57 / 100
第57話 逃避行
しおりを挟む
刃物を持った老婆を睨み、古賀は忌々しそうに舌打ちする。
「……間が悪いね」
「だ、誰ですか」
「人斬りヨネ――朽津間ビル最古参のとてつもなく強いババアだよ」
工藤が堪らず噴き出した。
彼は涙を拭ってゲラゲラと笑う。
「強いババアって、お前さんが言うかね」
「軽口を叩いている場合かい。対策を考えな」
「舐めんな。もう考えてある」
笑うことをやめた工藤が前に進み出る。
サバイバルナイフを持った彼は当然のように言う。
「ここはおいらが食い止める。二人は先に行ってくれ」
「自己犠牲かい。あんたらしくないね」
「死にたくねえから死ぬ気で頑張るさ。代わりに最上階までの露払いを頼むよ」
「ハッ、任せときな」
古賀は上原の手を掴むと、踵を返して部屋を出た。
別ルートから上階へ向かうつもりなのだ。
その動きに反応したヨネが疾走するも、サバイバルナイフの刺突に邪魔されて立ち止まる。
刹那、ナイフの刃先が角度を変えてヨネを狙う。
「そらよっ」
ヨネは匕首で切り上げて防御した。
老人とは思えない、俊敏で力強い反応だった。
腰を落として構えた工藤は、ゆらゆらと刃先を回して笑う。
「ボケた婆さんは趣味じゃないんだがね。ちょっと最期まで付き合ってくれよ」
ヨネは答えず匕首で斬りかかった。
喉を狙った一撃に対し、工藤はナイフを当てて弾く。
「へへっ、危ねえな。スリル満点じゃ――」
横殴りの刀が顔面に迫り、工藤は慌ててに飛び退いた。
べちゃり、と湿った音が鳴る。
削ぎ落とされた片耳が床に落ちていた。
顔の半分を血だらけにした工藤は、己の欠損箇所に触れて感心する。
「おおっ、やるな!」
工藤はポケットから拳大のボールを掴み取って転がした。
ボールは緑色の煙を噴出し、瞬く間に部屋に充満して視界を奪う。
その隙に工藤は引き返して近くの階段を駆け下りた。
「はははっ! 逃げるが勝ちってなァッ!」
すぐさまヨネが煙から飛び出してくる。
そこから階段を使わず、壁を走るように落下してきた。
工藤はナイフを投げつける。
ヨネは匕首で遮りつつ、刀をまっすぐ叩き付けた。
斬撃は工藤の肩を切り裂くも、彼の動きが鈍ることはなかった。
「ほれほれ、こっちだ!」
工藤は尻を叩いてヨネを挑発する。
逃れ難い死の気配を感じ取りながらも、彼の笑顔が消えることはなかった。
明かりの無い階段を、工藤は数段飛ばしてひたすら下っていく。
「……間が悪いね」
「だ、誰ですか」
「人斬りヨネ――朽津間ビル最古参のとてつもなく強いババアだよ」
工藤が堪らず噴き出した。
彼は涙を拭ってゲラゲラと笑う。
「強いババアって、お前さんが言うかね」
「軽口を叩いている場合かい。対策を考えな」
「舐めんな。もう考えてある」
笑うことをやめた工藤が前に進み出る。
サバイバルナイフを持った彼は当然のように言う。
「ここはおいらが食い止める。二人は先に行ってくれ」
「自己犠牲かい。あんたらしくないね」
「死にたくねえから死ぬ気で頑張るさ。代わりに最上階までの露払いを頼むよ」
「ハッ、任せときな」
古賀は上原の手を掴むと、踵を返して部屋を出た。
別ルートから上階へ向かうつもりなのだ。
その動きに反応したヨネが疾走するも、サバイバルナイフの刺突に邪魔されて立ち止まる。
刹那、ナイフの刃先が角度を変えてヨネを狙う。
「そらよっ」
ヨネは匕首で切り上げて防御した。
老人とは思えない、俊敏で力強い反応だった。
腰を落として構えた工藤は、ゆらゆらと刃先を回して笑う。
「ボケた婆さんは趣味じゃないんだがね。ちょっと最期まで付き合ってくれよ」
ヨネは答えず匕首で斬りかかった。
喉を狙った一撃に対し、工藤はナイフを当てて弾く。
「へへっ、危ねえな。スリル満点じゃ――」
横殴りの刀が顔面に迫り、工藤は慌ててに飛び退いた。
べちゃり、と湿った音が鳴る。
削ぎ落とされた片耳が床に落ちていた。
顔の半分を血だらけにした工藤は、己の欠損箇所に触れて感心する。
「おおっ、やるな!」
工藤はポケットから拳大のボールを掴み取って転がした。
ボールは緑色の煙を噴出し、瞬く間に部屋に充満して視界を奪う。
その隙に工藤は引き返して近くの階段を駆け下りた。
「はははっ! 逃げるが勝ちってなァッ!」
すぐさまヨネが煙から飛び出してくる。
そこから階段を使わず、壁を走るように落下してきた。
工藤はナイフを投げつける。
ヨネは匕首で遮りつつ、刀をまっすぐ叩き付けた。
斬撃は工藤の肩を切り裂くも、彼の動きが鈍ることはなかった。
「ほれほれ、こっちだ!」
工藤は尻を叩いてヨネを挑発する。
逃れ難い死の気配を感じ取りながらも、彼の笑顔が消えることはなかった。
明かりの無い階段を、工藤は数段飛ばしてひたすら下っていく。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
【完結】百怪
アンミン
ホラー
【PV数100万突破】
第9回ネット小説大賞、一次選考通過、
第11回ネット小説大賞、一次選考通過、
マンガBANG×エイベックス・ピクチャーズ
第一回WEB小説大賞一次選考通過作品です。
百物語系のお話。
怖くない話の短編がメインです。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/20:『ものおと』の章を追加。2026/1/27の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/19:『みずのおと』の章を追加。2026/1/26の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/18:『あまなつ』の章を追加。2026/1/25の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/17:『えれべーたー』の章を追加。2026/1/24の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/16:『せきゆすとーぶ』の章を追加。2026/1/23の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/15:『しばふ』の章を追加。2026/1/22の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/14:『でんしれんじ』の章を追加。2026/1/21の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし
響ぴあの
ホラー
【1分読書】
意味が分かるとこわいおとぎ話。
意外な事実や知らなかった裏話。
浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。
どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。
怪奇蒐集帳(短編集)
naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。
怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——
どれもがただの作り話かもしれない。
だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。
本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。
最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる