サラリーマンと異世界 ~秩序が崩壊した世界を気ままに生き抜く~

結城絡繰

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第28話 夜の散歩

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 マンションを出て暗い夜道を歩き始めた。
 月明かりと外灯を頼りに黙々と進んでいく。
 懐中電灯を持参するか迷ったが、目立つリスクを考えてやめた。

 いつの間にか夜目が利くようになっていたのも決断の根拠となった。
 おそらくは変容の影響だろう。
 鬼系統のモンスターのいずれかが夜目を持っていたに違いない。
 夜間に行動することがないので今まで気付かなかったのだ。
 おかげで光源の乏しい場所でも不自由なく進むことができる。
 だんだんと人間離れしていくが、やはり忌避感はない。

 とは言え、油断は禁物だ。
 静寂に包まれた住宅街は、各所にモンスターが潜伏している。
 変容した人間が敵意を抱いて待ち構えているかもしれない。
 どこにでも危険は紛れている。
 五感を研ぎ澄ませて立ち向かうべきだった。

 今回の武器は拳銃がメインだ。
 左手に一丁に、腰に三丁。
 交番で入手した予備も含めてすべて持参している。

 持ちすぎると頼ってしまうので良くないと思っていたが、銃を使った戦闘にも慣れた方がいい。
 強力な武器でも、使用者が素人のままでは持ち腐れである。
 所持弾数にもまだ余裕があるため、多少は撃ちまくっても問題ない。

 いずれ弾の調達には行くつもりだった。
 その前に練習をしておきたい。
 オーガ戦では、動けない相手に至近距離から連射しただけだ。
 あれを練習とは言わないだろう。

 右手には出刃包丁を握っている。
 何かの通販番組で購入して、箱から出さないまま放置していた物だ。
 切れ味はそれなりに良いはずであった。
 変容で得た身体能力があるので、モンスターが相手でも通用するだろう。

 背中のリュックサックには、タバスコ入りの水鉄砲と伸縮式の警棒が入っていた。
 どちらも予備の武器だ。
 拳銃の弾が切れた時に使うことになると思う。

 今回の目的は、獣系統のモンスターの殺害である。
 新たなタイプの変容を進めておけば、必ず生存に役立つ。
 ついでに近所のモンスターの生態も知っておきたかった。
 やはり実際に目で見て体験するのが手っ取り早い。

 ネットの個人ブログで、変容に関する検証をしている者がいた。
 その記事によると、獣系統を殺すと速度や跳躍力が強化されやすいそうだ。
 鋭い爪や牙も生えてきたり、危機察知能力も上がるという。
 鬼系統の身体機能に合わせれば、かなりの相乗効果が見込めそうだった。
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