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短編(1話完結)

幽霊ポイント

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残業で遅くなり、淋しげな路地を歩いていた。
そこにぬっと現れる人影。

「恨めしや~。」

「……今時珍しい登場の仕方ですね、それ。逆に新鮮です。」

幽霊だった。
けれど戸惑いながらブロック塀から顔を出した幽霊は迫力にかけ、怖くも何ともない。
しかも初対面で、恨まれる覚えは一つもなかった。

「すみません。今時の幽霊がどうやって登場して脅かすか知らないんです。」

「いや知らなくてもいいと思いますけど?」

「そうもいかないんです。幽霊が幽霊でいるには、人を驚かせて幽霊ポイントを貯めないといけないんです。」

「向いてなさそうですね?」

「はい。難航しております。」

そう言って恐縮する幽霊。
私は思わず言った。

「というか、成仏すれば幽霊でいる必要がないのでは?」

そう言われた幽霊は「あ!」と声を上げ、恥ずかしそうに微笑みながら消えていった。

幽霊の世界も大変なんだなと思った。
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