灯り火

蓮休

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灯り火

プール

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借家かりやは一生、そんな奴に狙われるのか?」
「はい」
 新居浜にいはまが悔しそうに呟き、それに対して侍女さんも苦しげに答える。
たける
 三希みきが辛そうに俺を呼ぶ、正徳しょうとくは何も言わず俺を見ていたそして俺自身は。
「いや~困った困った」
 ただ能天気に笑っていた。

 保健室でしばらく過ごした後、俺は教室に戻ることにする。
「そろそろ教室に戻ります」
「承知いたしました」
「私はもう少し千鶴ちづると話してから戻るよ」
「分かった」
「私も戻るよー」
 正徳も椅子から立ち上がって後ろから付いてくる、新居浜は一足先に教室に戻っていた。正徳と一緒に保健室を出て廊下を歩いていく。
「お疲れさまー」
「うん」
 正徳が両手で俺の頭を撫でる、俺はされるがままに正徳に頭を撫でられ続ける。
「頑張るぞー」
「おー」
 正徳が両手を上げるので俺も左手を上げて応える、一年C組の教室で正徳と別れ俺も自分の教室に向かった。放課後になって帰り支度をしていると宗司そうじが話しかけてくる。
「武、今からプールに行かないか?」
「えっ」
「息抜きと蒼井あおいの泳ぐ練習も兼ねて」
「いや俺は」
「行こうよ借家君」
 左隣の蒼井からも笑顔で誘われる、それでも俺が迷っていると三希が話しかけてくる。
「武、行ったらいい」
「三希」
「今日は大丈夫だから、なにも気にせず楽しんできて」
「分かった。宗司、蒼井、プール行こう」
「応」
「うん」
 宗司と蒼井と共に昇降口へ向かう、下駄箱で靴に履き替えて外に出ると大雨が降っていた。
「二人とも傘持ってきてる?」
「持ってきてないよ」
「同じく」
「じゃあ走るか」
「うん」
「応」
 雨の中を三人で走っていく、頬に触れる雨は少し温かった。
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