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現(きおく)の髪紐飾り
しおりを挟むああ・・・また・・・、夢を見ている・・・・・・。
広大な城内の中で、主が休息する寝所に一人の女が木の柱に凭れてどこか夢うつつに天井を見上げていた。夕餉と湯を済ませ、主であるお館様を待てと言われ、今此処にこうしているが、娘、翠には何故自分のような取るに足らない娘がお館様の目に留まったのかが今もってわからない。
ドカドカと木板を踏み鳴らす足音に、お館様が来られたことを察知して、翠が急いで正座をして頭を深く下げた瞬間、襖を荒々しく開かれ、翠は条件反射の如く身体を委縮させてしまう。
「ご、ご帰還、真にお疲れ様でございます、おやか・・・」
最後まで言い終わらない内に、翠は腕を取られて布団の上に投げ出される。言葉もなく覆い被さってこようとする主に、翠は常なら許されぬ抵抗に必死だ。
「お、お館様! なにか食さねば、お身体に障りますッ!」
「軽く済ませた。気に病むことはない」
翠を見下ろしているのは髷を無造作に解き、白い襦袢を着た四十代も半ばを過ぎた美丈夫。華奢に見える体格だが、武将としての鍛錬を欠かすことがないその身体は、しっかりと筋肉がついている。
翠が身に纏っている薄紅色の襦袢の襟を荒々しく脱がし、首筋に歯をたて、まるで所有を示すかのように痕をのこしていく。そんな相手をまったく気遣うことのない行為に、けれど翠の身体は熱が確実に灯ったように色付きはじめる。
初めての時から、翠には媚薬の類が使われていた。閨の務めを嫌がる翠の食事に混ぜ、身体に塗り込んで快楽をじっくりと仕込んでいけば、男を知らなかった翠は容易く堕ちた。
それでも、抵抗することを忘れぬことが唯一の己にのこった矜持だとでもいうように、閨に連れ込むと必ず抵抗を試みる。そんな翠の姿が余計に主の嗜虐心を煽るとも知らずに。
乳房を揉みしだき、硬く尖りはじめた乳首を指先で押しつぶすように刺激を与えられる。何度も舐められ、吸われ、歯をたてられ、翠は荒い呼吸を繰り返す。
既に薬の類を使われずとも、翠の秘所は濡れていく。
「ンッ・・・ハッ・・・」
声を漏らすまいと耐えている翠の様子に主たる男はクツリと笑うと、翠の膣口に指を入れ、かき回す。入口を広げ、指の数を増やすごとに縦横無尽に膣内を蹂躙され、同時に秘芽を扱かれて絶頂を迎える。
翠の息が整わぬ内に、また秘芽を乱暴に捏ね回され、幾度も絶頂に導かれて、抵抗する力がなくなっていく様を、男が殊の外楽しげに眺めるのはいつものことだ。腕だけで身体を軽々と持ち上げられても、翠の意識は朦朧とし、より貪欲に快楽を求めるように塗り替えられていく。
「お館様」
突然御簾の向こうから声がかかり、翠は意識を瞬く間に浮上させて両の手で口を覆う。
「なにか火急の知らせか?」
「はい。丹波の国と丹後の国のことについて・・・・・・」
御簾の向こうからでも、今、主がどんなことをしているのかは家臣とて見て取れる。それに一言も口を挟まずに用件だけ伝えて場を辞すことも家臣と呼ばれる所以である。
人の気配が消えたことに安堵したのも束の間、濡れそぼった膣に赤黒い男根を一気に突き入れられ、灼熱の杭に脳天まで貫かれたような衝撃を受け、翠は大きな嬌声を上げた。
浅い場所を抉り、深く深く突き立てられ、思考は霧散し、ただ喘ぐことしか出来ない。頬を撫でられて唇を重ねられ、お互いの舌が口内で絡まる。その間も膣内は収縮を繰り返し、精が吐き出され、真っ白な世界に堕とされる感覚を身の内に覚えながら、翠はもう何度目になるかわからない問いを自身にしていた。
何故、目の前にいる武将、織田上総介信長は、自分のような何の才もない者に目をかけるのか、と。
翠は口減らしのために親に森の中に捨てられていたところを育ての親に拾われた。
育ての親は芸事をしながら各地を巡る集団で、翠もその仲間に加えてもらったが、己の食い扶持は自分で稼がねばならないため、死に物狂いで舞を習得した。
翠は女の舞よりも、男の舞のほうが得意で、少しばかり名が知られるようになった頃、織田上総介信長公からの招待という要請が届いたのだ。戦ばかりの兵達の慰めに、という名目で訪れた城で舞を披露した翠を信長はどうしてか気に入り、城に留め置いた。
それだけならばまだしも、やがて閨への誘いを受け、逃げるに逃げられずにこうしている。本当ならば逃げたいと、当初翠はいつも考えていたが、信長の己への執着を目の当たりにして逃げることを諦めた。
翠に求婚してくる幼馴染の存在は許容するのに、幼馴染よりも信長を優先しなければ激怒され、幼馴染は殺されてしまった。またある時は、城の修復の最中に兵の一人が翠に声をかけてきて、なかなか己の仕事に戻らずに翠は辟易していたのだが、それを目敏く見つけた信長は、風のようにサッ、と駆け寄ってくると目にも留まらぬ早業で、その兵の首を刎ねたのだ。
早春の昼下がりのあまりの出来事に、血飛沫を全身に浴びながら翠は気を失ってしまった。
信長から贈られた鈴の付いた赤い高価な双房揃えの髪紐は、まるで翠を縛る鎖のようで、とても息苦しい。
ズン、と男根を突き入れられ、翠は高く嬌声を上げてしまう。腰を激しく打ち付ける度に華奢な翠の身体は面白いように跳ねる。濡れた胸に舌を這わせ、熟れた乳首を含み、交互に舌先で弾き、きつく吸い上げると、翠の膣はそれに呼応するように、まるで生きているかのように締まる。
初めて見た時、面白いと感じて手元に置くことを決めた。
翠は自己評価がどうしてかとても低いが、その容姿は美しく、これからも尚一層花開いていくのだろうと誰もが確信を持って頷く。そんな容姿を持ちながら、男の舞を踊る翠はとても目を惹いた。その上、信長が閨に呼んでも、それを光栄に思うどころか、いつも逃げようとする。
「そういった閨でのことは通り一編の知識もない民草です。自分に備わっていないものを求められても困ります」
そんな翠だからこそ、手間をかけて快楽に溺れるよう、求めるように仕込んだ。
その姿を見ることが出来るのは自分だけなのだと思うと、深い愉悦が生まれる。最後の最後まで理性を手放さない翠が理性を手放す時、恐ろしく淫蕩な媚態となる。
反面、翠は無意識に己の中で誰に対しても心から接することを望む。昨今、そんな人間は武将とて存在はしない。そのことが信長にとってとても腹立たしいことでもある。翠が特別な人間をつくることは一向に構わない。しかし、翠が一番とするのは常に信長でなければならない。
それは執着の中でも最も意味の悪い、所有欲なのであろう。
「悦いのか?」
という信長の言葉に、掠れた艶声で
「悦い」
と返す様は、信長の身の内にある雄を覚醒させる。信長が翠の唇を吸い、翠が口を開けて舌を受け入れると、喰らうように舐めては啜り、唾液も吐息も混じり合うように口吸いを交わす。更に行為に没頭するように、信長は翠の身体を攻め立てはじめる。
これから二年後、織田信長、本能寺の変にて死亡。
目覚ましの音で夢から覚めた碧は、寝ぼけながらもゆっくりとベッドから起き上がった。
幼い頃から頻繁に見る夢であるが、年を経るごとに情景はクリアになっていくのに、声や音は一切聞き取れない。おまけに寝所と呼ばれる場面まで鮮明に見てしまう。昔は行為の意味がわからないまでもある種の嫌悪感に目覚める度、泣いてしまったものだ。
夢の残像を振り払うかのように頭と緩く振ってベッドから降りると、碧は洗面所に向かった。
碧は両親を早くに亡くしてから、山間の田舎町にある伯母夫婦の家に厄介になり、一ヶ月後には一人暮らしをすることになっている。大学生なのだから、もう甘える時期ではないと考えて、伯母達に打診していたのだ。
昼食を食べて、午後からのバイトに向かうために家を出た碧は、ポストの中身を確認する。
手紙が何通か届いており、伯母に渡すべく玄関のほうへと戻ると、手紙の中に一通、碧宛ての手紙が入っていた。
「え? 宛名だけ? 住所も切手もない」
誰かがポストに入れておいたのだろうか?
真っ白な封筒の中身は少し分厚く、宛名はパソコン書きである。
恐る恐る開けると、手紙と共に何かが碧の手の中に滑り落ちてきた。滑り落ちてきた物を見た瞬間、碧の目は極限まで見開かれた。
それは真新しい高価そうな鈴の付いた双房揃えの赤い髪紐。小さい頃から夢の中で何度も何度も碧が見てきたもの。
「な・・・・・・。なにこれ・・・?」
震える手で手紙を開くと、そこにはたった一文だけ。
『今世も必ず迎えに行く。逃げようとは思うな、翠』
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