立てば芍薬、座れば牡丹、歩けば咲くは百合の花

鍵谷 雷

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キャサリンと絵美李

キャサリンと絵美李の場合

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  体育館に綺麗な放物線が現れる。わずかに網を揺らしながら、ストンと真っ直ぐに落ちる。スリーポイントシュートが決まった。投げたのは女バスの王子こと山崎キャサリンだ。フランス人とのハーフで、目鼻立ちが良く、スポーツが得意であることからそう呼ばれるようになった。

「流石王子!」
「先輩カッコいいー!」

  一斉に黄色い声が体育館を包む。部員でない生徒も練習を観に来るほどの人気があるが、当の本人は愛想笑い一つも返さない。

「手くらい振ってあげたら?」

 そう声をかけたのは島津絵美李。キャサリンに気兼ねく話しかけることの出来る、バスケ部内でも数少ない人物だ。可愛らしい容姿も相まって姫と呼ばれる。

「ん……」

 キャサリンは表情は変えずに小さく手を振る。王子の無愛想なサービスにまた歓声が沸く。すると、キャサリンと絵美李は後ろから小突かれた。二人は振り返り、絵美李が声をあげる。

「ぶ、部長! お疲れ様です!」
「お疲れ、ロイヤルコンビちゃん。ほら、片付け始めるから動いた動いた」
「はい! 行くよキャシー」
「分かった……」

 キャサリンは面倒くさそうに答える。すでに絵美李は一年たちに混じり体育館の掃除に参加している。

「ふぅ、終わった終わった」
「なーにが終わった、よ。何もしてないクセに!こんなのが王子ってんだから笑っちゃうわ」
「王子なら何もしなくていいんじゃないかなー」
「もう、屁理屈ばっかり!」

 部長が招集をかけて、一言二言喋って部活が終わった。六時も過ぎている。五月なので決して真っ暗ではないがほとんどの部員がまっすぐ帰っていく。二人も荷物をまとめて帰る準備をする。無言の帰り道で沈黙を破ったのはキャサリンの方だった。

「ねえ、エミリー」
「何?」
「部長って私たちのことロイヤルコンビって呼ぶよね?」
「言ってるわね。今更どうしたの?」
「でも、周りのほとんどはエミリーは召使いだと思ってるんじゃないかなぁ」
「そうね、別に私はどっちでも良いけど……」
「え、そうなの? じゃあエミリーは一生私の召使いで」
「……」

 絵美李は返事をせずに顔を背ける。すると、キャサリンは自分の顔を下げて、絵美李の顔に近づけてささやく。

「怒った? ごめんね、冗談だよma  princesse私のお姫様

 絵美李が早歩きで前に進む。キャサリンは慌てたようにそれを追いかける。

「ちょっ……。待ってよエミリー!」

 その日、二人の帰宅時間はいつもより少し遅かった。
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