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砂浜の結婚式(10)
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ホテル側のスタッフも不慣れな場所での挙式だったので、多少の不手際があったとしても仕方ないだろう。それらを一つずつ改善し、次に繋げるのが私たちの仕事だ。それなのに。
不安と苛立ちが顔に出ていたのか、白谷吟が心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「矢城さん? 何かあった?」
私はハッとして顔を上げた。
「実は、三嶋さんから次の挙式の話がありまして……」
私の話を聞くと、彼は深い溜め息をつく。そして、やれやれと言わんばかりに肩をすくめた。先程のシロ先輩同様、白谷吟も渋い表情を一瞬見せる。それでも、すぐにいつもの飄々とした表情に戻った。こうして文句を口にしないあたりが、社内外の人から慕われる所以なのだろうか。
「そうかぁ。それは大変なことになったな。いくらフィードバックは後で良いと言われても、こちらは仕事を受けている側。そのまま鵜呑みにするわけにもいかないね。それじゃあ、出来ることは今からやろうか」
白谷吟はパンと手を叩いて、その場の空気を切り替えた。
クライアントの要望に応えるために、時には無理難題を突きつけられることもある。それでも、こんな風にすぐに気持ちを切り替えられる。それは凄いことだなと、改めてパーフェクトヒューマン白谷吟の凄さを知った気がした。
その後、私たちは白谷吟の指示のもと、萌乃たちが行った聞き取りアンケートの確認を行うため、ホテルのラウンジへ場所を移すことにした。
ラウンジは、大きな窓があるおかげで採光がよく取れており、店内はとても明るい雰囲気に包まれている。テーブル席は半個室のように区切られていて、他の客の顔が見えにくい構造になっているため、落ち着いて話し合いができる。三嶋さんとまだ話し込んでいたシロ先輩にはメールをしておいたので、話が終われば合流できるだろう。
白谷吟と萌乃が並んでソファに座り、私はその向かいに座った。早速、アンケート結果を確認するため、タブレットを取り出す。データは共有しているので、各自の端末で作業をすることができる。
画面上に映し出された内容を確認しながら、簡易的な報告書を作成していく。本日主役だった新郎新婦へのアンケートはまだ行われていない。当日は何かと忙しいので、後日回答してもらうことになっている。
今回はゲストへの聞き取りの結果がメインだ。事前に親族にはアンケートへ協力してくれるようお願いをしていた。
まず、挙式についての満足度。どの項目も軒並み高評価だ。
不安と苛立ちが顔に出ていたのか、白谷吟が心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「矢城さん? 何かあった?」
私はハッとして顔を上げた。
「実は、三嶋さんから次の挙式の話がありまして……」
私の話を聞くと、彼は深い溜め息をつく。そして、やれやれと言わんばかりに肩をすくめた。先程のシロ先輩同様、白谷吟も渋い表情を一瞬見せる。それでも、すぐにいつもの飄々とした表情に戻った。こうして文句を口にしないあたりが、社内外の人から慕われる所以なのだろうか。
「そうかぁ。それは大変なことになったな。いくらフィードバックは後で良いと言われても、こちらは仕事を受けている側。そのまま鵜呑みにするわけにもいかないね。それじゃあ、出来ることは今からやろうか」
白谷吟はパンと手を叩いて、その場の空気を切り替えた。
クライアントの要望に応えるために、時には無理難題を突きつけられることもある。それでも、こんな風にすぐに気持ちを切り替えられる。それは凄いことだなと、改めてパーフェクトヒューマン白谷吟の凄さを知った気がした。
その後、私たちは白谷吟の指示のもと、萌乃たちが行った聞き取りアンケートの確認を行うため、ホテルのラウンジへ場所を移すことにした。
ラウンジは、大きな窓があるおかげで採光がよく取れており、店内はとても明るい雰囲気に包まれている。テーブル席は半個室のように区切られていて、他の客の顔が見えにくい構造になっているため、落ち着いて話し合いができる。三嶋さんとまだ話し込んでいたシロ先輩にはメールをしておいたので、話が終われば合流できるだろう。
白谷吟と萌乃が並んでソファに座り、私はその向かいに座った。早速、アンケート結果を確認するため、タブレットを取り出す。データは共有しているので、各自の端末で作業をすることができる。
画面上に映し出された内容を確認しながら、簡易的な報告書を作成していく。本日主役だった新郎新婦へのアンケートはまだ行われていない。当日は何かと忙しいので、後日回答してもらうことになっている。
今回はゲストへの聞き取りの結果がメインだ。事前に親族にはアンケートへ協力してくれるようお願いをしていた。
まず、挙式についての満足度。どの項目も軒並み高評価だ。
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