64 / 155
好き、かもしれない(4)
しおりを挟む
仕方がないので、私はもう少し萌乃の悩みに付き合うことにする。
「萌ちゃんは、白谷先輩に仕事で迷惑をかけて申し訳なく思っているのよね?」
「はい。そうです」
私の問いかけに、萌乃は小さく頷く。
「だったら、同じミスをして迷惑をかけないように、仕事を覚えることが一番いいと私は思うのだけれど、違うかな?」
諭すように萌乃に語り掛ければ、萌乃は小さく同意の意を示す。
「それはそうだと思います。それは分かってはいるのです。でも……」
「でも?」
萌乃はじれったそうに顔を少し歪め、意を決したように声を張った。
「私は、白谷さんのお力になりたいんです」
そんな萌乃に少々気圧されつつ、私も何とか声を出す。
「う、うん。だからね、先輩の力になるためには、まず、仕事を覚えてミスをしないように成長して……」
「そんないつになるか分からない成長を待ってはいられません。それに、私、ポンコツなんです。そんな私が成長するなんて、奇跡に等しいです」
「え? ポ、ポンコツ……?」
萌乃の自身を否定する物言いに、私が思わずポカンとしている間にも、ヒートアップした萌乃の口からは、次々と自分を否定する言葉が溢れ出す。
「私なんて、物覚えも悪いし、要領も良くないし、気が利かないし、すぐ目の前の事でいっぱいいっぱいになっちゃうし」
「え? え? ちょ、ちょっと待って萌ちゃん」
私は、思わず萌乃の手を取る。興奮しているのか、萌乃の手は、小刻みに震えていた。その震える手を私は両手で優しく包んだ。
「ねぇ。萌ちゃん。誰かに何か言われたの?」
「……いえ」
萌乃は、私に包まれた自身の手を凝視したまま、小さく頭を振った。
「じゃあ、どうして自分をそんなにひどく言うの?」
「……だって、本当の事なんです。昔から私、物覚え悪いし、要領も悪いし」
「ああ。うん、わかったから。もうそれ以上は」
慌てて彼女の手を軽く叩きながら、私は彼女の言葉を止める。しかし、興奮が収まらなかったのか、萌乃は、そのまま、言葉を続けた。
「そんなだから、私、白谷さんに申し訳なくて。いつもいつも彼の足を引っ張っている自分が嫌なんです。白谷さんのお力になりたいんです。白谷さんを助けたいんです。白谷さんに頼って欲しいんです。だって、私、私……」
「萌ちゃん。一旦落ち着こ。ね」
ヒートアップしている萌乃に声をかけるが、萌乃は勢いのままに言い切る。
「白谷さんが好きなんです!」
萌乃の突然の告白が、小会議室に響き渡った。
「萌ちゃんは、白谷先輩に仕事で迷惑をかけて申し訳なく思っているのよね?」
「はい。そうです」
私の問いかけに、萌乃は小さく頷く。
「だったら、同じミスをして迷惑をかけないように、仕事を覚えることが一番いいと私は思うのだけれど、違うかな?」
諭すように萌乃に語り掛ければ、萌乃は小さく同意の意を示す。
「それはそうだと思います。それは分かってはいるのです。でも……」
「でも?」
萌乃はじれったそうに顔を少し歪め、意を決したように声を張った。
「私は、白谷さんのお力になりたいんです」
そんな萌乃に少々気圧されつつ、私も何とか声を出す。
「う、うん。だからね、先輩の力になるためには、まず、仕事を覚えてミスをしないように成長して……」
「そんないつになるか分からない成長を待ってはいられません。それに、私、ポンコツなんです。そんな私が成長するなんて、奇跡に等しいです」
「え? ポ、ポンコツ……?」
萌乃の自身を否定する物言いに、私が思わずポカンとしている間にも、ヒートアップした萌乃の口からは、次々と自分を否定する言葉が溢れ出す。
「私なんて、物覚えも悪いし、要領も良くないし、気が利かないし、すぐ目の前の事でいっぱいいっぱいになっちゃうし」
「え? え? ちょ、ちょっと待って萌ちゃん」
私は、思わず萌乃の手を取る。興奮しているのか、萌乃の手は、小刻みに震えていた。その震える手を私は両手で優しく包んだ。
「ねぇ。萌ちゃん。誰かに何か言われたの?」
「……いえ」
萌乃は、私に包まれた自身の手を凝視したまま、小さく頭を振った。
「じゃあ、どうして自分をそんなにひどく言うの?」
「……だって、本当の事なんです。昔から私、物覚え悪いし、要領も悪いし」
「ああ。うん、わかったから。もうそれ以上は」
慌てて彼女の手を軽く叩きながら、私は彼女の言葉を止める。しかし、興奮が収まらなかったのか、萌乃は、そのまま、言葉を続けた。
「そんなだから、私、白谷さんに申し訳なくて。いつもいつも彼の足を引っ張っている自分が嫌なんです。白谷さんのお力になりたいんです。白谷さんを助けたいんです。白谷さんに頼って欲しいんです。だって、私、私……」
「萌ちゃん。一旦落ち着こ。ね」
ヒートアップしている萌乃に声をかけるが、萌乃は勢いのままに言い切る。
「白谷さんが好きなんです!」
萌乃の突然の告白が、小会議室に響き渡った。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる