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第64話 治療中
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階段を下りたイリエが辿り着いたのは朽津間クリニックだった。
無言で通り過ぎようとした彼女は、傷付いた自分の身体を見下ろす。
細かい傷と痣ばかりで軽傷の範疇だが、激しい動きができるほど万全でもなかった。
心身ともに疲労も蓄積しており、今にも気絶しそうなのを無理やり耐えている状態だった。
(ここは十七階……地上まで戦闘を避けて戻るのは厳しい。身体もボロボロだし、何か武器がないと……)
イリエは葛藤する。
クリニックで葛城に改造されたナベを思い出した。
次にチェーンソーで解体されたアサバが脳裏を過ぎる。
(どの選択でも地獄……少しでも生存率が高い行動を取るしかないんだ)
数分の逡巡を経て、イリエはクリニックの扉に手をかける。
まず何より治療や休息、武器の入手が最優先だと判断した結果であった。
人体改造を施されるリスクを考慮した上で、彼女はクリニック内に踏み込む。
「あのー、こんにちは……」
血と消毒液の臭いが充満する中、イリエは恐る恐る進む。
手前の部屋から人の声がしたので、彼女はノックをしてから開いた。
そこでは、マナカとヒヨリが床でうつ伏せとなり、葛城の治療を受けている最中だった。
予想外の再会にイリエは思考停止する。
「えっ」
「あっ」
「おっ」
顔を上げたマナカとヒヨリが同時に駆け出した。
ヒヨリがスライディングでイリエを転倒させ、マナカがその背中に尻を載せる。
「すごーい。生きてたんだ」
「しぶといね」
「わざわざ捕まりに来てくれたんだねー」
「どうする?」
「今度こそ売っちゃおう!」
二人の意見が揃った瞬間、葛城がメスを片手に文句を言う。
「待ちたまえ。来院したということは私の患者だ。勝手な真似は許さないよ」
「えー、うちらの獲物なのに?」
「そうだそうだ」
尚も抗議する二人に対し、今度は散弾銃が向けられた。
ベッドから起き上がったカトウは、鬱陶しそうに引き金に指をかけて脅す。
「おい、ガキども。こっちは手術待ちなんだ。喧嘩はよそでやれ。それとも黙らせてやろうか?」
「ごめんなさーい」
「反省します」
頬を膨らませて不満げだが、マナカとヒヨリは手を挙げて従う。
解放されたイリエは、驚いた様子でカトウを見る。
「カトウ……さん? 普通に喋れるんですか……?」
「なんだ。俺のこと知ってんのか」
カトウは眉を曲げて問い返す。
なんとなしに向けられた散弾銃に怯えながら、イリエは己の知る情報を話し始めた。
無言で通り過ぎようとした彼女は、傷付いた自分の身体を見下ろす。
細かい傷と痣ばかりで軽傷の範疇だが、激しい動きができるほど万全でもなかった。
心身ともに疲労も蓄積しており、今にも気絶しそうなのを無理やり耐えている状態だった。
(ここは十七階……地上まで戦闘を避けて戻るのは厳しい。身体もボロボロだし、何か武器がないと……)
イリエは葛藤する。
クリニックで葛城に改造されたナベを思い出した。
次にチェーンソーで解体されたアサバが脳裏を過ぎる。
(どの選択でも地獄……少しでも生存率が高い行動を取るしかないんだ)
数分の逡巡を経て、イリエはクリニックの扉に手をかける。
まず何より治療や休息、武器の入手が最優先だと判断した結果であった。
人体改造を施されるリスクを考慮した上で、彼女はクリニック内に踏み込む。
「あのー、こんにちは……」
血と消毒液の臭いが充満する中、イリエは恐る恐る進む。
手前の部屋から人の声がしたので、彼女はノックをしてから開いた。
そこでは、マナカとヒヨリが床でうつ伏せとなり、葛城の治療を受けている最中だった。
予想外の再会にイリエは思考停止する。
「えっ」
「あっ」
「おっ」
顔を上げたマナカとヒヨリが同時に駆け出した。
ヒヨリがスライディングでイリエを転倒させ、マナカがその背中に尻を載せる。
「すごーい。生きてたんだ」
「しぶといね」
「わざわざ捕まりに来てくれたんだねー」
「どうする?」
「今度こそ売っちゃおう!」
二人の意見が揃った瞬間、葛城がメスを片手に文句を言う。
「待ちたまえ。来院したということは私の患者だ。勝手な真似は許さないよ」
「えー、うちらの獲物なのに?」
「そうだそうだ」
尚も抗議する二人に対し、今度は散弾銃が向けられた。
ベッドから起き上がったカトウは、鬱陶しそうに引き金に指をかけて脅す。
「おい、ガキども。こっちは手術待ちなんだ。喧嘩はよそでやれ。それとも黙らせてやろうか?」
「ごめんなさーい」
「反省します」
頬を膨らませて不満げだが、マナカとヒヨリは手を挙げて従う。
解放されたイリエは、驚いた様子でカトウを見る。
「カトウ……さん? 普通に喋れるんですか……?」
「なんだ。俺のこと知ってんのか」
カトウは眉を曲げて問い返す。
なんとなしに向けられた散弾銃に怯えながら、イリエは己の知る情報を話し始めた。
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