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第2話 歓迎
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朽津間ビルは山奥にぽつんとそびえ立っていた。
外壁を埋め尽くす無数の鉄板により、中の様子は一切窺えない。
沢田と上原はその異様な外観を見上げる。
手帳を開いた上原は、この数日で調べた情報を口頭で説明し始める。
「朽津間ビル……少なくとも三十年より前からあります。所有者と建築目的は不明です」
「他に情報は?」
「一度入ると二度と出られない呪われた場所として、オカルト界隈では有名らしいですよ。通称は人喰いビルだとか」
「へえ、人喰いか……」
沢田は顎を撫でて思案する。
ビルを見据える双眸は、いかなる感情も映していなかった。
手帳を仕舞った上原が首を傾げる。
「今さらですけど、封筒の依頼主はどうして私達を呼んだんですかね。しかも二十五階に行くだけで一千万円なんて……」
「実際に会って訊けばいいだろ。行くぞ」
「了解です!」
入口は割れたガラス扉が開いたままになっていた。
沢田が先頭に立って建物内に踏み込む。
「足元、気を付けろよ」
「はーい」
内部は電灯が点いておらず、昼間にも関わらず暗い。
入り口から数メートル進むだけで室内の様子が視認できなくなった。
沢田は持参した懐中電灯で前方を照らして進む。
荒廃した廊下に人の気配はない。
床にはゴミやガラクタが散乱し、破れた壁には落書きがされていた。
「なんだかお化け屋敷みたいですねえ……」
「怖いのか?」
「ぜ、全然平気ですけどっ」
強がる上原だが、頭上で揺らめく黒い物体を目にした瞬間、しゃがみ込んで悲鳴を上げた。
沢田は鬱陶しそうにその物体を掴んで引っ張る。
「うるせえな。ただの布だよ」
「わ、分かってます……」
「怖いならお前だけ外で待っとくか?」
「大丈夫です! 私に任せてください! お給料を貰ってる分、活躍するので!」
そう言って上原は駆け出した。
彼女は曲がり角で立ち止まると、右側の廊下を指差して報告する。
「あっ、先生! エレベーターがありますよ! これで一気に上がれますね!」
「……そうだな。老朽化で壊れてないといいが」
「とりあえず試してみましょうよ、ほら」
沢田が指示を出す前に、上原はエレベーターのボタンを連打する。
静かな稼働音がして上部の回数表示が動き出した。
「やった! 生きてますよ!」
「……なるほど」
険しい顔になった沢田は、コートの内側に手を突っ込む。
彼が取り出したのはリボルバー式の拳銃だった。
上原はぎょっとした様子で飛び退く。
「ちょっ、ちょっと何ですかそれ!?」
「護身用だ。嫌な予感がするんだ。こういう時の勘はよく当たる」
「……いきなり撃たないでくださいね?」
「そりゃ状況次第だな」
間もなくチーンとエレベーターの到着を知らせる音がした。
錆びた扉が軋みつつ左右に開く。
そこから飛び出してきたのは、ナイフを持った半裸の男だった。
外壁を埋め尽くす無数の鉄板により、中の様子は一切窺えない。
沢田と上原はその異様な外観を見上げる。
手帳を開いた上原は、この数日で調べた情報を口頭で説明し始める。
「朽津間ビル……少なくとも三十年より前からあります。所有者と建築目的は不明です」
「他に情報は?」
「一度入ると二度と出られない呪われた場所として、オカルト界隈では有名らしいですよ。通称は人喰いビルだとか」
「へえ、人喰いか……」
沢田は顎を撫でて思案する。
ビルを見据える双眸は、いかなる感情も映していなかった。
手帳を仕舞った上原が首を傾げる。
「今さらですけど、封筒の依頼主はどうして私達を呼んだんですかね。しかも二十五階に行くだけで一千万円なんて……」
「実際に会って訊けばいいだろ。行くぞ」
「了解です!」
入口は割れたガラス扉が開いたままになっていた。
沢田が先頭に立って建物内に踏み込む。
「足元、気を付けろよ」
「はーい」
内部は電灯が点いておらず、昼間にも関わらず暗い。
入り口から数メートル進むだけで室内の様子が視認できなくなった。
沢田は持参した懐中電灯で前方を照らして進む。
荒廃した廊下に人の気配はない。
床にはゴミやガラクタが散乱し、破れた壁には落書きがされていた。
「なんだかお化け屋敷みたいですねえ……」
「怖いのか?」
「ぜ、全然平気ですけどっ」
強がる上原だが、頭上で揺らめく黒い物体を目にした瞬間、しゃがみ込んで悲鳴を上げた。
沢田は鬱陶しそうにその物体を掴んで引っ張る。
「うるせえな。ただの布だよ」
「わ、分かってます……」
「怖いならお前だけ外で待っとくか?」
「大丈夫です! 私に任せてください! お給料を貰ってる分、活躍するので!」
そう言って上原は駆け出した。
彼女は曲がり角で立ち止まると、右側の廊下を指差して報告する。
「あっ、先生! エレベーターがありますよ! これで一気に上がれますね!」
「……そうだな。老朽化で壊れてないといいが」
「とりあえず試してみましょうよ、ほら」
沢田が指示を出す前に、上原はエレベーターのボタンを連打する。
静かな稼働音がして上部の回数表示が動き出した。
「やった! 生きてますよ!」
「……なるほど」
険しい顔になった沢田は、コートの内側に手を突っ込む。
彼が取り出したのはリボルバー式の拳銃だった。
上原はぎょっとした様子で飛び退く。
「ちょっ、ちょっと何ですかそれ!?」
「護身用だ。嫌な予感がするんだ。こういう時の勘はよく当たる」
「……いきなり撃たないでくださいね?」
「そりゃ状況次第だな」
間もなくチーンとエレベーターの到着を知らせる音がした。
錆びた扉が軋みつつ左右に開く。
そこから飛び出してきたのは、ナイフを持った半裸の男だった。
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