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キャサリンと絵美李
キャサリンと絵美李の場合 2
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駅から歩いて十三分、白が基調のマンションの三階。エレベーターから最も遠い部屋のインターホンが鳴る。
「いらっしゃい、キャシー。さ、入って」
「やあ、エミリー。お邪魔するよ」
とある土曜日、珍しく部活が休みだったので、キャサリンは絵美李の家に来ていた。
「これお土産」
「ありがとう!これ良いものじゃないの?」
「そんな大したものじゃあないよ」
キャサリンが渡したのは有名なお菓子ブランドの焼き菓子セットだ。5個入りで千円と決して安くない。絵美李はこういったお菓子とはあまり縁が無かったので、笑顔を隠せない。
「今、物音がしなかった?」
「ごめんね、今日は私以外みんな出かけるはずだったんだけど、妹の友達が体調悪いらしくて……」
絵美李は両親と妹の真里との四人暮らし。両親は小旅行に、妹は友人と遊びに出かける予定だった。
「こんにちはー」
「あ、どーも。お邪魔します」
「真里、今日は大人しくしててね」
「分かってるよー。ちょっとお茶取りに来ただけ」
姉に小言を言われた真里は、少し不機嫌そうにコップにお茶を注いで自室へと戻った。
「マリーちゃん、エミリーに似てるね」
「そう?」
「うん、可愛いとこが特に」
「……」
絵美李は赤と緑のコップを二つ出してお茶を注ぎ、緑の方をキャサリンにさし出す。その間、終止無言だった。
「で、何するんだっけ?」
「宿題! 提出物が全然出てないって言われたでしょ」
「あー、そうだったね」
「私の部屋行くわよ」
少し不機嫌そうな絵美李の後ろをキャサリンは足取り重そうについていく。部屋に入って教材を広げようとしたときだった。
「一緒に勉強してもいい?」
「キャシー、良い?」
「いいよ」
二人は四角いテーブルに隣どうしで座っていた。真里は絵美李の隣、キャサリンと向かい合うところに座った。
「はじめまして、島津真里です。お姉ちゃんがいつもお世話になってます」
「山崎キャサリンです。お姉さんにはいつものお世話になってます」
初対面らしい普通の会話だが、絵美李には違和感があった。
二時間後、宿題を一通り終えたキャサリンは部屋に寝転がった。見計らったように真里が声をかけた。
「お疲れさまです。山崎さん」
「ありがとう。気軽にキャシーって呼んで」
「私にも何か一言無いの……?」
「エミリーも、ありがとね」
少しの休憩を挟んだ後、キャサリンは旅行の荷造りがあるからと真っ直ぐ帰った。絵美李が駅まで送ると言ったが、大丈夫だと答えて少し足早に向かった。
「お姉ちゃん、寂しいの?」
「え!? べ、別にそんなわけないわよ!」
「じゃあ、ドアの前から離れたら? いつまでもボーッとしてないで」
「……」
「キャシーさんとどういう関係なの?」
「ただの学校の友達」
「ふーん……。じゃあ、わたし狙っても良い?」
「はぁ!?」
「別にお姉ちゃんの恋人ってわけじゃないんだし、いいじゃん」
「そ、そうじゃなくて!」
「……あー、ごめんごめん。二人の間には何人も立ち入れないのは、見てれば分かったから。お幸せにね」
「だから、違うって!!」
キャサリンの旅行まであと四日。
「いらっしゃい、キャシー。さ、入って」
「やあ、エミリー。お邪魔するよ」
とある土曜日、珍しく部活が休みだったので、キャサリンは絵美李の家に来ていた。
「これお土産」
「ありがとう!これ良いものじゃないの?」
「そんな大したものじゃあないよ」
キャサリンが渡したのは有名なお菓子ブランドの焼き菓子セットだ。5個入りで千円と決して安くない。絵美李はこういったお菓子とはあまり縁が無かったので、笑顔を隠せない。
「今、物音がしなかった?」
「ごめんね、今日は私以外みんな出かけるはずだったんだけど、妹の友達が体調悪いらしくて……」
絵美李は両親と妹の真里との四人暮らし。両親は小旅行に、妹は友人と遊びに出かける予定だった。
「こんにちはー」
「あ、どーも。お邪魔します」
「真里、今日は大人しくしててね」
「分かってるよー。ちょっとお茶取りに来ただけ」
姉に小言を言われた真里は、少し不機嫌そうにコップにお茶を注いで自室へと戻った。
「マリーちゃん、エミリーに似てるね」
「そう?」
「うん、可愛いとこが特に」
「……」
絵美李は赤と緑のコップを二つ出してお茶を注ぎ、緑の方をキャサリンにさし出す。その間、終止無言だった。
「で、何するんだっけ?」
「宿題! 提出物が全然出てないって言われたでしょ」
「あー、そうだったね」
「私の部屋行くわよ」
少し不機嫌そうな絵美李の後ろをキャサリンは足取り重そうについていく。部屋に入って教材を広げようとしたときだった。
「一緒に勉強してもいい?」
「キャシー、良い?」
「いいよ」
二人は四角いテーブルに隣どうしで座っていた。真里は絵美李の隣、キャサリンと向かい合うところに座った。
「はじめまして、島津真里です。お姉ちゃんがいつもお世話になってます」
「山崎キャサリンです。お姉さんにはいつものお世話になってます」
初対面らしい普通の会話だが、絵美李には違和感があった。
二時間後、宿題を一通り終えたキャサリンは部屋に寝転がった。見計らったように真里が声をかけた。
「お疲れさまです。山崎さん」
「ありがとう。気軽にキャシーって呼んで」
「私にも何か一言無いの……?」
「エミリーも、ありがとね」
少しの休憩を挟んだ後、キャサリンは旅行の荷造りがあるからと真っ直ぐ帰った。絵美李が駅まで送ると言ったが、大丈夫だと答えて少し足早に向かった。
「お姉ちゃん、寂しいの?」
「え!? べ、別にそんなわけないわよ!」
「じゃあ、ドアの前から離れたら? いつまでもボーッとしてないで」
「……」
「キャシーさんとどういう関係なの?」
「ただの学校の友達」
「ふーん……。じゃあ、わたし狙っても良い?」
「はぁ!?」
「別にお姉ちゃんの恋人ってわけじゃないんだし、いいじゃん」
「そ、そうじゃなくて!」
「……あー、ごめんごめん。二人の間には何人も立ち入れないのは、見てれば分かったから。お幸せにね」
「だから、違うって!!」
キャサリンの旅行まであと四日。
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