宇佐美くんと辰巳さん〜人生で一番大変だったある年越しの話

ねぎ(ポン酢)

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おまけ【その後の小話】

その後の小話①(すいません、名前逆でした。直しました)

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年を越した後、僕は一度だけ「うさぎの神様」に会った。

会った、ような気がする。
多分、年を越してしまったから、もう神様じゃなかったんだと思う。

それは春休み、暇を持て余して騒いでいた妹や従兄弟達の為に動物園に行った時の事だった。

触れ合いコーナーから離れようとしない妹を、僕は仕方なく柵の向こうから見ていた。
すると妹が急に立ち上がり、急いで僕の方に来た。

「お兄ちゃん!!これ!!」

妹の腕には、真っ白なうさぎが抱かれていた。
結構、大きなうさぎで、妹は抱えるのが大変そうだった。

でも、問題はそこじゃない。

「……え?!」

そのうさぎの口には、あの、うさぎのぬいぐるみが咥えられていた。

「これ、辰巳ちゃんのだよね?!」

「え……あ、どうだろう?!」

「辰巳ちゃんのだよ!!だって!耳のところにピアスついてる!!」

「ええ?!そんなのつけてたの?!」

僕は全く気づかなかったのだが、とてもわかりにくいところに確かにキラキラしたピアスが刺さっていた。

「ほらね!!私、内緒だよって見せてもらったから覚えてるもん!!」

妹はそう言って胸を張った。
僕にはぬいぐるみにピアスをつける意味はわからなかったけれど、こういうのは女の子同士、話が合うのかもしれない。

「辰巳ちゃん……ここに来て、落としてっちゃったんだね……。」

「あ~……、うん。そうかもね……。」

実際は年越しの宮の前に置いてきたんだけど……。

それにしても、と思う。
何でこれがここにあるんだろう??

僕は不思議に思いながら、うさぎの咥えてるぬいぐるみに触った。

その瞬間、うさぎはペッとぬいぐるみを離した。
そして妹の腕の中から飛び出すと、たくさんいるうさぎの中に行ってしまった。

「あ~っ!!」

「仕方ないよ。うさぎはあんまり抱っことか好きじゃないみたいだし。」

「違うの!!私がいくら引っ張っても!!それ!!離さなかったの!!」

「……え?ぬいぐるみを?!」

「そう!だからお兄ちゃんに取ってもらおうと思って!!」

ぷんぷんと怒る妹。
いや、取ってもらおうと思ったのなら、取れたんだから良くないのかなぁ??
僕は手の中のうさぎを見た。


『返したぞ?じゃあな。』

「?!」


そんな声が聞こえた気がした。
驚く僕をよそに、妹はまたうさぎエリアに行ってしまう。
僕は驚きながらぬいぐるみを見ていた。

「あれ~?!お兄ちゃん!!」

「何?」

「さっきの大きな白い子がいない~!!」

そう言われ、顔を上げた。
うさぎはたくさんいるけれど、真っ白であの大きさのうさぎはもう、そこにはいなかった。

「……あ、そっか。」

僕は何だか納得していた。
妹はその後も、隠れる場所になっているところなども含めて、そのうさぎを探していた。






後日。

僕はうさぎを辰巳さんに返そうとした。
けれど辰巳さんは受け取らなかった。

「それはもういい。あのファンシーな声を思い出すから、無理。」

そう言った辰巳さんの鞄には、龍のぬいぐるみがコテコテにデコレーションされてくっついていた。

女の子ってわからない……。
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