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香梨と沙恵子
香梨と沙恵子の場合 2-1
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「香梨ちゃん、泊めてくんない?」
私の大学時代の先輩で一番尊敬する女性、南沙恵子は突然そう言い出した。
ゴールデンウィークの前半の夕方、一件のメールが入った。
『時間ある? 極力早い方が有り難い』
急いで打ったような文だと思い、こちらも一言で返した。
『電話しても良いですか?』
着信音が電話のものに変わり、返事が来た。
「もしもし、香梨ちゃん。今どこ?」
「家です」
「行ってもいい?」
「大丈夫ですよ」
「ありがとう! あと十分くらいで着くから」
「近いですね」と言う前に電話が切れる。お菓子でも用意しようかと台所に向かったが何も無かった。近くのコンビニに買いに行こうかと準備しているうちにインターホンが鳴る。
先輩は膨らんだレジ袋を持って、リュックを背負っていた。
「いらっしゃい」
「ごめんねー、急に押しかけて」
家に入るなりレジ袋を置いた。中にはお菓子や食べ物が見えた。
荒くなった息を整えて早速話を切り出す。冒頭で述べた通りだ。
何事かと思った。立ち退きでもあったのだろうか? 隣人と揉めたのだろうか? 様々な考えが頭に浮かんだ。先輩は烏龍茶を一気に飲み干すとまた話始める。
「いやー、お母さんがこっちに旅行に来るから泊めてって行ったんだけど、お父さんも一緒らしくて、流石に三人は寝れないから私が外に泊まるって言って出てきたの」
理由を聞いて安堵した。
「ご両親はいつまでこちらに?」
「今日から三泊四日。連休終わりにこっちを発つって」
「大丈夫ですよ」
「ほんとごめん」
少し落ち着いたところで、一つ気になることがあった。
「寝袋とか持ってきてますか? 布団は無いですよ……」
「あー、大丈夫。雨風しのげる場所だけ貸してくれれば」
「まだ収めてないんで毛布使います?」
「ありがとう。お言葉に甘えるよ」
汗ばんだ先輩にシャワーをすすめた。「一緒に入る?」などと冗談めかしてきたが「そんなスペースはないです」と一蹴してやった。膨らんだリュックの中からタオルと着替えを取り出してシャワールームへと入っていった。
「ふぅー、さっぱりした」
先輩がシャワーを終えたようだ。ドライヤーはあるかと聞かれたので場所を教えた。その時に見えた髪を下ろした姿は別人のようだった。普段からお洒落というものをほとんどしない人だ。肩甲骨ほどの長さの髪は後ろで結ぶだけ、化粧も申し訳程度だ。サラッとした髪から漂うシャンプーの香りがほどよい色気を醸し出す。もっとも、本人はそんなこと思ってもいないだろう。
ドライヤーの音が止まった。
「香梨ちゃん、ここの家賃いくら?」
「五万ちょっとです」
東京まで一時間半くらいの距離で1DKならそこそこ安い。父の伝手で紹介してもらったのだ。
「安いねー。私のとこここより狭くて五万五千だよ」
実は先輩の家には一度しかお邪魔したことがなく、その時は酔っていてほとんど覚えていない。
「もし良かったらさ、ルームシェアしない?」
唐突だった。実を言うと、冒頭の言葉よりも驚いた。
私の大学時代の先輩で一番尊敬する女性、南沙恵子は突然そう言い出した。
ゴールデンウィークの前半の夕方、一件のメールが入った。
『時間ある? 極力早い方が有り難い』
急いで打ったような文だと思い、こちらも一言で返した。
『電話しても良いですか?』
着信音が電話のものに変わり、返事が来た。
「もしもし、香梨ちゃん。今どこ?」
「家です」
「行ってもいい?」
「大丈夫ですよ」
「ありがとう! あと十分くらいで着くから」
「近いですね」と言う前に電話が切れる。お菓子でも用意しようかと台所に向かったが何も無かった。近くのコンビニに買いに行こうかと準備しているうちにインターホンが鳴る。
先輩は膨らんだレジ袋を持って、リュックを背負っていた。
「いらっしゃい」
「ごめんねー、急に押しかけて」
家に入るなりレジ袋を置いた。中にはお菓子や食べ物が見えた。
荒くなった息を整えて早速話を切り出す。冒頭で述べた通りだ。
何事かと思った。立ち退きでもあったのだろうか? 隣人と揉めたのだろうか? 様々な考えが頭に浮かんだ。先輩は烏龍茶を一気に飲み干すとまた話始める。
「いやー、お母さんがこっちに旅行に来るから泊めてって行ったんだけど、お父さんも一緒らしくて、流石に三人は寝れないから私が外に泊まるって言って出てきたの」
理由を聞いて安堵した。
「ご両親はいつまでこちらに?」
「今日から三泊四日。連休終わりにこっちを発つって」
「大丈夫ですよ」
「ほんとごめん」
少し落ち着いたところで、一つ気になることがあった。
「寝袋とか持ってきてますか? 布団は無いですよ……」
「あー、大丈夫。雨風しのげる場所だけ貸してくれれば」
「まだ収めてないんで毛布使います?」
「ありがとう。お言葉に甘えるよ」
汗ばんだ先輩にシャワーをすすめた。「一緒に入る?」などと冗談めかしてきたが「そんなスペースはないです」と一蹴してやった。膨らんだリュックの中からタオルと着替えを取り出してシャワールームへと入っていった。
「ふぅー、さっぱりした」
先輩がシャワーを終えたようだ。ドライヤーはあるかと聞かれたので場所を教えた。その時に見えた髪を下ろした姿は別人のようだった。普段からお洒落というものをほとんどしない人だ。肩甲骨ほどの長さの髪は後ろで結ぶだけ、化粧も申し訳程度だ。サラッとした髪から漂うシャンプーの香りがほどよい色気を醸し出す。もっとも、本人はそんなこと思ってもいないだろう。
ドライヤーの音が止まった。
「香梨ちゃん、ここの家賃いくら?」
「五万ちょっとです」
東京まで一時間半くらいの距離で1DKならそこそこ安い。父の伝手で紹介してもらったのだ。
「安いねー。私のとこここより狭くて五万五千だよ」
実は先輩の家には一度しかお邪魔したことがなく、その時は酔っていてほとんど覚えていない。
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唐突だった。実を言うと、冒頭の言葉よりも驚いた。
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