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第48話 治療術師に会いに行ってみた
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二人で街を歩いて移動する。
目指すは紹介された治療術師の医院だ。
紹介状には地図も記載されていたので間違えることはない。
少し話しながら歩いていればすぐに着く距離だった。
移動中、ビビは何かと俺を気遣ってくれる。
トロールに受けた傷を心配しているのだろう。
応急処置は済んだので割と平気だし、そう伝えたのだがビビの態度は変わらない。
まあ、派手にぶっ飛ばされたところを目撃したのだし、仕方ないとは思う。
普通は死にかねない威力だったのは事実なので、大人しく感謝することにした。
(これから傷を治すから、その心配も消えるんだけどな)
俺はトロールに殴られた脇腹を撫でる。
鈍い痛みが走るも、表情を変えるほどではない。
治療術師の手にかかれば一瞬で片付く程度の傷である。
そもそも治療術師とは、怪我を治すことを専門とする魔術師のことを指す。
普通の医者のほぼ上位互換で、大抵の傷は治せるらしい。
凄腕になってくると、死んだ直後なら蘇生すらさせられるという。
そこまでの使い手は滅多にいないだろうが、治療術師の実力を知らしめるには十分な逸話だろう。
ただし利用料金は高い。
平民が手軽に通える額でないのは間違いなかった。
だから治療術師の顧客は、高位の冒険者か貴族が大半だと聞いたことがある。
俺も数えるほどしか利用したことがない。
よほどの事情がない限りは普通の医者を利用するのが無難だろう。
ちなみに治療術師は効力の高さから水属性の使い手が多い。
さらに怪我の種類に応じて他の属性も習得するそうだ。
基本的にどこでも重宝される存在で、治療術師になった時点で将来は安泰とまで言われている。
俺も魔術による治療ができるようになったが、魔力量が圧倒的に少ない。
治療術師として生計を立てるのは不可能だろう。
ビビの風魔術も、属性的に治療行為との相性が悪い。
回復手段にするのは難しいので、やはり治療術師になるのは厳しいはずだ。
「ちゃんと治るかな」
「問題ないさ。治療術師は切断された手足も繋げられるらしいからな」
「すごいね」
「まったくだ」
間もなく地図で記された場所に到着する。
普段は通らない区画であるそこには、奇妙な建物がそびえ立っていた。
とにかく高さがある。
廃屋ばかりの周囲と比べて明らかに目立っていた。
増築を繰り返したような外観で、何階まであるのか分からない。
より正確に言うなら、構造が滅茶苦茶なので数えようがないだろう。
開け放たれた入口はかなり大きく、大型の魔物の搬入でもしているかと疑いたくなる。
(本当にここで合っているのか……?)
少し不安に思いつつも、俺達は入口を跨いで室内に入った。
そして、一歩目から立ち止まる。
砂利が敷かれた地面が広がるその空間は、天井の隙間から日光が差して光源となっていた。
中央には筋骨隆々の大女が仁王立ちしている。
巨人族にしては小さいので混血だろう。
それでも俺達と比べればかなりの差がある。
大女は血と土で汚れたコートを着ていた。
厳めしい顔で俺とビビを交互に見ると、ゆっくりと踏み出して近付いてくる。
全身からは闘気が熱となって発散されていた。
なんだかこれは不味い展開になる気がする。
そう思った直後、大女が雄叫びと共に殴りかかってきた。
目指すは紹介された治療術師の医院だ。
紹介状には地図も記載されていたので間違えることはない。
少し話しながら歩いていればすぐに着く距離だった。
移動中、ビビは何かと俺を気遣ってくれる。
トロールに受けた傷を心配しているのだろう。
応急処置は済んだので割と平気だし、そう伝えたのだがビビの態度は変わらない。
まあ、派手にぶっ飛ばされたところを目撃したのだし、仕方ないとは思う。
普通は死にかねない威力だったのは事実なので、大人しく感謝することにした。
(これから傷を治すから、その心配も消えるんだけどな)
俺はトロールに殴られた脇腹を撫でる。
鈍い痛みが走るも、表情を変えるほどではない。
治療術師の手にかかれば一瞬で片付く程度の傷である。
そもそも治療術師とは、怪我を治すことを専門とする魔術師のことを指す。
普通の医者のほぼ上位互換で、大抵の傷は治せるらしい。
凄腕になってくると、死んだ直後なら蘇生すらさせられるという。
そこまでの使い手は滅多にいないだろうが、治療術師の実力を知らしめるには十分な逸話だろう。
ただし利用料金は高い。
平民が手軽に通える額でないのは間違いなかった。
だから治療術師の顧客は、高位の冒険者か貴族が大半だと聞いたことがある。
俺も数えるほどしか利用したことがない。
よほどの事情がない限りは普通の医者を利用するのが無難だろう。
ちなみに治療術師は効力の高さから水属性の使い手が多い。
さらに怪我の種類に応じて他の属性も習得するそうだ。
基本的にどこでも重宝される存在で、治療術師になった時点で将来は安泰とまで言われている。
俺も魔術による治療ができるようになったが、魔力量が圧倒的に少ない。
治療術師として生計を立てるのは不可能だろう。
ビビの風魔術も、属性的に治療行為との相性が悪い。
回復手段にするのは難しいので、やはり治療術師になるのは厳しいはずだ。
「ちゃんと治るかな」
「問題ないさ。治療術師は切断された手足も繋げられるらしいからな」
「すごいね」
「まったくだ」
間もなく地図で記された場所に到着する。
普段は通らない区画であるそこには、奇妙な建物がそびえ立っていた。
とにかく高さがある。
廃屋ばかりの周囲と比べて明らかに目立っていた。
増築を繰り返したような外観で、何階まであるのか分からない。
より正確に言うなら、構造が滅茶苦茶なので数えようがないだろう。
開け放たれた入口はかなり大きく、大型の魔物の搬入でもしているかと疑いたくなる。
(本当にここで合っているのか……?)
少し不安に思いつつも、俺達は入口を跨いで室内に入った。
そして、一歩目から立ち止まる。
砂利が敷かれた地面が広がるその空間は、天井の隙間から日光が差して光源となっていた。
中央には筋骨隆々の大女が仁王立ちしている。
巨人族にしては小さいので混血だろう。
それでも俺達と比べればかなりの差がある。
大女は血と土で汚れたコートを着ていた。
厳めしい顔で俺とビビを交互に見ると、ゆっくりと踏み出して近付いてくる。
全身からは闘気が熱となって発散されていた。
なんだかこれは不味い展開になる気がする。
そう思った直後、大女が雄叫びと共に殴りかかってきた。
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