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第91話 怪物の正体
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三十年前。
上原が管理者となり、朽津間ビルの爆発を阻止したその直後、野村率いる朽津間教の信者が二十五階に押し寄せた。
彼らは数の利を活かして沢田、上原、コレクターの三人を羽交い絞めにする。
「このっ、クソが!」
沢田は激しく抵抗するも、袋叩きにされてしまう。
二十人以上の信者が相手では為す術もなかった。
殴られて顔を腫らした沢田は、コレクターを怒鳴りつける。
「おい! 何か逆転の手とかねえのか!?」
「申し訳ありません。さすがにそこまで便利なものは……」
やり取りを見守る野村は勝ち誇った表情だった。
満身創痍の野村は、呂律の曖昧な口調で三人に告げる。
「つぎの、かんり、しゃは……おばえら、では、ない……! ぶざばに、しね」
野村の背後で壁が爆発した。
そこから飛び出してきたのは、無数の手足を持つ異形――怪物ナラクだった。
轟音に驚いた野村は振り返る。
「なん、だ」
ナラクの腕が野村の首と頭を掴み、力任せに捩じ切った。
野村の生首を持ったまま、ナラクは近くの信者に殴りかかる。
巨岩の如き拳が信者の顔面を陥没させた。
前蹴りは肋骨を砕き、内臓にまで衝撃を響かせる。
信者の反撃は無数の手足で受け止め、奪った武器でさらに致命傷を与えた。
ナラクが信者を殺戮していく。
信者は大慌てで殺到するも、軽々と蹴散らされて死んでいった。
容赦ない暴力の余波が壁や床、天井を破壊し、整えられた内装を台無しにする。
一方的な蹂躙劇を前により、沢田達を拘束する者はいなくなっていた。
上原は沢田に小声で話しかける。
「せ、先生……あの人は……」
「……ああ」
ものの一分ほどで室内の信者は全滅した。
血みどろのになったナラクは、壁の穴から出て行こうとする。
そこに沢田が声をかけた。
「おい、待てよ」
「……なんだ」
「お前、松本だろ。その姿……何があったんだよ」
沢田の指摘を受けたナラクは足を止める。
移植された手足に紛れているが、ナラクは赤いスーツを着込んでいた。
逞しい巨躯も松本のそれと同一だった。
上原の救出に向かった際、松本は床の崩落に巻き込まれた。
そこで人喰いに致命傷を負わされた松本は、朽津間クリニックに来院した。
彼は葛城の手術で生き延びると、以降は怪物ナラクとして行動していたのだった。
ナラクこと松本は、ぼそりと言葉を発する。
「約束は、果たした」
異形の背中は、壁の穴から消えて行った。
上原が管理者となり、朽津間ビルの爆発を阻止したその直後、野村率いる朽津間教の信者が二十五階に押し寄せた。
彼らは数の利を活かして沢田、上原、コレクターの三人を羽交い絞めにする。
「このっ、クソが!」
沢田は激しく抵抗するも、袋叩きにされてしまう。
二十人以上の信者が相手では為す術もなかった。
殴られて顔を腫らした沢田は、コレクターを怒鳴りつける。
「おい! 何か逆転の手とかねえのか!?」
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やり取りを見守る野村は勝ち誇った表情だった。
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「つぎの、かんり、しゃは……おばえら、では、ない……! ぶざばに、しね」
野村の背後で壁が爆発した。
そこから飛び出してきたのは、無数の手足を持つ異形――怪物ナラクだった。
轟音に驚いた野村は振り返る。
「なん、だ」
ナラクの腕が野村の首と頭を掴み、力任せに捩じ切った。
野村の生首を持ったまま、ナラクは近くの信者に殴りかかる。
巨岩の如き拳が信者の顔面を陥没させた。
前蹴りは肋骨を砕き、内臓にまで衝撃を響かせる。
信者の反撃は無数の手足で受け止め、奪った武器でさらに致命傷を与えた。
ナラクが信者を殺戮していく。
信者は大慌てで殺到するも、軽々と蹴散らされて死んでいった。
容赦ない暴力の余波が壁や床、天井を破壊し、整えられた内装を台無しにする。
一方的な蹂躙劇を前により、沢田達を拘束する者はいなくなっていた。
上原は沢田に小声で話しかける。
「せ、先生……あの人は……」
「……ああ」
ものの一分ほどで室内の信者は全滅した。
血みどろのになったナラクは、壁の穴から出て行こうとする。
そこに沢田が声をかけた。
「おい、待てよ」
「……なんだ」
「お前、松本だろ。その姿……何があったんだよ」
沢田の指摘を受けたナラクは足を止める。
移植された手足に紛れているが、ナラクは赤いスーツを着込んでいた。
逞しい巨躯も松本のそれと同一だった。
上原の救出に向かった際、松本は床の崩落に巻き込まれた。
そこで人喰いに致命傷を負わされた松本は、朽津間クリニックに来院した。
彼は葛城の手術で生き延びると、以降は怪物ナラクとして行動していたのだった。
ナラクこと松本は、ぼそりと言葉を発する。
「約束は、果たした」
異形の背中は、壁の穴から消えて行った。
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