は、項垂れて力なく首を振る。そんな萌乃の姿に私は違和感を感じた。仕事ができない。仕事でミスをした。そういうことに落ち込むことは私もあるし、新人ならば、なおさらそういう場面に直面しやすいとは思うのだが、いかに入社したての新人といえど、この自己肯定感の低さはどうだろうか。
自分は仕事ができないと飄々と言いつつ、仕事のできる先輩と自身を比べ激しく落ち込むとは、なんだか、仕事に対するモチベーションがアンバランスな気がする。もしかして、彼女の懸念の根本は仕事ではないのだろうか。
もしそうならば、私がそこまで気に掛けることでもないような気はするが、もし懸念事項が仕事関係ならば、これから一緒に仕事をしていくうえで躓く原因になりかねない。
「白谷先輩に? それとも、周りの人たちに?」
沈黙を埋めるように、私は選択肢を投げかける。すると萌乃は、それを口の中でブツブツと繰り返し、やがて答えがでたのか、ゆっくりと口を開いた。
「やはり、白谷さんにです。課の皆さんにも迷惑ばかりかけているので、もちろん申し訳なく思っているのですが、それ以上に、白谷さんの時間を私が奪っていることが申し訳なくて。私が仕事ができないばかりに、白谷さんはいつも私のフォローをしてくださるのですが、そのせいで、ご自身の仕事も滞りがちなようですし」
萌乃は、申し訳ないと繰り返し言うが、私は、それを首を振って否定する。
「萌ちゃん。それは違うよ。申し訳なくなんかない。あなたは、新人なの。仕事ができないのも、ミスがあるのも当たり前。それを白谷先輩がフォローするのは、当然のことだよ。だって、あなたの教育係なんだから」
「それは、そうかもしれませんが」
「あなたを育て、フォローするのが、白谷先輩の仕事なの。先輩は仕事をしているだけだから、そんなに思い悩むことはないと思うけど?」
「そうかもしれないですが、やはり……」
どんなに気にしなくてもいいと慰めても、萌乃の表情は暗いまま。押してダメなら引いてみろじゃないが、慰めがダメならと、私は発破をかけてみる。
「新人のあなたが今やるべきことは、ミスやできないことにウダウダ悩むことなんかじゃなくて、ミスから仕事を学ぶことなんじゃない? それが、一番白谷先輩の助けになると思うよ」
しかし、萌乃の反応は鈍い。萌乃は、項垂れて力なく首を振る。そんな萌乃の姿に私は違和感を感じた。仕事ができない。仕事でミスをした。そういうことに落ち込むことは私もあるし、新人ならば、なおさらそういう場面に直面しやすいとは思うのだが、いかに入社したての新人といえど、この自己肯定感の低さはどうだろうか。
自分は仕事ができないと飄々と言いつつ、仕事のできる先輩と自身を比べ激しく落ち込むとは、なんだか、仕事に対するモチベーションがアンバランスな気がする。もしかして、彼女の懸念の根本は仕事ではないのだろうか。
もしそうならば、私がそこまで気に掛けることでもないような気はするが、もし懸念事項が仕事関係ならば、これから一緒に仕事をしていくうえで躓く原因になりかねない。
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