Aria ~国立能力研究所~

しらゆき

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第2章 二つ目の事件( 未来 中学生)

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「心配?」
 そわそわと大窓の外に目をやる未来に久遠寺がクスリ、と小さな笑みを浮かべた。どこか面白がっている雰囲気を感じる。
「心配ですよ。お姉ちゃん、宮内先生の事本当に尊敬してたみたいだから……」
 恩師であるが故に、尊敬しているが故に許してしまうのではないか、とそんな気がした。当事者である姉が許してしまえば未来は何も言えなくなってしまう。でも、何かを言う権利がなかったとしても、未来は嫌だ。努力してきた姉を知っているから、それを横から勝手にかっさらうような真似をした人間を許したくない。
「そう……君はAria?」
 問いかけのように見えるが、確信しているのだろう。問いかけではなく、絶対的な言葉として未来の耳に響いた。
「はい」
 もっとも、久遠寺がAriaの人間だと知った以上、未来にその言葉を否定する意味はない。
「……君はお姉さんの能力をズルだとは思わなかったの?」
 予想外の問いかけに未来は目を瞬いた。確かにそう思った時期はある。だが、同じ、似たような系統の能力を持つ久遠寺から聞かれるとは思ってもみなかった。
「……はじめは、思いました」
 小さな声で答える。脳裏に淡々とした口調で言葉を発する三波の姿がよみがえってくる。
「でも、言われたんです。後天的な能力とは努力に結びつくものだ、と。霊力の差はあるけど、努力をせず、何もせず、ただ無為に過ごしてきた人間には決して現れない力なのだ、と。……はじめは、納得できませんでしたが、姉の力を知った時に納得できました。姉は、確かに暇な時間があれば料理本を開いて、料理を勉強してきていましたから」
「それは、君自身に言われた言葉、というわけか……。確かに君にとってお姉さんは家族だが、本人ではない。共に暮らしている家族の努力はよく、見えるから、な」
 フッと笑う久遠寺は、あの日会場で見た高圧的な雰囲気が全くなくなっていた。
「未来、久遠寺さん!」
 呼ばれ、振り向くと、笑顔でこちらに手を振る姉の姿が見えた。
「上手く、いったんだ……」
 姉の、晴れやかな雰囲気に、ほっとした。きっと、姉にとって納得のいく結果が得られたのだろう。
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