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第52話 ファミレス
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出発の準備ができたのでテレビを消す。
ビッグマウスがニュース番組を独占して人を殺しまくっているが、こちらの生活には関係ない。
確かスタジオは都市部にあるはずなので、画面上の惨事に過ぎなかった。
ビッグマウスが遠征してくるのなら考えものであるものの、彼は番組の継続にこだわっている。
スタジオから大きく離れることはないのではないか。
きっと実際に遭遇することはないと思う。
それに、殺人鬼は何もビッグマウスだけではない。
変容の進んだ一部の人間は、世界各地で狂気に憑かれて暴走していた。
ネットでは特に危険な者がピックアップされ、その習性や被害規模が画像と共に掲載されている。
真偽は不明だが、各インフラの維持にも殺人鬼が関わっているらしい。
ビッグマウスのように占領しているそうだ。
これほど狂った世界で誰が設備を管理しているのかと思っていたが、ようやく仕組みが納得できた。
文明が辛うじて生きているのは、謎の執着心を持つ殺人鬼のおかげらしい。
まともな人間が防衛するライフラインもあるかもしれないが、長くは耐えられないのではないか。
激化する殺し合いは、ある程度の狂気がなければ淘汰されていくだろう。
妙なこだわりを持って人々の生活を支える殺人鬼は必要なのかもしれない。
空腹感が強まってきたのでマンションを発つ。
自転車に乗って、前カゴには猟銃と工具箱を入れた。
工具箱にはドライバーやネイルハンマーといった武器を仕込んである。
モンスターを見かけたら躊躇なく攻撃するつもりだった。
目的地は近所のファミレスである。
そこで朝食を作りたいと思う。
学生時代、系列店でバイトをしていた経験があるので、何かしらの食材が残っていれば料理くらいはできるはずだ。
無論、モンスターや他の生存者及び殺人鬼が占拠している可能性も考慮している。
相手が敵対的なら撃ち殺せばいい。
それくらいはまさに朝飯前だ。
見知った道を自転車で進むこと五分。
ファミレスの看板が見えたので減速する。
通りに面したその店舗はロールカーテンで中の様子が窺えない。
駐車場には数台の放置車両があった。
目を凝らすと血が付着しているのが見える。
店の前にも誰かが倒れていた。
血だまりが広がっているのでたぶん死体だろう。
その時、店の入り口が開いた。
現れたのはコック帽を被る長身の女性だ。
身長は二メートル近くあるだろう。
遠目にも分かるほどに筋骨隆々である。
その女性は何かを引きずりながら外に出る。
無造作に投げ捨てられたのは男の死体だった。
皺だらけのコート姿で、片手にはナイフを握っている。
死体は後頭部が大きく裂けて脳が露出していた。
何か大きな刃物を叩き込んだような傷だ。
傷口が綺麗なので、一撃で殺したのだと思われる。
かなりの腕力と技量が要求される殺し方だった。
コック帽の女性は両手を払って鼻を鳴らすと、死体を蹴り転がす。
そのまま店内へと戻って行った。
一部始終を眺め終えたところで考える。
あの女性は間違いなく殺人鬼だ。
ファミレスを拠点に活動しているのだろうか。
屈強な肉体は相当な数の変容を遂げているようだ。
まともに戦えば、力押しで叩き潰される予感がした。
しかし、身体は自然とファミレスに近付いていた。
恐怖はない。
朝食を食べに来たのだから、引き返す選択肢はなかった。
たとえ殺人鬼だろうと邪魔するのは許さない。
駐車場に自転車を停めて猟銃を担ぐと、何気ない足取りで入店する。
ビッグマウスがニュース番組を独占して人を殺しまくっているが、こちらの生活には関係ない。
確かスタジオは都市部にあるはずなので、画面上の惨事に過ぎなかった。
ビッグマウスが遠征してくるのなら考えものであるものの、彼は番組の継続にこだわっている。
スタジオから大きく離れることはないのではないか。
きっと実際に遭遇することはないと思う。
それに、殺人鬼は何もビッグマウスだけではない。
変容の進んだ一部の人間は、世界各地で狂気に憑かれて暴走していた。
ネットでは特に危険な者がピックアップされ、その習性や被害規模が画像と共に掲載されている。
真偽は不明だが、各インフラの維持にも殺人鬼が関わっているらしい。
ビッグマウスのように占領しているそうだ。
これほど狂った世界で誰が設備を管理しているのかと思っていたが、ようやく仕組みが納得できた。
文明が辛うじて生きているのは、謎の執着心を持つ殺人鬼のおかげらしい。
まともな人間が防衛するライフラインもあるかもしれないが、長くは耐えられないのではないか。
激化する殺し合いは、ある程度の狂気がなければ淘汰されていくだろう。
妙なこだわりを持って人々の生活を支える殺人鬼は必要なのかもしれない。
空腹感が強まってきたのでマンションを発つ。
自転車に乗って、前カゴには猟銃と工具箱を入れた。
工具箱にはドライバーやネイルハンマーといった武器を仕込んである。
モンスターを見かけたら躊躇なく攻撃するつもりだった。
目的地は近所のファミレスである。
そこで朝食を作りたいと思う。
学生時代、系列店でバイトをしていた経験があるので、何かしらの食材が残っていれば料理くらいはできるはずだ。
無論、モンスターや他の生存者及び殺人鬼が占拠している可能性も考慮している。
相手が敵対的なら撃ち殺せばいい。
それくらいはまさに朝飯前だ。
見知った道を自転車で進むこと五分。
ファミレスの看板が見えたので減速する。
通りに面したその店舗はロールカーテンで中の様子が窺えない。
駐車場には数台の放置車両があった。
目を凝らすと血が付着しているのが見える。
店の前にも誰かが倒れていた。
血だまりが広がっているのでたぶん死体だろう。
その時、店の入り口が開いた。
現れたのはコック帽を被る長身の女性だ。
身長は二メートル近くあるだろう。
遠目にも分かるほどに筋骨隆々である。
その女性は何かを引きずりながら外に出る。
無造作に投げ捨てられたのは男の死体だった。
皺だらけのコート姿で、片手にはナイフを握っている。
死体は後頭部が大きく裂けて脳が露出していた。
何か大きな刃物を叩き込んだような傷だ。
傷口が綺麗なので、一撃で殺したのだと思われる。
かなりの腕力と技量が要求される殺し方だった。
コック帽の女性は両手を払って鼻を鳴らすと、死体を蹴り転がす。
そのまま店内へと戻って行った。
一部始終を眺め終えたところで考える。
あの女性は間違いなく殺人鬼だ。
ファミレスを拠点に活動しているのだろうか。
屈強な肉体は相当な数の変容を遂げているようだ。
まともに戦えば、力押しで叩き潰される予感がした。
しかし、身体は自然とファミレスに近付いていた。
恐怖はない。
朝食を食べに来たのだから、引き返す選択肢はなかった。
たとえ殺人鬼だろうと邪魔するのは許さない。
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