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第7話 迷宮攻略を進めてみた
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場所を移動してまた草を毟っていると、ビビが手を止めてきた。
彼女は少し眉を寄せて述べる。
「その草、ちょっと危ないかも」
「獣人の嗅覚はすごいな。これは毒が含まれているんだ」
「傷薬にできるの?」
「普通に毒薬として使う。矢に塗っておく時が多いな。肉が食えなくなるから、狩猟なんかでは使えないがね」
俺みたいに無個性な冒険者にとって、毒の有用性は高い。
少し格上の魔物でも、不意打ちで毒を打ち込めば楽に勝てたりするのだ。
扱いにさえ気を付けていれば便利な武器である。
毒草の採取を済ませた俺達は、下り階段で別の階層に移動する。
次に待っていたのは森ではなく遺跡だった。
入り組んだ通路が多く、あちこちに湿った苔が生えている。
油断すると足を滑らせそうだ。
俺は松明を片手に前進する。
「遺跡型の階層は罠がある。注意して進むぞ」
「わかった」
しばらく進むと、床の違和感に気付く。
一部分だけ苔が生えておらず、少し膨らんで段差ができていた。
屈んだ俺はその床を注視する。
そして、肩越しに見るビビに説明した。
「見ろ、これが罠だ。踏むと発動するやつだな」
「何が起こるの?」
尋ねられた俺は、近くの壁に触れる。
腰くらいの高さで横一列に穴が並んでいた。
暗い通路なので発見は難しい。
よほど意識して探さなければ見過ごすだろう。
「この穴から何か出てきそうだ。ついでに確かめておくか」
俺は持参した工具で壁を弄り始めた。
かなり大雑把な造りなのでどうにかできそうだと判断したのだ。
ビビは後ろで不安そうにしている。
「危なくないの?」
「大丈夫だ。罠の解除には慣れている。知り合いの盗賊から習ったんだ」
「やっぱり器用だね」
「貧乏を付け忘れるなよ」
そう言っている間に罠の解除が完了する。
崩した壁の裏には、穴の数だけ槍が設置されていた。
床の段差を踏むと飛び出す仕組みのようだ。
ありふれた罠なので解除も簡単だった。
俺は罠の槍を残らず外して紐で束ねておく。
「一応、持っていくか。ギルドの武具屋で売れば金になる」
「いいね」
その後、遺跡内で数種の魔物と戦って納品用の素材を集める。
ゴブリンより強い魔物ばかりだったが、やはり苦戦することはなかった。
狭い場所でもビビの素早さは健在で、一方的な連勝を披露してくれた。
俺も多少は援護したものの、目立った活躍はしていない。
やはり才能の差は大きいと痛感させられたのだった。
まあ、それで後ろ向きな気持ちにはならない。
劣等感を覚えるのはいつものことである。
自分より若い人間がどんどん成功する姿を見てきたのだ。
優れた存在を目の当たりにしても、少し卑屈になるだけであった。
嫉妬を露わにするよりは健全だろう。
彼女は少し眉を寄せて述べる。
「その草、ちょっと危ないかも」
「獣人の嗅覚はすごいな。これは毒が含まれているんだ」
「傷薬にできるの?」
「普通に毒薬として使う。矢に塗っておく時が多いな。肉が食えなくなるから、狩猟なんかでは使えないがね」
俺みたいに無個性な冒険者にとって、毒の有用性は高い。
少し格上の魔物でも、不意打ちで毒を打ち込めば楽に勝てたりするのだ。
扱いにさえ気を付けていれば便利な武器である。
毒草の採取を済ませた俺達は、下り階段で別の階層に移動する。
次に待っていたのは森ではなく遺跡だった。
入り組んだ通路が多く、あちこちに湿った苔が生えている。
油断すると足を滑らせそうだ。
俺は松明を片手に前進する。
「遺跡型の階層は罠がある。注意して進むぞ」
「わかった」
しばらく進むと、床の違和感に気付く。
一部分だけ苔が生えておらず、少し膨らんで段差ができていた。
屈んだ俺はその床を注視する。
そして、肩越しに見るビビに説明した。
「見ろ、これが罠だ。踏むと発動するやつだな」
「何が起こるの?」
尋ねられた俺は、近くの壁に触れる。
腰くらいの高さで横一列に穴が並んでいた。
暗い通路なので発見は難しい。
よほど意識して探さなければ見過ごすだろう。
「この穴から何か出てきそうだ。ついでに確かめておくか」
俺は持参した工具で壁を弄り始めた。
かなり大雑把な造りなのでどうにかできそうだと判断したのだ。
ビビは後ろで不安そうにしている。
「危なくないの?」
「大丈夫だ。罠の解除には慣れている。知り合いの盗賊から習ったんだ」
「やっぱり器用だね」
「貧乏を付け忘れるなよ」
そう言っている間に罠の解除が完了する。
崩した壁の裏には、穴の数だけ槍が設置されていた。
床の段差を踏むと飛び出す仕組みのようだ。
ありふれた罠なので解除も簡単だった。
俺は罠の槍を残らず外して紐で束ねておく。
「一応、持っていくか。ギルドの武具屋で売れば金になる」
「いいね」
その後、遺跡内で数種の魔物と戦って納品用の素材を集める。
ゴブリンより強い魔物ばかりだったが、やはり苦戦することはなかった。
狭い場所でもビビの素早さは健在で、一方的な連勝を披露してくれた。
俺も多少は援護したものの、目立った活躍はしていない。
やはり才能の差は大きいと痛感させられたのだった。
まあ、それで後ろ向きな気持ちにはならない。
劣等感を覚えるのはいつものことである。
自分より若い人間がどんどん成功する姿を見てきたのだ。
優れた存在を目の当たりにしても、少し卑屈になるだけであった。
嫉妬を露わにするよりは健全だろう。
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