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第55話 明かされる出生
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眠る上原を起こしたのは、あまりにも陽気な機械音声だった。
『おいしいポップコーンだよー! みんなで一緒に食べようー!』
「……ッ!」
上原は勢いよく起きる。
彼女の目の前には、自動販売機のような機械が設置されていた。
熊を模した可愛らしいマスコットキャラクターがポップコーンのレプリカを掲げている。
ただし機械全体が汚れている上、部分的に破損しているせいで不気味な雰囲気を醸し出していた。
上原は恐る恐る後ろに下がる。
「何これ……」
「元ポップコーンマシンだね。今はただの殺戮装置だが」
上原の背後にいた老女、古賀が簡単に解説した。
彼女が小石をポップコーンマシンに投げる。
小石がぶつかった瞬間、機械からノコギリやナイフ、ハンマーといった凶器が飛び出した。
ギミックを目の当たりにした上原はぎょっとする。
機械の後ろに立っていた金歯と銀歯の男、工藤は愉快そうに笑った。
「間抜けを殺す罠なんだ。迂闊に近寄るなよ」
「は、はい」
怯える上原はなぜか正座をした。
そんな彼女に古賀は状況を伝える。
「ここは十九階。隠しルートでショートカットしたんだ。フロアの別名は休憩所。完全な安全地帯じゃないが、ビルの中ではマシな部類だね」
「なるほど……」
「とは言え、まったく争いがないわけじゃない。くれぐれも油断するんじゃないよ」
「…………」
上原はきょろきょろと辺りを見回す。
埃臭い部屋はこれといった調度品もなく、唯一の特徴がポップコーンマシンだった。
それでも上原の視線が止まらないのを見て、工藤が尋ねる。
「どうしたんだい、お嬢ちゃん」
「なんか、この場所……見覚えがあります。」
「そりゃそうだろう。二歳までここで過ごしたんだから」
工藤があっさりと言った。
動きを止めた上原は戸惑う。
「……え?」
古賀が工藤の頭を叩いた。
拳骨を構えたまま、古賀は悪態をつく。
「馬鹿。まだ話すべきじゃなかった」
「ここから先は真の地獄だ。むしろベストなタイミングだろ」
「物事には順序が……」
「だからこそ今だ」
工藤が静かに断言すると、古賀は深々と息を吐いた。
髪を掻いた彼女は、億劫そうに話し始める。
「……あんたはこのビルで生まれ育った。アタシと工藤は、あんたの母親と親友でね。出産や育児も手伝ったものさ」
「わ、私は……朽津間ビルの出身……ということ、ですか?」
「ああ。そして二歳の誕生日の後、あんたはビルの外に捨てられた。平穏な人生を歩んでほしいという母親の願いを込められてね」
古賀は苦々しい表情で述べた。
暫し黙り込んでから、上原はゆっくりと告白する。
「私、幼少期の記憶がないんです。無理に思い出そうとすると頭痛がして」
「本能的に記憶を封じてるんだろうな。こんな場所での出来事なんて、忘れちまった方が都合が良い」
工藤が同情したように頷く。
そこで上原は疑問を二人に投げかけた。
「あの、どうして私が母の子だと分かったんですか。上原って苗字は養子になった時のもので……」
「顔を見てすぐに確信したよ。あまりにも母親に似てるからね」
古賀が写真を取り出して渡す。
そこには若き日の古賀と工藤が映っていた。
中央では、上原と瓜二つの女性が、赤ん坊を抱いて笑っていた。
『おいしいポップコーンだよー! みんなで一緒に食べようー!』
「……ッ!」
上原は勢いよく起きる。
彼女の目の前には、自動販売機のような機械が設置されていた。
熊を模した可愛らしいマスコットキャラクターがポップコーンのレプリカを掲げている。
ただし機械全体が汚れている上、部分的に破損しているせいで不気味な雰囲気を醸し出していた。
上原は恐る恐る後ろに下がる。
「何これ……」
「元ポップコーンマシンだね。今はただの殺戮装置だが」
上原の背後にいた老女、古賀が簡単に解説した。
彼女が小石をポップコーンマシンに投げる。
小石がぶつかった瞬間、機械からノコギリやナイフ、ハンマーといった凶器が飛び出した。
ギミックを目の当たりにした上原はぎょっとする。
機械の後ろに立っていた金歯と銀歯の男、工藤は愉快そうに笑った。
「間抜けを殺す罠なんだ。迂闊に近寄るなよ」
「は、はい」
怯える上原はなぜか正座をした。
そんな彼女に古賀は状況を伝える。
「ここは十九階。隠しルートでショートカットしたんだ。フロアの別名は休憩所。完全な安全地帯じゃないが、ビルの中ではマシな部類だね」
「なるほど……」
「とは言え、まったく争いがないわけじゃない。くれぐれも油断するんじゃないよ」
「…………」
上原はきょろきょろと辺りを見回す。
埃臭い部屋はこれといった調度品もなく、唯一の特徴がポップコーンマシンだった。
それでも上原の視線が止まらないのを見て、工藤が尋ねる。
「どうしたんだい、お嬢ちゃん」
「なんか、この場所……見覚えがあります。」
「そりゃそうだろう。二歳までここで過ごしたんだから」
工藤があっさりと言った。
動きを止めた上原は戸惑う。
「……え?」
古賀が工藤の頭を叩いた。
拳骨を構えたまま、古賀は悪態をつく。
「馬鹿。まだ話すべきじゃなかった」
「ここから先は真の地獄だ。むしろベストなタイミングだろ」
「物事には順序が……」
「だからこそ今だ」
工藤が静かに断言すると、古賀は深々と息を吐いた。
髪を掻いた彼女は、億劫そうに話し始める。
「……あんたはこのビルで生まれ育った。アタシと工藤は、あんたの母親と親友でね。出産や育児も手伝ったものさ」
「わ、私は……朽津間ビルの出身……ということ、ですか?」
「ああ。そして二歳の誕生日の後、あんたはビルの外に捨てられた。平穏な人生を歩んでほしいという母親の願いを込められてね」
古賀は苦々しい表情で述べた。
暫し黙り込んでから、上原はゆっくりと告白する。
「私、幼少期の記憶がないんです。無理に思い出そうとすると頭痛がして」
「本能的に記憶を封じてるんだろうな。こんな場所での出来事なんて、忘れちまった方が都合が良い」
工藤が同情したように頷く。
そこで上原は疑問を二人に投げかけた。
「あの、どうして私が母の子だと分かったんですか。上原って苗字は養子になった時のもので……」
「顔を見てすぐに確信したよ。あまりにも母親に似てるからね」
古賀が写真を取り出して渡す。
そこには若き日の古賀と工藤が映っていた。
中央では、上原と瓜二つの女性が、赤ん坊を抱いて笑っていた。
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