クロとシロと、時々ギン

田古みゆう

文字の大きさ
86 / 155

弱点は、たまご!?(5)

しおりを挟む
 萌乃の提案を聞いた白谷吟は、少し思案してから口を開く。

「なるほど。なかなか良い案だね」

 白谷吟の反応を見て、萌乃は嬉しそうに頬を緩める。白谷吟はホワイトボードに文字を書き込むと、くるりと振り返った。

「矢城さんは何かある?」

 白谷吟は私に水を向ける。私は顎に手を当てながら思考を巡らせた。萌乃の提案を否定するわけではないのだが、私はどうしても気になることがあった。

「萌ちゃんの案はすごくいいと思います。ただ、ゲストの中には、苦手であったり、アレルギーであったりと、その食材を食べられない人が出る可能性が有ります。一つの食材をメインとして全ての料理に使う場合、そのゲストは全ての料理を口にできないことになりませんか?」

 私の指摘を聞いて、萌乃はハッとした表情を浮かべる。進行役の白谷吟は納得したように小さく首肯した。

「確かに、その通りだね。じゃあ、やっぱり、メイン食材を決めるというのは難しいのかな」

 白谷吟が呟くと、萌乃は申し訳なさそうに眉尻を下げた。しかし、すぐにシロ先輩が手を挙げる。

「俺も萩田の案はいいと思う。クロの指摘はもっともだが、今回は低価格プランなんだ。そもそもゲストの人数は然程多くはないだろう。ダメな食材の事前把握はそんなに難しいことじゃないんじゃないか」

 シロ先輩の言葉を聞き、萌乃はパッと明るい笑みを浮かべた。

 なるほど。言われてみれば確かにそうだ。低価格プランだからこそ、今回の案は活かせるのかもしれない。

「把握可能であれば、私もこの案には全面的に賛成です。あ、それから、メインテーマの食材は新郎新婦に決めてもらうというのはどうでしょう? 食事に対するゲストの満足度向上対策も必要ですけど、やはり、主役のお二人が満足いくプランであるべきだと思うので」

 私が自分の意見を言うと、シロ先輩は満足げに微笑んだ。もしかして、どうやって私を論破するか考えを巡らせていたのだろうか。そんなシロ先輩の表情に白谷吟は呆れ顔を見せながら、ホワイトボードに新たにペンを走らせる。

 そして、再び私たちの方を見た。そこに書かれた文字は、先程の萌乃の提案から大きく逸脱したものではないが、とても魅力的で、良いプランだと思えるものだった。

 クライアントに提案する形が大方決まると、室内の空気が弛緩していく。私たちは持ち込んだ飲み物を飲みながら、会話は次第に雑談へと変わっていった。

「明日花さんだったら、メイン食材何にします?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

拾われ子だって、姫なのです!

田古みゆう
歴史・時代
「お前の目の色は、どう見たって俺たちとは違うだろうが!」 「ちょっと青みがかっているだけじゃない!」 青い瞳を持つ少女・千代は、江戸の町で育てられた“拾われ子”。見目麗しきその姿は噂と好奇の的となる。 だが、千代はおとなしく見せ物になったりはしない。 勝気で真っ直ぐな性格の千代は、今日も不埒な男どもを口八丁手八丁でバッサリ切って捨てる――。 だが、そんな千代の胸の奥には、ずっとくすぶる疑問がある。 「私は、一体どこの誰なのか?」 唯一同じ青眼を持つ太郎は、何かを知っているようだが、語らない。そして運命は、やがて千代の“過去”と“選択”を試す時を連れてくる。 「恋より先に、本当の自分自身を選びます!」 痛快×成長×謎めく江戸求婚譚。 これよりはじまりはじまり〜♪ ※「エブリスタ」ほか投稿サイトでも、同タイトルを公開中です。 ※表紙画像及び挿絵は、フリー素材及びAI生成画像を加工使用しています。 ※本作品は、プロットやアイディア出し等に、補助的にAIを使用しています。

処理中です...