奥様は風俗嬢

夫「人間の三大欲求」

人間の三大欲求とは「食欲」「睡眠欲」「性欲」である。俺には、「食欲」も「性欲」もない。食べるものは、腹に入れば何でも同じだし、セックスなんかしなくても全然平気だ。アブノーマルなんて興味もない。食べ物や女に金をかけるなんて、無駄だとさえ思っている。
しかし、睡眠は別だ。1日ダラダラと過ごした日も、休憩なしで必死に働いた日も、睡魔は容赦なく襲ってくる。なのに、俺の睡眠は極めて浅い。時計の針の音すらも気になってしまうし、歳を重ねて尿意で起きることもある。かと言って、枕や布団に拘ったりしているわけではないのだが。
マイペースな妻に合わせていると、夕飯が出来上がる前に睡魔が襲ってくることがある。「今日は夕飯いらない」そう言って寝室へ行く日もある。休みの前日でもそれは関係ない。妻が構って欲しそうにしているのは分かる。しかし、睡魔には到底敵わないのだ。よく動画サイトなどで見かけるＣＭの「今日は疲れてるから」と断るシーンは、まさに俺を見ているようだった。
女性の産後は子育てで忙しくなり、性欲が減るとよく聞く。しかし妻はそんな様子もなく、俺を誘ってくる。昔の「イエスノー枕」なんて買ったものなら、毎日「イエス」にされそうな勢いだ。しかしそれでも俺は、妻よりも睡眠を選ぶ。妻は時々泣いていた。俺にはその気持ちがよく分からなかった。
もしかすると、俺は30になるまでに、一生分の性欲を使い果たしたのかもしれない。やるだけならいくらでもできる。酒の力を借りれば尚のこと。そう考えたら、妻は今までそういう遊びをしてこなかったのかもしれない。俺以外の男が少ないなんて、最高じゃないか。可愛いやつめ。しかし、セックスなんかしなくても、愛情表現はいくらでもある。明日は甘い物でも買ってきてやろう。